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ウイスキーに見る!「ストーリー」の広報的影響力
少し前にハイボールブームで上向きになったウイスキー市場。最近は話題の朝ドラ「マッサン」で更なる人気が出てきています。この動向には、商品・サービスだけでモノを購入しなくなった消費者の実態が表れています。ハイボールと「マッサン」の影響で、何故ウイスキーが売れているのかを広報的な視点をふまえて見てみましょう。
「ハイボール」PRが与えたウイスキー市場への影響
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それまで「一部のおじさん達が飲むもの」、もしくは居酒屋で飲む候補メニューとして考える若者が少なかったウイスキー。そのイメージを払拭するかのように、ウイスキーそのものではなく、炭酸で割ったハイボールに焦点を当てて、若い女性を起用したお洒落なイメージのCMが打たれました。また、飲食店への営業強化がされ、ハイボールメニューも豊富に拡大された影響でハイボールブームが巻き起こされました。
ハイボールだけでは成されなかったウイスキーのトレンドへ
消費者は常に商品・サービスだけを購入しているわけではありません。それに伴って得られる自己満足はとても重要な要素です。「ハイボールを飲んでいる私/僕はお洒落」というイメージの醸成は、ウイスキー市場にも大きな影響を与えました。
ハイボールが売れた事でウイスキーの市場が上向きに転換した事は、PR事例としてよく取り上げられますし、実際のインパクトも大きかったと思います。ただ、ハイボールは売れても、特定のウイスキーを味わう人はそこまで増えなかったように思います。言い換えてみれば、ハイボールのイメージを購入している消費者にとっては、使うウイスキーの銘柄や味・香りに対するこだわりまでは至っていなかったと思います。
「ストーリー」が人々の購買行動と価値観を変える
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この「マッサン」の影響力が多大だったようで、昨年11月にニッカは「竹鶴」の他「余市」「宮城峡」の売り上げが好調になり、生産が追いつかないため出荷量調整が必要である事を発表しました。
私の周りでも「マッサンで出ていたスモーキーフレーバーを知りたいからウイスキーを味わいたい」と言って国産ウイスキーを購入している人が少なくありません。ハイボールブームだけでは多くなかった、「特定の銘柄を味わいたい」、「ウイスキー本来の味と香りを楽しみたい」という人が増えたという事でしょう。
マッサンが消費者に何を伝えたかというと特定の商品の背景(ストーリー)です。消費者は、その商品一つが作り上げられるためにどこまでのエネルギーと工夫と熱意を要したのか、その商品にどれだけの魅力があるのかを考えざるを得なくなります。その背景こそがオリジナリティーにあふれているため、銘柄指定で商品を購入する人も増えるのでしょう。
イメージとストーリーを伝える広報へ
消費者は商品・サービスだけを購入しているわけではありません。ウイスキー市場で見るとハイボール時代は「イメージ」を、朝ドラ「マッサン」では「背景・ストーリーへの共感」に価値を見いだしているのだと思います。
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広報として商品・サービスだけを打ち出すのではなく、いかに消費者の心を動かそうかと考えた時はイメージやストーリーを伝える仕掛けを作ってみましょう。今までの歴史、経緯、メンバーの気持ち…オリジナリティーのあるものは日常にも転がっているはずです。また、私生活で自分が商品やサービスを購入する時に、その物以上の何かを得ていたら意識してみましょう。広報ネタの思考の幅が広がるかもしれません。
出典「ハイボールに関する消費者飲用実態調査 サントリーハイボールレポート2012」(サントリーホールディングス株式会社)
http://www.suntory.co.jp/news/2012/11404.html
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(執筆・丸山夏名美)