消費者に寄り添い、誠実な「ランチパック」が続く理由
コンビニパンの定番「ランチパック」。スイーツ系、惣菜系とバリエーションも多く、周囲がすべてプレスされており溢れにくく、あらゆるシーンで食べやすい事が売りの山崎製パンのブランドです。このランチパックが継続して売れている理由はどこにあるのでしょうか。
定番×「飽きさせない」バリエーション
ランチパックが初めて発売されたのは1984年。ピーナッツ、青りんご、小倉、ヨーグルトの4種類からスタートし、現在ではコンビニエンスストアの定番となっています。
それから30年以上が経ちますが、毎月新商品を登場させ、常に40〜50品を販売していると言います。過去から発売されてきた商品の種類は、なんと合計771商品(2014年9月時点)。パンの1ブランドでここまで多くのバリエーションを出している商品はなかなかないでしょう。
ランチパックは誰もが知っている定番でありつつ、消費者を飽きさせないよう味のバリエーションを出し続けている点が、ひとつの大きな魅力だと思います。
「味方」を多く生み出すコラボ商品
ランチパックは毎月新商品を出していますが、単に売れそうな味を狙って出しているわけではありません。各地域やその土地の人々など社外との関わりを大切にしながら商品開発がされています。
例えば「ご当地グルメでまちおこしの祭典!B–1グランプリ」とのコラボレーションでは「横手やきそば風」、「出雲ぜんざい風」などが販売されました。また「ご当地キャラクターコラボ」では、くまモン(熊本県)、チーバくん(千葉県)、バリィさん(愛媛県)などと共同で、ご当地の素材を使った味を出しています。これらの企画は地元の人の興味喚起をするだけでなく、親近感を生み出す内容となっています。
近年行われている「キャンパスランチパック」は早稲田大学、明治大学、法政大学など10以上の大学とコラボレーションを実現。今年(2015年)2月〜3月にかけては福岡大学、西南学院大学、熊本学園大学など九州の各大学と共同で開発した味を地元で販売しました。これらは学生さんたちとの共同開発で行われており、各学校や地域で話題を呼んでいます。ランチパックは周囲を巻き込む戦略で「味方」を多く生み出しているように思います。
HPの作り込みが魅力的
ネット社会では、HPは企業の顔とも言える場所。消費者が初めて情報に触れたり、ブランドイメージを作る重要なツールです。ランチパックの公式HPは「分りやすさ」、「利便性」、「充実したコンテンツ」という点で、どれも評価できます。
タグはトップページを含めて9つと多めですが、言葉の使い方も情報の分類の仕方も非常に分りやすくできています。情報の見せ方の好みは分かれますが、ランチパックのニュースが見られる「ランチパックルーム」でコラボ企画や販売店のインタビュー、ランキングなどの情報を出したり、ランチパックに関するクイズを「ランチパックのヒミツ」として出したりと、ランチパックを知ってもらおうという姿勢が現れています。コラボ商品同様、消費者に寄り添っている感覚を与える戦略だと思います。
好感を持てるメディア対応
ランチパックの広報に対して「ブレない」点が一部で話題となっています。山崎製パン自体「東日本大震災」や「ネパール大地震」への寄付を行うなどCSR活動を積極的に行っていますし、ランチパックを作る際に出た「パンの耳」をリサイクルして「ちょいパクラスク」として販売するなど食べ物を無駄にしない工夫をしています。
話題となったのは、そのパンの耳について。まれにパンの耳がうまくカットされずに少し残っており、ネットでは「耳付き」がラッキーアイテムのようにいわれているそうです。それに対して山崎製パンの広報・IR室は「不良品であり、返品などの手続きをとらせていただきます。検品体制を強化するように指示しています」とプロとしての対応を貫き通しているそうです。
以前、山梨県内のサービスエリアなどで、多くの車が雪のため立ち往生している時、その中にいた山崎製パンのドライバーが、食事がとれなくて困っている人に積載していた配達用のパンなどを無償で配ったというニュースの際も「まずは届ける時間に商品を届けられなかった事をお詫びしなくては」と低姿勢だったと言われています。広報として当然の対応ですが、この当然ができるかできないかでブランドイメージが大きく左右されてしまうと心に留めておきたいですね。味のバリエーションやHPのコンテンツにおける遊び心はあっても消費者には忠実に、誠実にという対応が好感度を高めています。
消費者に寄り添い、誠実である姿勢にブレがないランチパック。これからの取り組みや商品にも期待したいと思います。
山崎製パン|ランチパックスペシャルサイト
(執筆・丸山夏名美)