パイオニア製品の市場を創る。メディアとの関係作りで養った広報の基礎
セールス・オンデマンドは、2012年9月に生誕10周年を迎えたロボット掃除機「ルンバ」の日本総代理店。「ルンバ」販売開始から現在に至るまでの広報戦略の歩みと同社が新たに取り扱いを始めた高機能空気清浄機「ブルーエア」について広報の坂井さんに話を聞いた。
訴求メッセージを「ロボット掃除機」から「自動掃除機」に
Q御社の創業は、ルンバの魅力に惚れ込んだ代表の木幡さんが、米アイロボット社に直交渉したのがきっかけだそうですね
弊社代表の木幡は、前職で海外の優れた製品を日本で広める業務に携わっていました。さまざまな海外製品をリサーチしているうちにルンバと出会い、「こんなに優れた製品があったとは!」と感動したそうです。しかしいくら性能がよくても、日本市場のニーズに合わずに撤退してしまう海外製品が多いのも事実。そこで、米マサチューセッツ州のアイロボット社に自ら手紙をしたためて、日本における販売戦略をプレゼンし弊社の創業に至りました。
2010年からは、スウェーデンの空気清浄機専業メーカー、ブルーエア社の日本総代理店にもなっています。
Qルンバはどのように売り始めたのですか?
まずは、お掃除で苦労しているシニアや富裕層に向けて、百貨店の外商さんに販売していただきました。呉服や美術品、ジュエリーなどの高額商品と一緒に並べると、好奇心半分で購入してくださるお客様が現れました。驚くほどきれいにゴミが取れるというクチコミがそこから広がり、家電量販店さんでも取り扱ってもらえるようになったのです。
ただ、日本では「ロボット」というと、二足歩行のイメージが強い。いくら「ロボット掃除機」と訴求しても、お客様に製品の良さがうまく伝わらず、丸い形ゆえに、体重計やCDプレーヤーと間違われることもありました。
Q漫画やアニメの影響で、日本人はニ足歩行のロボットを連想しがちですね
今でこそ「ロボット掃除機」の名称は一般的ですが、2004年当時はまったく。そこで弊社は、ルンバの白物家電市場への参入を狙って、「自動掃除機」というキャッチフレーズを使いました。その結果、「自動で動くロボット掃除機」という認識が広がり、全自動洗濯機や食器洗い機と同様、ルンバは家事時間を短縮できる「時短家電」というイメージが浸透していきました。現在は国内の大手家電メーカーも追随してきていますが、ロボット掃除機のパイオニアは弊社だと自負しています。
数値、小ネタ、媒体ごとの関心を体で覚える
Q媒体ごとにアプローチの仕方は変えていますか?
たとえば、新聞社には経済部、生活部などさまざまな部署があります。空気清浄機「ブルーエア」の場合であれば、経済部の記者さんには客観的なデータをお見せできるよう準備しますし、生活部の記者さんには、「現在媒介しているウイルスにどのような効果を示すか」という身近な効能を説明する資料を持参しています。
Web媒体の記者さんには、「へえ」と思ってもらえる小ネタを用意。トレンドや時事に関するお話は興味を持っていただきやすく、お互いの会話も弾みます。少しずつですが関係を深めていきました。
こうした情報提供の仕方は、記者さんや編集さんに育てていただいたおかげで身につきました。たくさんのお叱りやお褒めの言葉をいただいたおかげで「広報の仕事はかくあるべき」と学んだんです。
Q記者の方からは、どのようなアドバイスをもらったのですか?
私は2008年に入社し、まずルンバのメディアキャラバンを始めました。その際、ルンバが大好きなモノ系雑誌の編集さんにお会いしたのですが、当時の私は、説明の順序や切り出すタイミングなど、まったくPRができませんでした。専門の編集さんは、製品情報はもちろん、技術的な突っ込みも厳しい。「製品広報は、やっぱり知識だな」ということも痛感しました。
以来、その編集さんに積極的にお会いして、PRのポイントや話し方、メディアごとのアプローチ方法など、たくさんの情報を教えてもらいました。
他にも、ある雑誌の編集さんから、「あなたと話していると、恋で周りが見えなくなった女の子と話しているようでつまらない」とご指摘をいただいたこともあります。一所懸命に説明するだけではだめで、「広報担当者なら一歩引いて、第三者の視点に立ったプレゼンができないと成長できませんよ」と促されました。それ以来、自社製品をすごくシビアな目で見るようになり、お客様目線に立ったプレゼンを心がけています。
ルンバ、ブルーエアに続く魅力的な製品を発掘したい
Qブルーエアを取り扱い始めたきっかけはなんですか?
2010年から、スウェーデン生まれの空気清浄機「ブルーエア」を取扱い始めました。実は、ルンバと製品への考え方が似ているんです。ルンバは、人の代わりに床の掃除を徹底的に行うことを追及していて、ブルーエアは、人が空気を吸い込むまえに徹底的にキレイにすることを目指して開発されています。イオンなどの効果に頼るのではなく、独自開発したフィルターで、国内メーカーの捕捉粒子サイズが主に「0.3マイクロメートル」なのに対し、「0.1マイクロメートル」の粒子まで目詰まりを起こさずに、除去することができます。
また、加湿機能が付いていません。「なぜ?」と思われるかもしれませんが、空気清浄機自体に加湿機能を搭載したら、汚い粒子やバクテリアを捕獲したフィルターも加湿することになります。そのフィルターに水分が付き、5年、10年とフィルターを交換しなければ、菌は増殖。まさに菌の温床になってしまいます。これもブルーエア訴求ポイントの一つです。
私自身、この仕事に就くまで、家電には全く興味がありませんでした(笑)。ただ、製品を知れば知るほど、大変性能が高く、なかなか日本ではない明確な「単機能追求型」の製品であることが分かってきました。このような製品のPRに携われるのは幸せですね。
Q最後に、今後の目標を聞かせてください
ルンバに関していえば、「一家に一台」まで、ロボット掃除機が当たり前の空気感を作り、「その中でもルンバがいい!」と選んでいただけるようにしていきたいと考えています。そのためには、ルンバを使うことにより、有意義な時間をどれだけ作ることができるかを、お客様に理解してもらう活動をしていきたいです。
弊社のミッションは、海外の優れた製品を日本国内で浸透させること。海外にはまだまだ優れた製品が存在するはずです。ルンバ、ブルーエアに続く魅力的な製品を発掘したいと思います。幸いにも弊社は、社員がそれぞれのアイデアを持ち寄り、自由にやらせてくれる社風なので、どんどん挑戦していきたいですね。
坂井 奈央氏
- 企業名
- セールス・オンデマンド株式会社
- 部署・役職
- マーケティング1部 広報・PR
- 設立
- 2000-04-01
- 所在地
- 東京都新宿区下宮比町2-26 KDX飯田橋ビル3F
- プロフィール
- マーケティング1部 広報・PR
前職はジュエリーブランドの本社でPRを担当。2008年にセールス・オンデマンドに入社し、現在に至る。