社内報の復活で、会社に新たな息吹
サッポロホールディングスの広報活動、大登貴子さんの広報にかける想いをお伝えします。
1対20ではなく、1対1を20回繰り返す
Qまずは現在の業務内容を教えてください
当社の広報室は、「社内広報」と「社外広報」の2チームに分かれていて、私は社内広報チームのリーダーをしています。全社的な社内広報は、1970年に『麦苑(ばくえん)』という紙の広報誌ができたのが始まりです。長らく工場が主体でしたので、それまでは工場ごとに工場報のようなものを作っていました。
私は1993年に入社し、96年に『麦苑』の担当として広報室へ配属されたのですが、実は会社の方針で2002年に社内報は一度廃止されてしまいます。
Qその後2008年に、大登さんが中心となってイントラネットで復活しますよね。立ち上げは大変だったのでは?
2002年の廃止から2008年まで6年ブランクが空いてしまいました。この6年の間に入社した世代は、そもそも社内報があったことを知りません。そのため、「イントラネットで社内報をやります」となっても「はっ?」という反応なんです。
「社内広報って何?」「自分以外の人の仕事を知らなきゃいけないの?」「会社の方針を理解するのは難しい」と。
一番のハードルは「自分事に受け止めてもらうための」意識改革でした。リニューアルでもなく、まったく何もないゼロからスタートしたようなもの。何のコンテンツで、どんなコミュニケーションを取ったら満足してくれるのか。情報を発信する側にどうすれば仲間を引き込めるか苦労しました。
Qどのように成し遂げたのですか?
イントラネットで社内報を立ち上げた頃は、アクセスも少ないし、投稿もほとんどありませんでした。そういう時に、投稿に協力してくれた人に必ずお礼をしたり、アクセス数がどれくらいだったかを報告する、ということを20人いれば20人全員にしていました。それだけ大事にしています、という姿勢を伝えたかったんです。
他にも、リアルタイムに「今あなたの記事をアップしました」とメールしたり、「アップしたので確認して下さい、意見があったら下さい」とコミュニケーションしていました。
どんな情報であっても、ありがとうという感謝と、掲載しましたという報告を必ずしています。そういう日々の細かいお礼や感謝ができることが大事だと思います。一斉連絡やCcでまとめてお礼なんてのはダメですね。1対20ではなく、1対1を20回繰り返さないと仕事がなおざりになってしまいます。
Q工夫した点を教えてください
当社のイントラネットの特徴として「業務の通り道」であることが挙げられます。内線番号や各業務に応じたメニュー、勤務表や営業日誌、カレンダーなどが表示されていて、社員は業務中に必ずイントラネットを使用します。そのトップページに社内報も掲載されています。やはり他のサイトに移動する形式だと見て貰えないので。
社内報のコンテンツは、広報室が発行する「写真ニュース」や「★スクランブル」、その他にも、お客様の声、経営からの動画ニュース(1ヶ月に1回メッセージを送る)、コラム&トピックス(各部署発信)など。たくさんの部署が集っているので、あまり社内広報チームがでしゃばらずに、お膳立てをしたら後は任せる。社内広報チームが牛耳らないというのがポイントですね。
モットーは「明日の朝刊より早く!」
Q最初から上手く回っていたのでしょうか?
いえ、最初は写真撮影から記事作成、編集、レイアウトまで、何でも自分でやっていました。でもそうすると、言葉やレイアウトなど、トーンが一緒なんです。統一感も大事ですが、もっともっとみんなが集まっている感じを出したくて、今はそれぞれの人の個性に任せるようにしています。
Q2009年に「社内の風通しが良くなった」と社長賞を受賞しましたね。どんな時に風通しが良くなったことを実感しましたか?
まず情報の伝達手段が変わりました。それまでは、重大発表や会社の方針説明があると、その情報はまず事業場長に連絡(メール)がいき、事業場長が部下に知らせるというルートを辿っていました。現場にいる人は会社の情報が全て上司から来ていたんです。
それがイントラネットに変わって、全社員に直接情報が伝えられるようになりました。スピードとともに重要ポイントを分かりやすく噛み砕いて、上司以外のルートから伝わるようになったんです。理解度も深くなりますね。
Q人気のコンテンツを教えてください
一番人気は、文章ではなく写真がメインの「写真ニュース」です。「地元でマラソン大会に出ました」から、「芸能人を呼んで記者会見を開きました」まで、幅広い情報が掲載されます。枠が1つしかないので最近ではネタを投稿しても半月待ちということもあるのですが、ここに載ることをステータスと思ってくれています。例えば昨日まで社長が出ていたのに、今日は自分の顔が載っていたりするとモチベーションがぐーっと上がりますよね。
また、「写真ニュース」のコーナーは、社員が自分たちのやってきた地道な活動を伝えられる場でもあります。例えばマラソン大会に出たという話も、実は大会後に参加者1000名の前でサッポロビールをPRしましたとなれば、立派な社外広報効果を得ています。今までは、そういった善意でやっていたことを伝える場がなかった。部下が地元で表彰されたというのを上司が投稿したという例もあります。上司が投稿することで、「自分は良いことをしている」という認識を持つことができます。
「写真ニュース」のモットーは、「明日の朝刊より早く!」。朝刊やネットなど、自社の重要情報が外から最初に入ってくるのは最悪です。なんで自分の会社なのにそっちから大事なことが入ってくるのか。とにかくどこよりも早く、事実を伝えるようにしています。それを続けていると、何となくここには最新の情報、うちの全国の情報が載っているということが浸透して、更に皆が見てくれるようになりました。
Qお話を伺っていると凄いエネルギーとバイタリティを感じます。最後に、もし落ち込むことがあればその対処法を教えてください
ありますよ。そういう時は日記を書きます。私は5年日記タイプを使っています。むしゃくしゃしたり落ち込んだ時には、過去の自分はどうだったか読み返したり、心にあることを吐き出したりしています。すると、なんでイライラしていたのか、原因が見つかってくる。日記は人に見せないので、自分の悪いところも正直に書けます。自分だけを問い質している時間ですね。
大登 貴子氏
- 企業名
- サッポロホールディングス株式会社
- 部署・役職
- コーポレートコミュニケーション部 社内広報チーム チームリーダー
- 設立
- 1949-09-01
- 所在地
- 東京都渋谷区恵比寿四丁目20番1号
- プロフィール
- コーポレートコミュニケーション部 社内広報チーム チームリーダー
93年サッポロビール入社。96年広報室に異動し、社内広報、社外広報、ヱビスビール記念館の立ち上げなどを担当。現在はサッポロホールディングス社内広報チームのリーダーを務める。2児の母。(社)日本ソムリエ協会認定 ワインアドバイザー、サッポロビール(株)認定 ビールアドバイザーの資格を持つ。