記者経験を生かした広報。「伝え方」でメディアとの関係を築く
関東圏で活動する生協が集う、パルシステム生活協同組合連合会。元記者の経験を生かす広報担当、植田さんに話を伺った。
ひとくくりにできない、全国で1,000を超える組織「生協」
Qまずは、生協というシステムについて簡単にご説明ください
『生協』と言いますと、すべて同じ組織と勘違いをされている方もいますが、消費生活協同組合法(生協法)という法律によって定められた相互扶助組織をそれぞれ生協といいます。パルシステム以外にも「○○コープ」「生活クラブ○○」など全国で1,000を超える生協があります。
活動内容としては、食品の供給事業、病気や事故に対して共済金を給付する共済事業など多岐にわたります。以前は、一つ一つの生協は生協法により県をまたいだ活動はできなかったため、パルシステムでは連合会という形で各県の生協をとりまとめた活動をしています。
Qパルシステムは他の生協に比べてどんな特徴がありますか?
福島から静岡のエリアで活動する10の生協の連合会として活動しています。組合員数は135万人です。組合員の皆様のお宅に食品を個別に配達する活動が中心で、パルシステム独自の基準に沿った、添加物の少ない商品や減農薬・産直をコンセプトにした商品を展開しています。
一番お伝えしたい事を「最初か最後」に伝える
Q広報部の活動内容とその中での植田さんの役割は?
広報部は、運営本部の直下にあり部員は6名です。業務は、職員の着る制服の管理から、CM関係まで広範になりまして、私はプレスリリース、ウェブサイトのニュースの更新、取材対応、さらに社内報の執筆などを主に担当しています。
Q植田さんの経歴を教えてください
5年前の、2008年に弊会に入職しました。前職では記者をやっていましたが、入社後はずっと広報を担当しています。取材を受ける側の大変さというものを、身をもって知りましたね(笑)。取材のお声がけを頂いてからの準備一つをとっても大変でしたし、急な依頼にも対応しなければならないこともあり、慣れるまでは本当に戸惑いました。
Q広報で前職の記者経験は生きていますか?
取材して頂いた時に、一番お伝えしたい事を「最初か最後」に伝えるよう心がけています。これはなるべく印象に残すためです。内容が固まっていてちゃんとご説明できるときは最初に、反対にまだ内容が固まっていない企画をお知らせしたいときには最後にお伝えします。
また、取材に際してはご足労頂くことも多いので、お土産になる話を用意するといったこともなるべく意識しています。ただ、記者の方によって、心に響くお話の仕方や満足して頂けるおもてなしの方法は違うと思いますし、試行錯誤しています。
トラブル時は「~かもしれない」ではなく「わからない」と答える
Qパルシステムさんならではの“強み”とは何でしょうか?
私共が取り扱っている農業や食への“近さ”ですね。生活協同組合という名前の通り、人と人とのつながりで動いています。生産者と消費者だけでなく、業種間をまたいだ横のつながりや農法研究など生産者同士をつなぐ取り組みも長くやっています。
パルシステムは単なる流通ではありません。記者の方に私たちの商品や活動についてご説明するときも、その背後にある理由や意図まで含めてお話しするとすぐにご納得頂けるケースが多いです。
Q震災後も自主基準の検査を合格した商品は、福島産であっても提供していますよね
20年以上、弊会とつながっている生産者の方もたくさんいます。震災の直後は確かに組合員の皆様から不安の声を頂戴することもありましたが、パルシステムとして自主基準を策定、徹底的な検査をし、広報としてもその結果をウェブサイト等で公開し続けた結果、かなりご納得を頂けていると思っています。
Q食品を扱っているので消費者の目は厳しいと思いますが、トラブル時の広報活動に関してはいかがでしょうか?
これは、社会情勢や直近の事故によってマスメディアでの取り上げられ方が大きく変わりますので、その時々で最適な対応が求められます。
たとえば、2008年6月に弊会の提供する商品を利用頂いた方からヒスタミン(※)による食中毒が確認されました。その約半年前に、中国製冷凍餃子中毒事件が発生、食の安全に対する意識が高まっていたこともあり、このニュースは大きく報道され、メディアから多くの問い合わせがありました。
こういった際は慌ててお答えしてしまいがちですが、とにかく知ったかぶりはしない。「~かもしれない」ではなく、わからなければ「わからない」としっかりと回答し、よく調べてから必ず回答をお伝えするということを徹底しました。
※ヒスタミン:赤身魚の筋肉中に含まれるアミノ酸がヒスタミン生成菌によって変化したもので、アレルギー症状を起こす原因となる物質。サバ寿司を食べて発症するものも、このヒスタミンが影響しています。
『目につくこと』が広報の仕事だと思います
Q広報の仕事は一言で言うとなんだと思いますか?
記者の『目につくこと』が広報の仕事だと思います。漫然と業務をこなしているだけではルーチンワークとなってしまい、思考が麻痺することにつながってしまいます。そうすると、記者時代の経験から言っても、一日に数多出るプレスリリースや広報素材の中で弊社が『目につく』ことは難しいと思います。
Q『目につく』ために、なにか意識していることはありますか?
見出しを短くするために自分の中でルールを作ったり、少し見出しで遊んでみたりはよくやりますね。幸いそういった時にプレスリリースの反応も良い気がします。
やはり、反響があるとモチベーションが上がりますよね。プレスリリースであれば取材や掲載、職員報であれば読者の声といったリアクションを、なるべく頂けるよう目指しています。
Q最後にこれからの目標などお聞かせください
より多くの方に私共の活動を知って頂きたいですね。「ああ、パルシステムってそんなこともやっていたんだ」と言って頂けるような活動が、まだまだたくさんあります。組合員以外の消費者の方にもそれが伝わるような広報ができればと思っています。
植田 真仁氏
- 企業名
- パルシステム生活協同組合連合会
- 部署・役職
- 運営本部 広報部 副主任
- 設立
- 1990-02-09
- 所在地
- 東京都新宿区大久保2-2-6 ラクアス東新宿
- プロフィール
- 前職は記者として活動し、2008年にパルシステム生活協同組合連合会に入職。以後、運営本部広報部にして社内・社外広報の両方に従事。