広報が有名になればサービスの知名度も上がる
高クオリティの写真素材を5,000枚以上無料で配布しているぱくたそ/PAKUTASO。個人サービスながら企業とコラボレーションするなど異彩を放っています。同サービス広報であり、フリー素材モデルとして有名な大川竜弥さんに個人サービスにおける広報についてお話を伺いました。
小さなサービスにこそ広報を
Q大川さんがぱくたそのフリー素材モデル兼広報になったきっかけは?
映像の専門学校を中退してから、ユニクロやIT企業、ライブハウスで働いてきましたが、29才の時に事故に遭って働けなくなってしまいまして。個人でライター業をしていたのですが、津田大介さんや佐々木俊尚さんみたいに、IT業界で有名になれば多少仕事が増えるんじゃないかなと。
2011年の秋に、「ぱくたそ」を知りました。Web制作をしていたsusi-pakuさんが、使いやすい写真がないな、買うと高いし撮ると手間がかかる、なら自分で作っちゃおうと思って始めたサービスです。数ある国内無料写真素材のサイトの中でもクオリティが高いし、見やすくて使いやすい。個人サービスだけど、法人のサービスに負けない差別化をはかっていると思いました。
「若手芸人の気持ちでなんでもやります!」とメールをして、2012年3月にぱくたそのフリー素材モデルに。2014年1月から広報も兼任するようになりました。
Q個人サービスに広報がいるのは珍しいですよね。
小さな組織にこそ、広報が必要だとぱくたそにいて強く感じました。ぱくたそはいいサービスを作っています。でもサービスの存在自体を知ってもらわないと始まりません。ぱくたそに広報という役職を設け、個人サービスなのに広報がいるのは珍しい、個人サービスなのに法人と変わらない姿勢で運営をしていると認識してもらうことで、良い意味のギャップを生み出すのも狙いでした。小さいからこそ発する声を大きくしていかないと大きな組織には敵いませんので。
使ってくれる人に会うのが一番早い
Qフリー素材モデルになる以外に、広報業務としてはどのようなことを。
平日はFacebookページで新しく追加したフリー素材をアップするといった活動がメインです。写真に関連した300~400文字前後の文章を書いて、一日に最低でも5枚フリー素材をアップしています。
QFacebokに力を入れた理由は。
国内無料写真素材サイトのFacebookページで最も多いいいね!数を獲得することが目的でした。「日本一」というコピーはメディアに受けがいいので、宣伝材料のひとつとしてFacebookページの運用に力を入れています。6カ月ほどで国内無料写真素材サイトのFacebookページでは最も多いいいね!を獲得したので、今は無料・有料を含めた国内写真素材サイト1位を目指しています。
Q他に広報業務としては?
フリー素材に面白いタイトルをつけています。基本的にフリー素材は、デザインや編集の仕事をしている人しか見ないので、一般の方が見ても楽しいページにしたいなと。
「納期に追われ一週間ほど漂流した後、砂浜に打ち上げられたノマドワーカー」「『オレの家、インテリアは腐乱腐乱っていうオシャレな雑貨屋で買いそろえたんだ』とドヤ顔で口説くゾンビ」とかですね。見た人が思わず拡散したくなるようなツッコミどころを意識してタイトルをつけています。これによりSNSからの流入が大幅に増加しました。
認知度が上がると
仕事がしやすくなる
Qネット以外で行っている広報活動はありますか?
いろんな人に会っています。自分のフリー素材をどうしたら使ってもらえるか考えた時に、使ってくれる人に会うのが早いなと思ったのがきっかけです。デザイナー、ブロガー、Webの編集者の方たちに積極的に会いにいきました。やはり一度会って認知してもらうことで、その後僕の写真が目に止まるようになるのか、よく使ってもらえるようになりました。
Q会いに行く時は、メールか何かで突撃でアポイントを取るのでしょうか。
そうです。「フリー素材モデルです」と言って会いに行くと、もちろん「なんだこいつ」という顔される時もあります(笑)。
歓迎されなくて当然なので気にしません。わかってくれる人はわかってくれるので、より有難さを感じます。同業者のトークショーやイベントにも参加して、ネットの著名人に会いに行くという種まきも1年くらい続けました。
認知度も上がっていくと、フリー素材について説明する手間も省けて、仕事もしやすくなることを実感しました。広報は縁の下の力持ちとも言われますが、会社の知名度を一気に上げるのは、やはり中の人間がガツンと知名度をあげることだと思うんです。広報自身が看板になることでのメリットはたくさんあると思います。
Q知名度のある広報が辞めてしまったら、後任が同じやり方で広報できないというデメリットもありますよね。
広報担当者が知名度を上げる以上に、組織全体で広報の重要性を共有することは課題ですね。広報の業務が形式化されていれば引き継ぐことはできますし、もし著名な広報担当者が辞めてしまった場合、広報が辞めてしまったで終わらせるのではなく、次はどんな広報が引き継ぐの?という期待感を与える仕組みづくりが必要不可欠です。LIGさんがうまくやっていると思います。ぱくたその場合、私が辞めることはないと思うので、今まで以上に知名度を上げるように取り組みます。
Q大川さんが広報になられてからぱくたそに変化はありましたか。
僕が入った時、サイトのPV数は月間40万程度だったのですが、広報を始めてから1年で月間200万PVを超えるようになりました。
Qすごいですね。PV数が大幅に上がった要因は?
要因のひとつは、GIGAZINE、ねとらぼ、アメーバニュースなど大手ウェブメディアで定期的に企画が紹介されたこと。あとはサイトの使い勝手を一から見直しリニューアルをしたことです。立ち上げから約1年半後の2013年10月に月間100万PVを突破しました。あとは僕がフリー素材モデル兼広報になり、Facebookページの運用や、ウェブメディア以外のテレビ、雑誌、新聞などのメディアに取り上げられたことです。
ぱくたそがなくなったら
フリー素材モデルはやめる
Qフリー素材なので、金銭的な利益は少ないと思いますが、大川さんが広報を続けるモチベーションって何でしょうか。
ぱくたそは、「ありがとう」をたくさんもらえるサービスです。最も多いお礼は「無料なのにクオリティの高いフリー素材を提供してくれてありがとうございます」「いつも楽しませてもらっています」というものです。僕を含めたぱくたその運営に関わる個人が積極的にSNSを利用し、ユーザーから直接お礼を伝えていただくことのできる環境づくりをしています。きっとサービスと接するより、サービスを運営するメンバーと接するほうがユーザーにとっても、我々にとっても楽しいので。あとは認知度が上がっていることも実感としてわかるので、それがモチベーションになっています。
ぱくたそが続いている限り、僕はフリー素材モデルであり広報をやりますが、ぱくたそがなくなったら他のところでフリー素材モデルをやる気はないですね。ぱくたそのミッションは、「使って楽しい、見て楽しい」のキャッチコピーの通り、今までデザイナーや編集者、ライターなどコンテンツの製作に関わる人しか利用する機会がなかったフリー素材というものを、一般層にまで広げることです。使うだけではなく、見るだけでも楽しめるサービス運営を今後も拡大していきます。
(取材日:2014年10月6日/撮影:菅井 淳子)
大川 竜弥氏
- 企業名
- PAKUTASO(ぱくたそ)
- 部署・役職
- 広報兼モデル
- 設立
- 2011-05-01
- 所在地
- -
- プロフィール
- 自称・日本一インターネットで顔写真が使われているフリー素材モデル。