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年間100本のリリースを支える現場の声
『進研ゼミ』『こどもちゃれんじ』を手がける「ベネッセコーポレーションは、2012年に100本を超えるプレスリリースを配信。数を追う中で得られたものとこれからの課題について、同社広報の濱野克庸さんに話を伺った。
隠れた革新性をアピールすることからスタート
Q広報部の体制・業務内容について教えていただけますか?
広報部全体としては、「社外広報」、「社内広報」、「IR」、「株式管理」、「ブランド」の5つの課があります。部員数は19名。そのうち、私が所属する社外広報チームは3名です。私は主に、『こどもちゃれんじ』や『進研ゼミ小学講座』といった乳幼児から小学生までの教育関連事業と、『たまひよ』などの生活領域を担当しています。
Q濱野さんが広報部へ配属になった経緯は?
異動してきたのは1999年のことです。こういったことを言うと意欲的な広報の方に怒られてしまうかもしれませんが、その時は、積極的に広報になりたいと手を挙げたわけではありませんでした。
当時所属していた部門が改編されることになり、異動先の候補として「広報」と「進研ゼミの教材編集」という全く経験のない2つの方向を提示されました。私は30歳になっていましたので、この年代で新しい仕事をスタートならする絶対数の少ない広報の方が可能性があるのかな・・・と感じ、ある意味消極的な選択として広報になったわけです。
Q今のように精力的に活動されるようになったのはいつ頃からですか?
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しかし、2004年に社内体制が変わった際に、広報部長が「この機会に新しい挑戦をしてみては?」と促してくれて、新たな取り組みとして事業関連の情報発信にも積極的に取り組んでみようという雰囲気になったんです。そこから、プレスリリースの発信数を増やしていきました。
とはいえ、最初は手元に素材となる情報もそんなに無いわけで、社内で知った講演会やキャンペーンの開催、通販の新商品情報などをコツコツ出すことから始めました。それを実践しながら、社内に「こういうこともできるのだな」という認知をだんだん広げて、現在のような状況に至っています。
メリハリをつけて年間100本のリリースを配信
Q貴社のプレスリリースの特徴は?
本来、プレスリリースはシンプルであるべきだと思いますが、弊社は教育サービスを提供しており、そこに込めた理念を語りたいという志向が強いんです。加えて、弊社のシンクタンクなどが発表する調査結果も引用して、客観的な説得力を高める努力もしているので、一般的なリリースと比較するとボリュームがあるかもしれません。
Q年間100本のリリースを配信する体制はどのようになっているのですか?
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経営戦略や新規事業など、会社として特に重要な案件のリリースに関しては、企画段階から打ち合わせに参加し、広報の視点で最初から作成に関わっています。キャンペーンなどシンプルな告知のリリースであれば、事業部に草案を作成してもらい、それを広報の目で添削するにとどめます。数のニーズにこたえていく上では、省力できるポイントを探すことで、限られたリソースながら「質と量」を両立できるのではないかと考えました。その結果、現在のスタイルに落ち着いたのです。
ただ、ここ数年、教育から生活まで多様な内容かつ、さまざまなレベル感のものを発信していく中で、当然結果の伴わない案件も増えてきました。発信の数を増やしたことで、事業担当者との情報流通を活性化させることはできましたので、次のステップとして、集まってくる多数の案件からリリースという手段に合った素材を見極め、限られたパワーで最大限の成果が得られるようにしていきたいと思います。
Q貴社の調査データは、よくメディアで引用されていますね
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多数の方に協力いただいている以上、調査の結果を発信して社会に還元し、様々な議論に役立てていただく責務が弊社にはあると思います。そして、その発信が教育業界における自社のプレゼンスを向上させることにもつながっていると感じています。
Q実際にリリースを作成するプロセスはどのようになっているのですか?
大きな案件だと、私の場合は、話が出てきた段階で、まず事業部と打ち合わせを行い、外的要因などを考慮して、リリースを出すタイミングを決めます。そこから1週間くらいの期間で草案を用意し、事業部にいったん戻して、1週間ほど揉んでもらいます。その後、法務など関係各所のチェックに1週間ほど掛かります。合計すると、準備にざっくり約1ヶ月を費やすようなイメージでしょうか。
天性の「広報マン」ではないが故のスタイル
Q広報に必要なスキルはなんだと思いますか?
世の中には、天性の広報マンの方がいらっしゃると思います。社外の方とも臆することなくコミュニケーションを取ることができて、明るく行動的で情報収集に積極的なイメージです。残念ながら、私はそういったタイプではありません。
自分にできることは「人の話をちゃんと聞く」こと。こちらがちゃんと話を聞く姿勢を示していることで、「なにか困ったことがあったら、濱野に相談すれば話を聞いてもらえる」という認識ができ、結果として社内から情報が集まってくる雰囲気が醸成されていると思います。
Qリリースは現場の声がないと始まらないですよね
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外食産業にとってはデメリットなのかな?と思ったところ、結局作る過程でそのメニューへの愛着が増し、その後にお店へ行くことにもつながっており、相互にプラスになっている・・・という話でした。
これは、「こんな面白い案件がある」と生活雑誌の担当者が自らニュースレターの文案を作成し持ち込んできた素材です。非常に画が浮かびやすく、「ブーム」「レシピ」「経済」など、さまざまな切り口で扱える内容で、多数のメディアの方にお取り上げいただきました。自分で探し回るだけでは、きっと知らずに終わった素材だと思います。
Q最後に、これから挑戦したいことを教えてください
社員として、その会社の広報に関わる立場として、自社の出したいことをただ出すのではなく、多角的な見方を通して素材を磨き、社会にとって意味のある発信をしていきたいと思います。そのために、時代の変化に敏感であることはもちろん、ブログやSNSからリアルタイムで挙がってくる反応にも目を通しています。
ベネッセホールディングスの目標は、「教育事業分野で世界No.1 企業」。シンクタンクの知見など自社のリソースを最大限を生かした広報を展開し、私はその実現をサポートしていきたいと思っています。
(取材日:2012年11月20日)
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濱野 克庸氏
- 企業名
- 株式会社ベネッセコーポレーション
- 部署・役職
- 広報部 社外広報課 担当課長
- 設立
- 1955-01-28
- 所在地
- 岡山県岡山市北区南方3-7-17
- プロフィール
- 1992年に新卒で福武書店(現・ベネッセコーポレーション)に入社。基幹事業の通信教育を支える添削者「赤ペン先生」をサポートする部署に配属。1999年秋に広報部へ異動し、現在に至る。社外広報歴12年。