「BRICs」の一つ、ロシアのIT事情

WIP発: ロシアの最新IT事情モスクワ在住のWIPスタッフに聞く、ロシア最新事情世界中の投資家が注目する「BRICs」そのひとつ、ロシアのIT事情、はたして熱いのでしょうか、寒いのでしょうか?

「BRICs」の一つ、ロシア。ここ数年GDP6%以上を維持し、経済は順調に成長し続けている。ITに関しては後進国と思われがちだが、なんといってもあのGoogleの創始者の一人はロシア出身なのだ。

実際のところ、ロシアのIT事情はいったいどんな状況なのだろうか。

「切符売り場ではご案内はいたしません。ご不明な点はYandexまで」

これは、地下鉄の切符売り場に貼られていたインターネット検索エンジン大手「Yandex」の広告ステッカーである。

この案内を装った広告はモスクワ市民に人気となっており、インターネットが一般市民に十分浸透していることを裏付けている。

実際、普及が実感できるようになったのは2004年頃から。それまではダイヤルアップ接続が主流で、高速接続はごく一部のオフィスビルやインターネットカフェでのみ可能だった。通信速度は遅い上「すぐ切れる」「つながらない」などトラブル続き。日本から送信されてくる大容量のファイルがなかなか受け取れず、結局ファックスで送ってもらったという笑えない話も多かった。

現在ではオフィスのみならず家庭でも高速回線は当たり前。プロバイダ各社とも料金と速度の競争にしのぎを削っている。

■ 高速回線の主流は?

モスクワのプロバイダが提供する高速回線のうち、ADSLが37%なのに対し、Ethernet接続は57%とシェアを占めている。Ethernet接続はプロバイダ別対応のLANカードを加入者のパソコンに挿入して設定をしてもらうだけで手続きが完了する。LANカードはプロバイダが提供する場合が多く、手軽で初期費用もほとんどかからない。

Ethernet接続のモスクワ最大手「Corbina Telecom」は2006年末時点で119地域のうち97地域をカバーしており、モスクワ市内での加入者数は12万人(同社発表)。Corbina Telecomの強みは速度と価格である。特に2006年度は大幅な通信速度の向上と価格破壊を進めた結果、業界全体の料金引き下げのけん引役となった。2007年6月時点トラフィック無制限1,2Mbpsの場合月額450ルーブル(約18USD)からあり、他社もこれに並ぶ料金設定になっている。

しかし同社によれば、自治体の無理解がインターネットの普及を阻んでいるという。Ethernet接続方式の場合、基地の設置場所へのアクセスは自治体(住宅管理局)の許可がなくては不可能なため、例えば基地のトラブルで端末から接続できないという場合、すぐには復旧が期待できないといった状況だ。

ADSL接続では「Stream」のブランド名で提供する「Comstar Direct」社の独占状態である。電話公社が提供するモスクワ市内の固定電話に加入している住宅であればどこでも接続可能だが、電話とADSL加入者が一致していること、料金未払いがないことを証明するなど、事務手続きがわずらわしい。また、約100USドルのADSLモデムを別途購入する必要があるのが難である。

ごく最近では無線ブロードバンドのサービスも徐々に広まりつつあるが、料金が高いこととカバー地域がまだ少ないため、まだ身近になったとはいえない。

■ ネットショッピングが急成長

検索エンジン大手には冒頭で挙げたYandex、Mail.ru、Ramblerなどがあるが、それぞれ無料メールボックスをはじめ、チャット、ブログなどの付帯サービスを提供している。また、ネットショッピングの普及もめざましく、2006年の市場規模は前年比42%増(インターファックス通信の調べによる)になり、そのうち61%がモスクワでの取引だという。電化製品やPC、モバイル、書籍・CDから家具にいたるまでネットショップの取り扱い範囲は幅広く、当日配送、代引可など利便性の高いサービスも手伝って、今後もネットショッピングの人気は続きそうだ。
 
■ ロシア全体でのインターネット普及率

これまでモスクワを例に挙げていったが、ロシア全体ではどうなっているのだろうか。通信省発表のデータによれば、2006年にインターネット上での情報交換量は前年に比べ約1,8倍増の729億8518万メガバイトになるという。

また、独立系調査機関「世論調査基金」は、2002年より継続して「ロシアのインターネット」という統計結果を年4回公表している。この調査では「少なくとも半年以内に一度はインターネットを利用した」ことのある者を「インターネット利用者」の一人に数えているが、2002年に18歳以上の人口で8%だったインターネット利用者が、2006-7年冬季の調査で25%と上昇。しかし突出して増加した時期は見られず、毎年平均して4%ずつ増加する傾向にあり、徐々にインターネットが身近になってきているようだ。

ただしモスクワでの普及度は他の地方と比べて群を抜いており、ロシア全体では「直近の1日以内にインターネットを利用した」利用者は36%であるのに対し、モスクワだけをとれば68%にもなり、北西地方(サンクトペテルブルクを含む)の35%、シベリア地方の30%を大きく引き離している。

■ 地方との格差と今後の課題

インターネットはモスクワでは当たり前のものになっているが、地方との差は依然として大きい。上述のCorbina Telecomはモスクワ以外でもサービスを提供しているが、インフラ整備と当局との交渉から始めている状況だ。自治体当局の対応に左右されるようではEthernet接続の普及にも限界があり、既存の電話回線を利用できるxDSL方式が最後には生き残るという見方もある。ただし、xDSL方式が今以上に多くの利用者を獲得するためには、ここでも手続きの簡略化が求められる。

3月末の通信省閣議ではイワノフ第一副首相が、現在電話回線すらない村落が全国に4万3,000か所あることを指摘し、2015年までに全ての村落にインターネット回線を配備するよう求めている。

モスクワと地方の大き過ぎる格差の解消がロシアの喫緊の課題となっている。

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【会社概要】
■名称 WIPジャパン株式会社(ウィップジャパン)
(登記名:ワールドインテリジェンスパートナーズジャパン株式会社)
■代表取締役 上田輝彦
■資本金 5,100万円
■設立 2000年 06月 15日
■東京本社 〒102-0093 東京都千代田区平河町1-4-12 KDX平河町ビル
■大阪本社 〒530-0041 大阪市北区天神橋3-3-3南森町イシカワビル
■TEL 03-3230-8000(代表)
■FAX 03-3230-8050
■URL http://japan.wipgroup.com/
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■事業内容 <企業のグローバリゼーション支援>
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