国内のスタートアップにとっての、「学習の高速道路」になりたい
「Find Job ! Startup」の編集長、井出一誠さん。2013年5月、ウェブに特化した転職情報サービス「Find Job !」が立ち上げたスタートアップ向けのオンライン・メディアに編集長として迎えられた井出氏は、企業のオウンド・メディアの先駆けとしても知られる「ガイアックスソーシャルメディアラボ」の立ち上げ人でもあります。新規メディアに関わった経緯、目指していきたい方向性を伺いました。
Q「Find Job ! Startup」の立ち上げに参画することになった経緯を教えてください。
私はもともと、法人向けのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)運用代行や、ソーシャルメディアマーケティングのツールを提供している株式会社ガイアックスで自社メディア「ガイアックスソーシャルメディア ラボ」の立ち上げと責任者をやっていました。
2010年のことです。当時は、これから国内でもFacebookが広まるだろうという時期で、私たちのようにソーシャルメディアをビジネスに活用していきましょう、と提案する企業は増加傾向にありました。
しかし、営業活動においては、コンペティションになる事もあり、会社のブランディングをより一層強化しなければ、という実感がありました。そこで、自社が持っているソーシャルメディアマーケティングの知識を広く発信することで、競合他社と差別化を図ることはできないだろうかと考え、立ち上げたのが「ガイアックスソーシャルメディア ラボ」だったのです。
会社では、予算が発生しない限り自由にやって良いという風潮があったので、5名ほどのメンバーで相談しながら始めて、自分がメインで動く事になったので、結果として私が編集長としてメディアの運営から記事の編集、執筆なども行っていました。2010年から3年ほどメディアを運営し、自社のブランディングに貢献できただろうかという頃に、「Find Job !」を運営しているミクシィ・リクルートメント社と縁があり、メディアの立ち上げに関わることになりました。
Q「Find Job ! Startup」はどのようなメディアなのでしょうか?
日本のスタートアップが、読んだそばからすぐに、サービスやプロジェクト運営の改善につなげられるような、実践的な記事を提供しています。「Find Job !」は転職情報サービスなので、どうしてそこがメディアを?と疑問に思われる方もいるでしょう。
私たちの目的は、スタートアップ界隈を盛り上げて行くことと、その結果、記事の閲覧を通じてもっと多くのスタートアップ関係者・ウェブ業界関係者に「Find Job !」を知っていただくことです。
現在扱っている内容は、サービスの作り方や技術的な話、マーケティングについてなど。今後は、ファイナンス、戦略立案、マネジメント、組織作りなどの記事もどんどん増やし、スタートアップを成功させるために大切なことを網羅するメディアを目指していきます。
Qところでもともと井出さんは、ライター志望だったのですか?
いえ、まったくです。メディアの立ち上げ方、文章の書き方、記事の広め方、読者が求めている課題の発見方法など、すべて独学で身につけていきました。
Qメディアを運営する上で意識していることは何でしょうか?
読者の視点に立ったネタを探すことや、どういう順番で伝えたらより理解してもらえるだろうか?といった点ですね。私は、「ソーシャルメディアマーケティング」という言葉が、まだあまり浸透していない頃からメディアを運営してきました。
その中で、新しい概念や言葉を紹介するときには、それがどれほど世の中に認知されているかによって、記事のトーンを変える必要があると感じていました。例えば、言葉自体が新しく、その大切さが十分伝わりきっていないと思ったら、企業が取り組む重要性から説明するなど…。
読者の視点に立ち、どうしたら読みやすくなるか?を常に考えてきたので、今でもその習慣は役立っています。
Q「ガイアックスソーシャルメディア ラボ」も、「Find Job ! Startup」も、いわゆるニュースサイトとは違い、どちらかというとHow toを伝えて行くメディアですよね。一般的なニュースサイトと、記事の書き方に違いがありましたら教えてください。
私たちが扱っているのは、直ぐに実践できる課題解決型のコンテンツなので、まず結論を先に述べ、それから補足的に詳細を伝えて行く、「結論重視」の手法が適しています。また、読者は日々忙しく業務を回しているビジネスパーソンなので、忙しい合間にも見てもらいやすいよう、文章量は多くせず、端的にまとめるよう意識しています。
Qコンテンツを作る上で、目指していることは?
国内のスタートアップにとっての、「学習の高速道路になりたい」というのが、私たち運営メンバーの目標です。スタートアップに携わっている人は、比較的年齢の若い方が多いのですが、そうなると、「未経験ゆえに分からない課題」が、たくさん出てきます。
そうしたスタートアップが必ずぶつかる壁を、「Find Job ! Startup」が吸い上げて「課題解決型」のコンテンツにし、どんどん提供していきたいと思っています。スタートアップは資金も時間も限られている中で、会社やサービスを大きくするという使命があります。
ですから私たちが代わりに、「できるだけ正解に近い仮説」を提供し、実践してもらい、それが成功への近道になれば嬉しいですね。
Q日頃、ネタはどのように収集されていますか?
社外のスタートアップや、ベンチャーキャピタルの方に話を聞いたり、あとはミクシィ社内にもSNS「mixi」事業だけでなく新規事業を扱う「イノベーションセンター」があるので、そこで働く人から、課題を直接ヒアリングすることもあります。
Qプレスリリースは受け取っていますか?
「Find Job ! Startup」は一般的なニュースサイトではないので、今のところ積極的には受け付けていません。しかし、「うちの会社には、こういうノウハウがあり、ここ1年で売上が◯◯%伸びた」など、具体的な数値と共に、事例をご紹介いただけるような企業がいらっしゃいましたら、ぜひお話を聞いてみたいです。
最近ですと、ノハナというフォトブックアプリの運営チームから情報提供を受け、以下のような記事を書きました。このような他のスタートアップの参考になるようなノウハウ・データを提供できる記事であれば、ぜひ書いていきたいです。
・■テレビは効果抜群!App Storeで1位を獲得した「ノハナ」のTV放送前後のダウンロード数推移を公開
Q最後に、今後の目標を教えてください。
世界に飛び出して行く日本発のスタートアップを、どんどん増やして行く一助になることです。そのためにも、一つでも多くの課題を吸い上げ、解決に導けるようなコンテンツを増やしていきたいと考えています。
(取材日:2013年7月18日/取材と文:公文 紫都)
井出 一誠氏
- 媒体名
- Find Job ! Startup