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PRも一勝九敗

2006年に「ファションをもっと自由に」をテーマに、ユニクロの妹分として登場したGU。マーケティング部PRチームリーダーを務めるのは、長谷太介さん。ユニクロのロシア1号店、ニューヨーク5番街店のオープンPRを成功させた長谷さんに、GUの広報戦略を聞いた。

失敗しても
会社がつぶれなければリスクを取る


QGUで記憶に新しいのが、今年6月の「渋谷パルコ店」オープンです。試着したまま街に出られる「GU Fitting」の企画考案者は長谷さんですか?


はい。渋谷への出店はGUにとって念願でしたので、いい意味でニュース化したいと考えていました。「GU Fitting」の他にも、一週間分のコーディネートを提案する「7days closet」や、商品を自宅まで無料で届ける「無料配送サービス」も行いました。

 

Qどのような発想から生まれた企画なのでしょう?


pr_interview_gu_data_image1GUというブランド名は、「ファッションをもっと“自由”に」から来ています。なので僕らは、常日頃から、お客様の「お金」と「時間」を自由にしてファッションを楽しんでいただきたいと考えています。
まず「お金」の面で言うと、GUの商品はユニクロの半額。ユニクロは最高品質のベーシックな商品を扱い、GUは最先端の流行を抑えた商品を安心品質で扱っているため実現できた金額です。

そして「時間」というのは、「お買い物時間」全てのこと。ブランドを知るところから始まって、入店して商品を選び、決済して持ち帰り、自宅にある洋服と合わせる、クローゼットに入れる。これらすべてを含めてお買い物時間なんです。いかに一つ一つの時間を節約できるかが重要だと考えています。

お客さんにとって、お店でどんなことが不自由かをミーティングする中で、「試着せずに持ち帰ったらサイズが大きかった。でも返却は面倒くさい」とか、「買い物の後、遊びたいのに買い物袋が邪魔」などの話が出てきて、「GU Fitting」や「無料配送」をやってみようということになりました。

 

Qそのような背景だったのですね。ちなみに、ニュースで「GU Fitting」を利用されたのは18人だと拝見しました。この数字は成功か失敗かで考えると?


失敗でしょうね(笑)。ただ、会長の柳井も「1勝するためには9敗しなければいけない」と言っていますし、弊社代表の柚木は、ユニクロで野菜を売る「エフアール・フーズ」で大失敗した経験があります(笑)。失敗を恐れてやらない後悔よりも、ビジネスが崩れない程度にやって成功するか失敗するか。失敗しても会社をつぶさず、次につながるように学ぶ、という考えなのです。積極的に失敗させてくれるので、非常にやりやすいですね。

 

 

「ファッション界のコンビニ」に必要な
エンターテイメント


Q企画をつくる時に意識していることはありますか?


pr_interview_gu_data_image3GUは「ファッション界のコンビニ」を目指しています。コンビニというのは非常に優れていて、たとえばカップ麺のコーナーを見ると、日清のカップラーメンや赤いキツネと緑のタヌキなど定番の商品は必ずあります。一方で、2週間で消えるかもしれない流行りの旬のカップ麺も置いてある。ド定番と流行りものを程良くマッチさせているのです。GUの商品の並べ方も、コンビニからヒントを得ています。

またコンビニでは、商品の品数が非常に絞られている。GUでもとにかく品数を絞って提供していきたいんです。品数を絞ると大量生産できるので、お客様に低価格で提供することができます。

そして、「ファッション界のコンビニ」に必要なのはエンターテイメントです。コンビニで言うと雑誌や漫画になるかと思いますが、来店したくなる仕掛けですね。エンターテイメントは人類誰もが求めているもので、ディズニーランドもエンターテイメントを提供しているところが一番の強み。僕たちも「ファンション界のコンビニ」を突き詰めながら、企画を考える時は、エンターテイメントの要素も突き詰めていきたいと思っています。

 

Q「GU Fitting」もエンターテイメントの要素がありますよね。他にはどのような企画がありましたか?


今年の4月に「日本女子博覧会」という、よしもとクリエイティブ・エージェンシーさんが主催するイベントに、GUブースを出展させていただきました。そこでGUの商品を着て、写真を撮ったらそのまま服をプレゼントするという企画を実施したところ、常時100人以上の行列ができました。

 

Qそういったイベントの場合は、KPIはどうされているんですか?


広告換算などの計測はしていますが、KPIを立てるとやれることが制限されてしまうし、実際あまり意味がないとも感じています。今の時代、イベントだけでPRしても、せいぜい数百名程度にしか伝わりません。「日本女子博覧会」でもマックス5万名、そのうちブースで体験いただいた方は10%程度です。

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なので、来てくれたお客様に情報の発信源となってもらって、いかに拡散してもらえるかまでを考えるのが良いと思うのですが、1次が発信して2次がいて…。2次くらいからこちらのコントロールの範疇を超えてしまいます。消費者が生成していくメディアは、いい意味で放っておくしかないですよね。コントロールできた場合のKPIを考えるよりも、企画の時点で、お客様がこういう風に発信してくれたらいいなというような仕掛けやネタを用意する方を重視しています。

 

 

GU銀座店オ―プンに
「一人でやりたい」と手を挙げた


Q現在のGUの広報体制について教えてください。


現在国内のチームは4名体制でやっています。雑誌を担当するプレスが2人、それ以外のメディアを担当する広報が2人。あとは上海と、今秋に台湾に出店するのですが、そこにもそれぞれPRパーソンがいます。

多岐にわたるステークホルダーの中で、GUの場合は、主に「マスコミ」、「社内」、「業界人」をステークホルダーとしています。本当はもっと幅を広げたいのですが、4名体制の中で考えるとこれで充分かなと。

 

Q長谷さんはどのような経緯でPRチームのリーダーになられたのでしょう?


もともとP&Gで広報をしていまして、2008年くらいから転職活動を始めました。世界に羽ばたく会社で学んだスキルを持って、新しい場所で挑戦してみたいと思ったのです。
当時ユニクロは海外に出店攻勢をかけていました。僕は中高時代海外にいたので英語は話せます。発音はめちゃめちゃですが(笑)。新しい場所で挑戦したい私と、英語が話せる広報パーソンというユニクロ側のニーズが合致して2009年4月からユニクロに入社しました。

pr_interview_gu_data_image4入ってすぐに、メガトンクラスの商材や海外への初出店、ブランドの次のステージを作る海外店舗の広報活動とか、面白いことばかりやらせてもらいました。

2011年10月にニューヨーク5番街店への出店が終わった後、やり尽くした感があって。2012年3月にユニクロ銀座店がオープンすることになり、ユニクロとファーストリテイリングのエースクラスの広報が全員投入されたんです。マスコミの取材も殺到することが予想されました。

その2週間後に、GUの銀座店オープンが予定されていたのですが、ユニクロにマスコミが殺到した2週間後なんて、誰も見向きもしないだろうと。でも銀座店オープンは、GUの明暗を分けるプロジェクトです。刺激が欲しかったこともあり、GU銀座店オープンに手を挙げました。「GU銀座店のプロジェクトをやりたい。手助けもアドバイスも一切いらないです」と。お金の面は助けてと言いましたが(笑)。

 

Qその頃は、まだGU内に広報機能はなかったんですか?


当時はファーストリテイリングでGUの広報をやっていたのですが、「いつまで親のスネをかじっているんだ。GUの広報を作りなさい」と言われまして。あの手この手で引き延ばしてみたのですが、ついに年貢の納め時がきまして(笑)。今では女性が強いGUの広報部で、全体を統括しながらも、召使いのように働くサーバントリーダーとしてがんばっています(笑)。

 

 

「広聴機能」が社内に浸透しないのは
担当者の怠慢


Q広報の役割についてどうお考えですか?


広報の機能としては2つあると思ってまして、ひとつ目が「情報発信機能」です。情報発信するためには、社内の情報を収集して、編集するスキルや、メディアと関係を築くスキルが必要です。今の私たちも、情報発信機能としての活動を行っていますし、多くの会社の広報が情報発信に注力しています。

もうひとつ、実際まだあまりできていないのですが、「広聴機能」があると思います。具体的に言えば、世間の声を広く聴いて、世論が今どういう風に動いているか分析し、社内にフィードバックしたり、商品開発を一緒にやったりするようなことですね。自分たちの商品を世間にアピールするだけでなく、有識者からのアドバイスを持ち返ってきて、商品をより良くする。社外と社内をつなぐアンテナ。これがGUのPRがやりたい大半の部分です。広聴の大切さが社内に浸透しておらず、トップの理解が得られないのは、PR担当者の怠慢だと思っています。

 

Q最後に、長谷さんが思う、GUで成功するPRパーソンとはどんな人でしょうか?


pr_interview_gu_data_image2自分に何ができるかと、会社が何を求めているかをきちんと理解できること。あとは情報収集機能なり、編集機能なり強みがある人。ほとんど会社に来なくても友だちが多くて、月に1回面白いパートナーを連れてくるとか、何かに長けている人ですね。

あとは何より、失敗を恐れずにやりたがる人。楽しんでやれるか、疲れたと思うかは価値観によりけりですが、やりたがりの人の方がたぶん楽しんでいます。時期によっては、情報発信するネタがない時もあるのですが、やりたがりの人であれば、ネタを探しに行く。走りながら、失敗するかもしれないと思っても、やっぱりやらない後悔よりもやって後悔した方がいい。失敗から学んだ方が、恐れて何もしないより100倍大切だと思いますので。

 

(取材日:2014年7月30日/撮影:首藤 達広)

長谷 太介氏

企業名
株式会社ジーユー
部署・役職
マーケティング部PRチームリーダー
設立
2006-03-01
所在地
東京都港区赤坂9丁目7番1号 ミッドタウン・タワー
URL
http://www.gu-global.com/
プロフィール
プロフィール 2000年に慶応大学経済学部卒業後、P&G広報渉外本部入社。入社以来約9年間、広報のスペシャリストとして活躍。2009年、株式会社ファーストリテイリング入社。2013年より株式会社ジーユーへ。マーケティング部PRチームリーダーを務める。

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