660人の広報パーソン
実名の専門家登録が660名を超えたオールアバウト。広報の柏原浩志さんは、「若手広報担当者の会」2012年度の会長を務めるなど、社内外で持ち前の起動力を発揮する。
欠かせない情報のインプット
Q御社の広報業務についてご説明ください
「All About」は、その道のプロである約660人のガイドと呼ばれる専門家が情報を発信する、日本最大級の総合情報サイトです。Webのサービスでありながら、ガイドが実名で各分野のガイドサイトを構成しているのが特徴です。
弊社の広報担当である2人の内、私は主に企業やサービス広報を担当していますが、もう一人はガイドの広報を担当。「~について専門家の意見を聞きたい、取材したい」という案件が毎月80~100件あるので、取材内容に対して最適な専門家をアテンドするのも業務のひとつです。
Qガイドのブランディングも意識されているのですか?
ガイド一人一人が「All About」にとってなくてはならない存在であり、「All About」の顔とも言える方々です。ガイドのメディア露出を通したブランディングは、広報でも意識しています。ガイドは全員、オールアバウトの広報パーソンであり、ガイドのブランディングが、オールアバウトのブランディングに繋がると考えているからです。
Q広報業務において意識しているポイントはありますか?
「情報を積極的に収集する」ですね。特に弊社の場合、ガイドサイトが1200を超え、その分野もマネー・住宅・生活家電・デジタル・グルメ・旅行・健康と多種多様です。メディアからどんな専門家への依頼が舞い込むか分かりませんので、インプットする情報の幅には特に気をつかっています。
インプットした情報は社内にもアウトプット。情報の出しどころには情報が集まるもので、現場からも自然と私のところに情報が集まるようになっています。
Qどのように情報を収集しているのですか?
日々の社会情勢や企業の動きについて、特に注意深く追っています。テレビ番組などから、前日にあったニュースに対する専門家のコメントを求められることも多々ありますので、常に事前知識がある状態でいられるように意識しています。
最近は、鮮度のいい情報を得るために、SNSでのソーシャルフィルタリングや多様なニュースを収集整理してくれる“ニュースアグリゲーター”を活用。もちろん、頼りきりになるのは危険だと思いますが、IT業界は移り変わりの激しい業界で、昨日まで良いとされてきたことが、翌日には時代遅れになってしまうことがあるぐらい、スピード感があります。ステークホルダーがどう変わってくのか、TwitterやFacebookを活用しながら、リアルタイムに反応を確認しています。
歴史ある広報担当者の集い
Q柏原さんが2012年度の会長を務めた「若手広報担当者の会」について教えてください
「若手広報担当者の会」(通称:若担会)は、広報歴の浅い(=若手)約100社100名の広報担当者によって組織されていて、1986年に活動を開始した歴史のある任意団体です。広報パーソンとしてのスキルアップ、活きた情報の収集、会員相互間およびマスコミ関係者との人的ネットワークの形成を目的として、広報業務に関する勉強会を中心に活動しています。
分科会と呼んでいる5つのグループごとに、月に一回、勉強会や講師を招いた講演会などを自分たちの手で企画・運営しています。若担会のOB・OGには、大手企業で広報責任者になられた方も多数いて、そういった方から貴重なお話を伺えるのも歴史ある若担会ならではの魅力だと思います。2012年度は若担会自体のブランド力向上の為、現役の会員以外にも、その活動を体験していただく場作りに注力しました。
Q若担会は、柏原さんにとってどのような場所ですか?
スキルアップを目的にするというよりは、そのためのきっかけをもらう場所だと思います。私の場合、広報担当が社内に2名しかいませんので、大人数で行う広報を体験したことがありませんでした。若担会の定例会は、グループごと約20人で活動しますので、チームビルディングの広報を体験できたのは貴重でした。
また、2012年度に会長を務めてみると、判断しなくてはいけないことがとにかく多い。スピード感をもって判断する力や、マネジメントする力が身についたと思います。コラボする力も、若担会にいたからこそ身についた部分のひとつだと感じます。
Q若担会の活用方法について何かアドバイスはありますか?
ただ受け身でいるのではなく、自分から参加していく姿勢が大切だと思います。先ほども言ったとおり、セミナーや勉強会というのはあくまでスキルアップのきっかけ、気づきに過ぎません。自分に足りない部分を見つけて、磨いていって欲しいですね。
100社100名の広報マンが定常的に繋がれるプラットフォームというのは貴重だと思いますので、他社とのコラボ案件などを広報発でドンドンと仕掛けて言って欲しいと思います。
幅と厚みのある広報パーソンへ
Q柏原さんの手がけた「攻めの広報」の具体例があれば教えてください
2012年9月に立ち上げた「生活トレンド研究所」という「All About」版シンクタンクが印象に残っています。従来、書き手として情報を発信していたガイドの皆様を研究員として見立て、様々なジャンルの次なるトレンドやブームの兆しを調査レポートとして発信していくプロジェクトです。
弊社のガイドと、トレンドの裏付けをセットにしてPRしていくことで、マスメディアからの取材はもちろんのこと、企業・団体の宣伝担当・マーケッターからの仕事依頼増にも寄与できると思っており、着実に成果が上がってきています。
他にも、つい先日ですが、弊社の新サービスの「News Dig」(ニュースディグ)、宝探しゲームを企画する「タカラッシュ」、ラジオ局の「TOKYO FM」の3社でコラボレーションし、クロスメディアのユーザー参加型コンテンツ「隠された10万円を探せ!!」を仕掛けたりしました。
人脈を広げて、個と個を繋げる取り組みを意識すると、一社で展開するよりも大きな結果が生まれます。ご紹介した他企業とのコラボは、SNSなどのバーチャルではない、アナログな人間関係から話が始まり、実現に至りました。
Q最後に今後の展望や目標などお聞かせください
弊社としては、660名近いガイドをもっと活用し、「Web&リアル」なサービスとそれに紐づく広報・マーケティング施策を展開していきたいと思います。2012年9月にスタートした「じぶん学校」という社会人向けのスクール事業は、「All About」のガイドである専門家の授業をフェイストゥフェイスで受けられるもの。このように、インターネット以外でのサービスも拡大していければと思います。
次に、個人としては、これは反省でもあるのですがこの何年かは社外を向き過ぎていたので(笑)、これからはインナーコミュニケーションの構築にも挑戦していきたいですね。
33歳になり、社内では中堅の年齢になってきました。2010年には人事を担当するなど貴重な経験もできましたので、広報を軸にしながらこういった見識や経験をさらに積みたいと思っています。将来的には幅と厚みのある、経営者的な目線を持った広報パーソンを目指していきたいです。
柏原 浩志氏
- 企業名
- 株式会社オールアバウト
- 部署・役職
- 経営管理部 広報担当
- 設立
- 2000-06-01
- 所在地
- 東京都渋谷区恵比寿1-18-18 東急不動産恵比寿ビル5F
- プロフィール
- 住宅系ベンチャーでの営業・マーケティングを経て、2008年11月にオールアバウトに広報として入社。2010年からは人事、現在はマーケティングを広報と兼務。「若手広報担当者の会」2012年度の会長を務める。