リスクを認識しながら最先端に挑戦
宇宙航空研究開発機構の広報活動、佐々木薫さんの広報にかける想いをお伝えします。
私たちの活動の積み重ねが新たな知見を開く
Q現在の仕事内容を教えて下さい
企業広報活動のほかに、Amazon.co.jpサイト内の11ストア、個々のプロモーションを支援する広報活動もおこなっています。具体的には取材対応、プレスリリース・ニュースレターの配信、メディアへの掲載を目的としたメディアアプローチ、イベントの企画運営などでしょうか。
Q通常、イベントは販促活動なのでマーケティングセクションが担当されますよね?
広報全体の企画、組織のPR全般の取りまとめを担当しています。例えば7月4日には、現役宇宙飛行士の分かりやすい解説を交えながら、JAXAとして皆さんに知ってもらいたい「打ち上げられたばかりの地球観測衛星『しずく』で観測できること」、「日本の有人宇宙活動の現状と成果」をテーマにしたシンポジウムを開催しました。
その他にも、広報誌『JAXA's』(ジャクサス)の作成や、住民の方と意見交換するタウンミーティング、星出(ほしで)宇宙飛行士の打ち上げライブ中継、更にはJAXA内外の元気な女性が集まった「宇宙(そら)ガール」座談会など(笑)。
Q多岐に渡りますね。幅広い広報活動において意識していることはありますか
「正確に理解してもらうには、どのような伝え方をすれば良いのか」を常に意識しています。JAXAの活動は国民の皆さんの税金で成り立っています。幸い、今はミッションの成功が多いので肯定的に捉えて貰えていますが、初期の頃は技術が追い付かず失敗も多く、税金の無駄使いだと批判されました。
そういった厳しい時でも、私たちはリスクを認識しながら最先端の技術や科学に挑戦する活動をしていかなくてはいけません。その活動の積み重ねが新たな知見を開いたり、皆さんの生活をより便利に安全にしたりできると信じています。
例えば、気象衛星やGPS携帯がそうです。衛星のデータで台風や集中豪雨を予報したり、正確な位置情報を把握して災害救助に役立ててもらうなど。その他、国際宇宙ステーションで実験している、無重力空間におけるタンパク質の構造分析なども骨粗鬆症やがん治療に繋がっていたりします。目に見えづらいのですが、間接的に宇宙技術は皆さんの生活に役立っているという事実を伝えたい。
映画を見ている時はエンドロールが気になる(笑)
Q正確に理解してもらうのは難しいですね。何か大事なポイントはありますか?
「相手の気持ちに立つ」ということですね。本当に伝えたいことが、相手にその通り受け取って貰えるかがポイントであって、やってみたいから、楽しいからだけで仕事をしてはいけないと思っています。このやり方、伝え方で嫌な思いをする人がいないかという視点が大事ですね。広報誌であれば、分かってもらえる平易な表現になっているか、電話対応も上から目線になってないかなど。
Q本質ですね。どのように鍛錬しているのですか?
私の場合は、オフの時でも仕事目線で周囲を見ています。例えば何かのイベントに参加しても運営側の気持ちになって、受付に人が溜まる時間やスタッフの動きを目で追ってしまいます。TVを見ている時はその裏で動き回っているスタッフに思いを馳せますし、映画を見ている時はエンドロールが気になったり(笑)。
ただ、そういうことを考えるようになったのは、今の担当(企画・グループ長)になってからだと思います。上手く仕事をしようと思ったらお手本は世の中にたくさんありますし、ヒントも転がっています。
宇宙に関心のある女性ネットワークを作っていきたい
Q佐々木さんから見て、広報に求められる素質・スキルは何ですか?
実はJAXAにはジンクスのようなものがあって、「広報をやりたい」と手を挙げる人ほど、なかなか広報部に来れない(笑)。何でもやります、何でも良いですという人ほど来やすいんです。対外的に顔が出て、成果も見えやすいからか、華やかな部署に見えるのですが、戦略を練ったり、役所に説明したり、地味な活動が非常に多い。泥臭い仕事もいっぱいあるので、そういう地道な「調整力」のある人が向いていると思いますね。
Q地道な活動でモチベーションが下がる時はありませんか?
私の場合は挑戦することが楽しいですね。こういう結果を狙ってどういうアプローチをすればよいか、何パーセントできたか、90%なのか100%なのか、なにがいけなかったか、ここは良かったか、といった過程を楽しんでいます。
人間楽しまないと損だと思います(笑)。あと、些細なところに喜びというか、楽しみを見つけることですかね。「今日は怒られた。電車も遅れる。プリントも誤字ばかりで大変だけど、天気が良いからまぁいっか(笑)」と。どこかで救われているはずだから、何か1個「今日はこれがあったらから良い日だな」という救いを求めてしまうんでしょうね。
Q最後に、これから挑戦したいことは?
広報部としては、今はミッションが成功しているのでその肯定的な背景を活かして、色々と挑戦しつつ、少ない予算で大きな効果を出していきたい。個人としては、やったことのないことをしたり、行ったことのないフィールドへ行ったりして、新しい出会いや新しい自分を発見したいですね。
実は、宇宙に関心のある女性のパワーを集結させる「ウーマン・イン・スペースネットワーク」というコミュニティを作りたいと思っています。既に欧米にはあって、日本でもやらないかと声を掛けられています。アジアも視野に、宇宙に関心のある女性のネットワークを作っていけたらと思っています。
Q正確に理解してもらうのは難しいですね。何か大事なポイントはありますか?
「相手の気持ちに立つ」ということですね。本当に伝えたいことが、相手にその通り受け取って貰えるかがポイントであって、やってみたいから、楽しいからだけで仕事をしてはいけないと思っています。このやり方、伝え方で嫌な思いをする人がいないかという視点が大事ですね。広報誌であれば、分かってもらえる平易な表現になっているか、電話対応も上から目線になってないかなど。
Q本質ですね。どのように鍛錬しているのですか?
私の場合は、オフの時でも仕事目線で周囲を見ています。例えば何かのイベントに参加しても運営側の気持ちになって、受付に人が溜まる時間やスタッフの動きを目で追ってしまいます。TVを見ている時はその裏で動き回っているスタッフに思いを馳せますし、映画を見ている時はエンドロールが気になったり(笑)。
ただ、そういうことを考えるようになったのは、今の担当(企画・グループ長)になってからだと思います。上手く仕事をしようと思ったらお手本は世の中にたくさんありますし、ヒントも転がっています。
宇宙に関心のある女性ネットワークを作っていきたい
Q佐々木さんから見て、広報に求められる素質・スキルは何ですか?
実はJAXAにはジンクスのようなものがあって、「広報をやりたい」と手を挙げる人ほど、なかなか広報部に来れない(笑)。何でもやります、何でも良いですという人ほど来やすいんです。対外的に顔が出て、成果も見えやすいからか、華やかな部署に見えるのですが、戦略を練ったり、役所に説明したり、地味な活動が非常に多い。泥臭い仕事もいっぱいあるので、そういう地道な「調整力」のある人が向いていると思いますね。
Q地道な活動でモチベーションが下がる時はありませんか?
私の場合は挑戦することが楽しいですね。こういう結果を狙ってどういうアプローチをすればよいか、何パーセントできたか、90%なのか100%なのか、なにがいけなかったか、ここは良かったか、といった過程を楽しんでいます。
人間楽しまないと損だと思います(笑)。あと、些細なところに喜びというか、楽しみを見つけることですかね。「今日は怒られた。電車も遅れる。プリントも誤字ばかりで大変だけど、天気が良いからまぁいっか(笑)」と。どこかで救われているはずだから、何か1個「今日はこれがあったらから良い日だな」という救いを求めてしまうんでしょうね。
Q最後に、これから挑戦したいことは?
広報部としては、今はミッションが成功しているのでその肯定的な背景を活かして、色々と挑戦しつつ、少ない予算で大きな効果を出していきたい。個人としては、やったことのないことをしたり、行ったことのないフィールドへ行ったりして、新しい出会いや新しい自分を発見したいですね。
実は、宇宙に関心のある女性のパワーを集結させる「ウーマン・イン・スペースネットワーク」というコミュニティを作りたいと思っています。既に欧米にはあって、日本でもやらないかと声を掛けられています。アジアも視野に、宇宙に関心のある女性のネットワークを作っていけたらと思っています。
佐々木 薫氏
- 企業名
- 宇宙航空研究開発機構
- 部署・役職
- 広報部 企画・普及グループ長
- 設立
- 2003-10-01
- 所在地
- 東京都調布市深大寺東町7-44-1
- プロフィール
- 広報部 企画・普及グループ長。
1989年に(旧NASDA)入社し広報セクションに配属。当時は、毛利衛さんが日本人として初めて宇宙に行くという準備の年。色々なベテラン広報が集まるチームに参加し、想定問答集やPR冊子、プレスキットなどを作成した。
その後、筑波宇宙センターでの事業所広報、予算、国際調整を担当。2009年中頃までは相模原キャンパスで小惑星探査機「はやぶさ」プロジェクトにも携わり、プロジェクトマネージャーの川口淳一郎氏とも一緒に働く。2009年7月に広報部、企画・普及グループ長に就任し現在に至る。