広報は生きがいそのもの。正解がないからこそ自分のスタイルを創る
「人を軸にした事業開発会社」株式会社VOYAGE GROUP。価格比較サイト「ECナビ」やオンラインリサーチ事業をはじめとした、20にもおよぶ多彩な事業展開を支える広報について、マネージャーの江頭氏に話を伺いました。
20あるグループ会社の広報をひとりで担当
QVOYAGE GROUPには約20社のグループ会社がありますが、広報体制はどのようになっているのでしょうか?
グループ全体の広報を、親会社であるVOYAGE GROUPの広報グループで対応しています。専属の社員は私だけですが(笑)。業務内容は、社内外の情報収集や共有、プレスリリースの作成や発信、取材対応など、広報全般です。記者の方とのメディア懇親会や定期広報誌の発行など、独自の広報活動も行っています。
Q入社されてからずっと広報の業務をされているのですか?
そうですね。大学在学中から内定者アルバイトという形で週3回ほど出社していました。そのときはまだ前任の広報の者がおりまして、その下について、新聞のクリッピングや、各事業を紹介するパワーポイント資料を週に1回作成するなど会社理解や資料作成、「広報とは?」という勉強をさせてもらっていたような形です。
その後2007年に入社しましたが、直後に前任の広報が休職してしまい、それからは完全に私一人で広報を担当しています。
知識や経験がなくてもできる「スピード対応」「誠実な対応」
Q事前のアルバイト期間があったとはいえ、新卒で入社直後からひとりで広報をするのは大変ではありませんでしたか?
いろいろな本を読んで勉強をしたり、広報セミナーに参加したりしていたので、最初はできるような気がしていました。ですが、実際はなかなか上手くいきませんでした。
ただ、同時に経験がなくてもできることはあるなと思いました。それが、「スピード対応」と「誠実な対応」です。対応頂いたお礼やお詫びはすぐお伝えし、お問い合わせには、とにかく素早く対応することを欠かさないようにしました。
記者の方や社外の広報の方とのコミュニケーションを通じて、座学だけでは得ることができない様々なノウハウを学ぶことができました。
Q社内ではどのように活動されていたのでしょうか?
社外の方は比較的早く好意的に接して頂けるようになりましたが、社内に味方を作る方が難しかったですね。社内の人間からしてみれば、私は前任の後釜の新入社員にすぎず、当然ではありますが、信頼や信用はほとんどありませんでした。
まずはできることから始めようと、社内でも「スピード対応」と「誠実な対応」を心がけ、取材で協力してもらったらすぐにお礼を。また、その記事が掲載されればすぐに共有したりと地道に活動していきました。
その結果、社内でも徐々に信頼してもらえるようになり、今では、こちらから取りにいかなくても、新サービスの情報が入ってきたり、アプローチの方法などについて相談してもらえるようになり、格段に仕事がしやすくなりました。
社内バー「AJITO」の取材から変化した社内の広報意識
Q広報がうまくいき始めた転換期のようなものはありましたか?
2007年12月に弊社の社内バー「AJITO(アジト)」の取材をITmedia様に頂いたことでしょうか。掲載頂いた記事単体での反響も大きかったのですが、それに加えて、翌2008年は就活において福利厚生がトレンドになり、多くの関連取材を頂きました。記事を見たという方が入社試験を受けに来られるなど、採用面でも大きな影響がありましたね。
また、「AJITO」の様子を撮影するケースも多かったので、クルー(従業員)にお願いして数時間にわたって協力してもらいました。この「AJITO」の取材経験は、私自身が広報として多くの学びを得ただけでなく、社内全体の広報意識や理解が高まり、その後にも生きる資産となっていますね。
Q社内の広報への感度が上がるというのは、グループ全体にとってプラスですよね
本当にその通りだと思います。クルーの広報意識を高めて、ある意味ひとりひとりが「広報パーソン」であることが理想だと思います。ただ、「広報は大切です。もっと知ってください」といって勉強会をやるのも違う気がして、押しつけではなく個々人が必要だと思ってくれた結果として広報意識が高まっていくのが理想だと思います。
そういった意味でも、「AJITO」の件で広報の成果を直に体験してもらえたのは、目に見えにくい広報の力に気づいてもらう良い機会になりました。
温度感の伝わりやすいソーシャルメディア
Q江頭さんはFacebookもよく活用していますね。広報面では役に立たれていますか?
最近はFacebook様さまというぐらい活躍してくれています。会社名義のアカウントもありますが、個人名義のアカウントからリリースを出すこともありますし、メディア懇親会の出欠はFacebookのメッセージで確認しているぐらいです。記者の方はTwitterやFacebookのアカウントをお持ちの方が多いので、いろいろな方と繋がっています。
余談にはなりますが、Facebookのおかげでラーメン二郎が好きなことが記者さんに発覚して、インタビューでその話題が取り上げられたこともあるぐらいです(笑)。ただ、もともと、『読み専』のアカウントだったので、まさか仕事に使うようになるとは夢にも思いませんでしたし、現在もプライベート9割、仕事1割ぐらいの使用頻度です。
SNSですと、紋切り型の文章になりがちなメールでのやり取りに比べて、比較的自由に発言やコメントができるので、温度感が伝わりやすいと思います。そこが記者さんや他社の広報の方とも関係を築きやすい理由なのかもしれません。
広報は自分の生きがいそのもの
Q広報という仕事をひと言で表すとなんですか?
ひと言では……表せませんね。正解というものはなくて、会社ごと、広報担当ごとに自社や自分に合うスタイルを見つけていくのが大事だと思います。それを見いだしていく過程は楽しいもので、私にとって、プレスリリースやインタビューの回答としてなにかを言葉にするということは、自分の思いを形にするということにも繋がります。大げさかもしれませんが、広報は私の生きがいそのものなんです。
取材対応の際には、商品やサービスをより知って頂きたい、親しみを持って頂きたいという思いが強いので、マイナスイメージの部分もあえてお話するという「ぶっちゃけトーク」もしています。これは記者さんとの信頼関係があればこそですが、一緒になって応援して頂けるような広報ができれば理想ですね。
Q最後に、今後の目標などあればお聞かせください
新しいPR施策をいろいろと考えていきたいです。今は、四半期ごとに親しい記者さんにパワーポイントで手作りした広報冊子をお送りしたり新しい手法にも挑戦しています。
また、弊社の規模も年々大きくなっていまして、IPOへ向けて準備を進めています。今まで通りにいかなくなる部分も出てくると思いますが、IRを含めた広報の体制作りなど新しいことにチャレンジできるのはワクワクしますね。
江頭 令子氏
- 企業名
- 株式会社VOYAGE GROUP
- 部署・役職
- 社長室 広報マネージャー
- 設立
- 1998-10-08
- 所在地
- 東京都渋谷区神泉町8-16 渋谷ファーストプレイス6F・7F・8F
- プロフィール
- 地元ケーブルテレビ局でのリポーター経験をきっかけに広報の魅力に目覚める。2007年1月に株式会社VOYAGE GROUP(旧ECナビ)へ新卒で早期入社。以後広報活動に従事し、現在はグループ約20社の広報を統括。