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株式会社伊賀の里モクモク手づくりファーム 浜辺 佳子氏のトップ画像

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伊賀からの狼煙。ファンを作り続ける有機組織

三重県伊賀市に位置する農業交流施設「モクモク手づくりファーム」。地産地消の成功例として、全国の自治体や農場からの視察が絶えない。同社で広報18年の浜辺佳子さんは、メディアとの接し方に創意工夫を重ねてきた。

「人」と「体験」で商品の魅力を何倍にも引き出す


Q体験教室に力を入れている理由は?


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今は、ただ安売りすれば良いという時代ではありません。私たちが提供するものが良いものであるということを消費者に知ってもらうには、「食育をして交流してもらう」のが一番だと思っています。

たとえば、イチゴ狩り。うちでは取り放題はやっていません。その代わり、いちごがどのようにできるのか、どうしてうちのイチゴはおいしいのかを、楽しくわかりやすく担当者が説明します。

帰り道に子供が、「お父さん、お腹いっぱいだから、もう明日からイチゴいらない」と言うのではなく、「お父さん知ってる?イチゴって、ミツバチさんがいないと実ができないんだよ」と言って帰って欲しい。おいしい理由を理解してもらって、農業が楽しいということを肌で感じてもらう。その体験を通して、ファンになってもらえるのだと思います。

Q遠方の顧客とはどのように関係を築いているのですか?


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離れた人には、お手紙やホームページ、Facebookでコミュニケーションしています。それぞれ担当がいて、色々な質問に返答しています。お年寄りのお客さんも多いので、電話対応も大事ですね。ただ注文を聞くのではなく、できるだけお話をして接点を作るようにしています。

名古屋や大阪の方の中には、月に2~3回足を運んで下さる方もいます。子供が○○のお兄ちゃんに会いたいとか、○○くんが作ったトマトが食べたい、○○さんのお米を買いたいといって来てくれるんです。

Q「人」での繋がりは強固ですよね


もしTPPが始まって、5キロ500円ほどで安いお米が日本に入ってきても、モクモクの会員さんは、値段ではなく、安心とおいしさの信頼と愛着でモクモクを選んでくれると思います。「担当の○○くんが、ものすごい苦労をして作った集大成のお米だから応援するね」といって、モクモクのお米を買ってくれる。そんな姿を目指しています。



「モクモク」より「浜辺」で覚えてもらう


Q浜辺さんの経歴を教えて下さい


私は1992年に総務として入社しました。3年目に、趣味が食べ歩きだったことから、「総務より企画とかをやった方が良い」と専務から勧められ、ついでに広報も担当することになりました。今年で広報歴は18年です。

Q大抜擢ですね(笑)


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広報になった時は、何をして良いかまったく分かりません。ですが、ある時、親しくしていた広告会社の方からマスコミリストをいただき、「モクモク通信を送ってみたら?」と助言してくれました。言われた通り送ってみると、反応があったんです。その一枚のリストから、私の広報が始まりました。その方へ広告案件を発注していたわけではなかったのですが、本当に親切な方で感謝しています。

その後は、反応を上げるために試行錯誤です。封筒を変えたり、封筒から見える写真を媒体のジャンルごとに変えたり。リリースに、私のイラストと名前、その横に携帯電話の番号を書いたら、私の携帯へ電話がくる確率が上がりました。手探りながらも、だんだんとノウハウが確立されていった感じです。

 

 

Q会社の番号ではなく、携帯の番号を書いているんですね


私は、「今回は女性向け媒体だからイケメン店長に出てもらおう」といったようなプロデュースをしているだけ。メディアとの窓口を担当しているだけなので、電話ひとつあれば仕事ができちゃう。ただ、四六時中掛かってくるので、公私混同しないと広報は務まらないですね。

そのおかげか、モクモクといえば「浜辺さん」というか、モクモクより「浜辺」でメディアの方には覚えてもらっています。結婚して苗字は変わったのですが、名刺はそのまま。「浜辺ブランド」は今も使い続けています。



東京、名古屋へ流行を視察に


Q園内の看板や販促ツールはどのように作っているのですか?


ブランド推進部にデザイナーが8名いて、ロゴ、ポスター、ホームページ、園内の看板などはすべて内製です。

気を使っているポイントは、たとえばチラシの場合、「スーパーのチラシの真逆を目指す」という点です。イメージカラーはベージュ、緑、オレンジで、原色は使わない。手触りが良くて、テカテカしない用紙を使う。いかに自然に見てもらえるかを追求しています。ギフト用のカタログも、光沢のある用紙の方が高級感は出ますが、あえて使わない。手触りも見た目も、お客さんが触れるすべてをコーディネートしています。

Q社員150名に対して、デザイナー8名は多いですね


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今の時代、おいしい物を作るだけでは商品になりません。「かわいい」、「かっこいい」とならないと売れない。私たちは、デザイナーや商品開発の人と一緒に、東京や名古屋へ行って、何が流行っているのか視察します。流行りを農業に取り入れるとこうなる、という姿を、忍者の里だけに、伊賀から狼煙をあげて発信しているんです。

都会は田舎にちょっと憧れていて、田舎は都会に憧れている。田舎では、都会で流行っているものを、そのまま取り入れても反応しません。田舎臭さのある文字にするとか、ちょっぴり土臭いけど可愛いとか、畑っぽいイメージにするとか、田舎風にアレンジする必要があります。

Q仕事に対する社員の意識はどうですか?


仕事と遊びが重なっている社員が多いですね。休みの日は百貨店の地下にもぐっているか、食べ歩きをしている。新しい建物やお店ができたら見に行きますね。

「一週間リフレッシュ休暇」という、お給料をもらって1週間休める制度があるのですが、ビール担当はベルギーに、パン担当はドイツに、ディズニーランドへサービスを学びに行く者もいます。お客さんの立場で体験してくるのは、消費者心理を理解する上でとても重要です。社長もよく、「教科書は読まなくても良いから、消費者心理を読んでくれ」と言っています。



メディアへは決して押しかけない


Qメディアへのアプローチはどのようにされているのですか?


伊賀地域は、新聞がローカル含め6社。他には、載りたい雑誌を選んでアプローチしています。ちょうど大阪と名古屋の間にあるので、『関西ウォーカー』にも『東海ウォーカー』にも載るチャンスがある。『じゃらん』もそう。発信していく上ではありがたい地理的条件だと思います。

東京のメディアから連絡があった場合は、必ず速達やクイック便で送ります。自分が行けない代わりに、「えっ、もう来てるの?」となるスピード対応を意識しています。

Qメディアとの関係作りで心掛けていることはありますか?


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私の場合、記者さんに来てもらうことはあっても、決して「押しかけない」ようにしています。押しかけてしまうと、載せたくない時、「せっかく来てもらったのに、ごめんね」となっちゃう。全てのプレスリリースは、「よろしければお越し頂けますと幸いです」で閉める。「ぜひお越し下さい」とは書かきません。

メディアも、私たちのいち応援者として認識しているんです。「モクモクはまじめに農業をがんばっているから」、「安心・安全だから」という想いがあって、私たちを理解して取材してくれている記者の方がほとんど。消費者であり、記者であるというパターンです。

なので、メディアとの接し方もお客さんと同じなんです。まず来てもらって、体感していただいて、「もし良かったら書いてください」というスタンス。強引にPRしても関係は続かないと思います。



通販、イベント、レストランを戦略的に繋ぐ


Q今後の展開は?


2014年春に、大阪に「あべのハルカス」という日本一高いビルができます。そこに、今までにないレストランを作って欲しいとの依頼がありました。ビュッフェの勉強に海外をまわり、そのデザインを参考にして、独自の、食育ができる日本初のレストランを作ろうと思っています。

Q課題は何でしょうか?


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社長と専務が現在61歳で、5年後には引退したいとよく言っています(笑)。社長や専務が築いてきたネットワークを、若い世代がどう引き継ぐかが課題ですね。若い人も、消費者との関係構築はできているので、同じ業界の人との繋がりを広げていって欲しいと思います。

広報としては、通販、イベント、レストランすべてがリンクした情報発信を実現したいと思います。今は、クリスマスのイベントを開催しても、その場でクリスマス商品を売っていない、ばらばらの状態なんです。2012年4月に、Facebookも立ち上げたので、それぞれの活動を戦略的に繋げていきたいですね。

浜辺 佳子氏

企業名
株式会社伊賀の里モクモク手づくりファーム
部署・役職
情報・商品開発戦略室 マネージャー
設立
1987-04-01
所在地
三重県伊賀市西湯舟3609
URL
http://www.moku-moku.com/
プロフィール
1993年、伊賀の里モクモク手づくりファームに総務として入社。1995年から企画と広報を兼任。以来、18年間に渡ってメディアとの窓口を担う。趣味は食べ歩き。

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