太陽光発電に係るさまざまな諸問題への提案書「太陽光発電の普及・促進の影で」を作成・公開しました
NPO法人太陽光発電所ネットワークは、現在、導入量を増やしている太陽光発電について、その増加に伴い起きている課題やトラブルと、その解決策をまとめたレポート「太陽光発電の普及・促進の影で」を作成しました。本レポートの内容については、国や電力会社、認証機関等へ提言・要望するなどの活動を行っていきます。
NPO法人太陽光発電所ネットワーク(略称PV-Net、代表理事:藤井石根/都筑建、本部:東京都文京区)は、再生可能エネルギーの固定価格買取制度などの普及促進政策により、導入量を増やしている太陽光発電について、その増加に伴い起きている課題やトラブルと、その解決策をまとめたレポート「太陽光発電の普及・促進の影で」を作成しました。
本レポートは、PV-Net調査研究室の吉田幸二主任研究員宅で起きた電圧上昇抑制の事例報告をベースに、太陽光発電システム(住宅用・産業用)における電圧上昇抑制の問題点や、自然環境・住環境への影響に対する解決策を、技術面と制度面から分析・提案しています。今回まとめたレポート内容については、国や電力会社、認証機関等へ提言・要望するなどの活動を行っていきます。
【電圧上昇抑制とは】
電圧上昇抑制とは読んで字のごとく、「電圧」の「上昇」を「抑制」することです。電気は水の流れと同じように、高い方から低い方へと流れる性質があり、太陽光発電などで作られた電気が電力会社の系統に流れていくためには、系統よりも高い電圧でなければなりません。そこでパワーコンディショナー(パワコン)が、電力会社の系統の電圧を検知して、それよりも高い電圧で出力しています。ところが、パワコンの出力電圧は、電気事業法によって107Vを原則超えることはできません。そのため系統の電圧が107Vに限りなく近い場合は、パワコンの出力電圧が高くなるのを抑制する機能が働きます。その結果、発電した電気が流れていかない状態、つまり電気が売れない状態となります。これが電圧上昇抑制です。また、パワコンの出力電圧の上限値を整定値といい、パワコンメーカーの出荷時の設定は107Vが一般的です。
【電圧上昇抑制の原因】
系統電圧の調整は、最寄りの配電用変電所で高圧(6,600V)を需要量に応じて季節毎に数%の範囲で調整して送電され、日中の調整はしないのが一般的です。住宅へは電柱の上にある変圧器(巻数比6,600:105)という機器で低圧に変圧され、1つの変圧器で通常5~10軒程度の住宅に配電されます。電力会社は電力の安定供給を目的にすべての家庭が95~107Vに収まるようしています。ところが地域や時間帯、周辺環境によって、まれに上限の107Vまで電圧が上がってしまう場合があります。典型的なのが、近くに工場があり、同じ電力幹線を使用しているケースです。工場では大量の電力を使用するため、その一帯は高めの電圧で送電されています。高い電圧であっても、平日の日中は工場が電気を使うので、各家庭に流れる電気は107Vより低い電圧となります。 ところが工場の昼休みや夕方以降、土日などの休日は、工場が稼動していないため、各家庭に供給される電圧が高くなり、電圧抑制がかかりやすくなるのです。また、一定の地域に太陽光発電の設置件数が増えると、平日昼間などの本来なら電気を大量に使う時間帯に、各家庭がその電力を自家発電でまかなうために需要が減り(=電圧が高くなる)、加えて売電も行うことから、電圧上昇抑制が起きやすくなります。
さらには、電力会社が配線する変圧器から引込線取付点、設置者側が配線する引込線取付点(受電点)から配電盤、配電盤からパワコンまでの「配線材」にはそれぞれ抵抗分があり、電流を多く流そうとするほどパワコンの出力電圧は上昇します。(オームの法則)
本レポートによる、電圧上昇抑制解決のための主な提案は以下のとおりです
【住宅用太陽光発電システムの場合】
~電力会社からの供給電圧の制度改正~
電力会社の供給する電力品質を定めた法律に「電気事業法二十六条」があり、施工規則第四十四条のなかに、「標準電圧100ボルトの場合、101ボルトの上下6ボルトを超えない値が維持すべき値」とありますが、上限の107ボルトでは、実質、家庭用太陽光発電システムからの逆潮流による売電はできません。その場合には上限を101ボルトの上3ボルトなどに低く制限を行うか、高圧幹線の電圧が高くなっても低圧側を一定範囲に制御できる自動電圧調整型柱上変圧器を標準使用として、電圧上昇抑制により太陽光発電システムの発電能力が抑制されないような法や規則等の改定、標準化を提案します。
~系統連系保護装置認証基準の改定~
パワコンのなかには電圧上昇抑制の発生時にしかエラー表示されないモデルや、一定時間継続しないとエラーとして表示されないモデルもあり、電圧上昇抑制に気付かなければ不利益な状態となります。パワコンメーカーには、電圧上昇抑制の発生をコンソールや表示器に表示するとともに、パワコン内に記録され、ユーザーが発生状況の確認ができる仕様となるよう、JET(一般財団法人電気安全環境研究所)の定める系統連系保護装置認証基準の改定を提案します。
~電圧上昇抑制の早期発見と解決策~
電圧上昇抑制の発生は、「1.パワコンの表示器(コンソール)を観察、またはエラーの履歴を確認する」「2.その地域の毎月の日射量などをもとに計算した推定発電量と実際の発電量を比較する」などを行わないと確認ができません。そのため、すべての住宅用太陽光発電システムの設置者に対して、電圧上昇抑制と整定値に関する情報公開と注意喚起が必要です。
また、高圧幹線の電圧に影響される電圧上昇抑制の発生は、太陽光発電設置世帯の売電電力量に格差を生むことから、電力会社には速やかな改善を求めます。さらには、電力会社はパワコンメーカーなどと協力して電圧上昇抑制の実態把握を行い、太陽光発電システムから発電された電力が最大限有効に活用されるよう適正な整定値への変更や幹線側の改善に努める必要があるでしょう。ただし、安易に整定値を上げることは、パワコンから屋内の家電に対して高い電圧を供給することになり、別の障害を引き起こす可能性があるので留意が必要です。
【産業用太陽光発電システムの場合】
~電力会社側の幹線接続要件に~
大規模太陽光発電設備においては、電力会社の送電網に接続できる容量等に上限が設けられていますが、産業用太陽光発電施設から送電される電力の電圧変動が同じ幹線に接続されている住宅用太陽光発電システムに対して、電圧上昇抑制が起きる可能性があることから、これについても産業用太陽光発電建設の判断基準に盛り込むことを提案します。仮に産業用太陽光発電施設が接続される場合には、同じ幹線に接続されている周辺の住宅用太陽光発電システムの所有者に対して、電圧上昇抑制の注意喚起の周知を行う必要があります。こうした対応は、系統情報の詳細や個人情報であって、現在のところ電力会社にしか行うことができません。さらには、実際に同じ幹線に接続されている住宅用太陽光発電システムに電圧上昇抑制という形で影響が出た場合は、改善するための改修費用を事業者に対して請求できるようにすることが望まれます。
レポート「太陽光発電の普及・促進の影で」は、以下のURLからダウンロードできます
http://www.greenenergy.jp/press_release.html
本レポートは、PV-Net調査研究室の吉田幸二主任研究員宅で起きた電圧上昇抑制の事例報告をベースに、太陽光発電システム(住宅用・産業用)における電圧上昇抑制の問題点や、自然環境・住環境への影響に対する解決策を、技術面と制度面から分析・提案しています。今回まとめたレポート内容については、国や電力会社、認証機関等へ提言・要望するなどの活動を行っていきます。
【電圧上昇抑制とは】
電圧上昇抑制とは読んで字のごとく、「電圧」の「上昇」を「抑制」することです。電気は水の流れと同じように、高い方から低い方へと流れる性質があり、太陽光発電などで作られた電気が電力会社の系統に流れていくためには、系統よりも高い電圧でなければなりません。そこでパワーコンディショナー(パワコン)が、電力会社の系統の電圧を検知して、それよりも高い電圧で出力しています。ところが、パワコンの出力電圧は、電気事業法によって107Vを原則超えることはできません。そのため系統の電圧が107Vに限りなく近い場合は、パワコンの出力電圧が高くなるのを抑制する機能が働きます。その結果、発電した電気が流れていかない状態、つまり電気が売れない状態となります。これが電圧上昇抑制です。また、パワコンの出力電圧の上限値を整定値といい、パワコンメーカーの出荷時の設定は107Vが一般的です。
【電圧上昇抑制の原因】
系統電圧の調整は、最寄りの配電用変電所で高圧(6,600V)を需要量に応じて季節毎に数%の範囲で調整して送電され、日中の調整はしないのが一般的です。住宅へは電柱の上にある変圧器(巻数比6,600:105)という機器で低圧に変圧され、1つの変圧器で通常5~10軒程度の住宅に配電されます。電力会社は電力の安定供給を目的にすべての家庭が95~107Vに収まるようしています。ところが地域や時間帯、周辺環境によって、まれに上限の107Vまで電圧が上がってしまう場合があります。典型的なのが、近くに工場があり、同じ電力幹線を使用しているケースです。工場では大量の電力を使用するため、その一帯は高めの電圧で送電されています。高い電圧であっても、平日の日中は工場が電気を使うので、各家庭に流れる電気は107Vより低い電圧となります。 ところが工場の昼休みや夕方以降、土日などの休日は、工場が稼動していないため、各家庭に供給される電圧が高くなり、電圧抑制がかかりやすくなるのです。また、一定の地域に太陽光発電の設置件数が増えると、平日昼間などの本来なら電気を大量に使う時間帯に、各家庭がその電力を自家発電でまかなうために需要が減り(=電圧が高くなる)、加えて売電も行うことから、電圧上昇抑制が起きやすくなります。
さらには、電力会社が配線する変圧器から引込線取付点、設置者側が配線する引込線取付点(受電点)から配電盤、配電盤からパワコンまでの「配線材」にはそれぞれ抵抗分があり、電流を多く流そうとするほどパワコンの出力電圧は上昇します。(オームの法則)
本レポートによる、電圧上昇抑制解決のための主な提案は以下のとおりです
【住宅用太陽光発電システムの場合】
~電力会社からの供給電圧の制度改正~
電力会社の供給する電力品質を定めた法律に「電気事業法二十六条」があり、施工規則第四十四条のなかに、「標準電圧100ボルトの場合、101ボルトの上下6ボルトを超えない値が維持すべき値」とありますが、上限の107ボルトでは、実質、家庭用太陽光発電システムからの逆潮流による売電はできません。その場合には上限を101ボルトの上3ボルトなどに低く制限を行うか、高圧幹線の電圧が高くなっても低圧側を一定範囲に制御できる自動電圧調整型柱上変圧器を標準使用として、電圧上昇抑制により太陽光発電システムの発電能力が抑制されないような法や規則等の改定、標準化を提案します。
~系統連系保護装置認証基準の改定~
パワコンのなかには電圧上昇抑制の発生時にしかエラー表示されないモデルや、一定時間継続しないとエラーとして表示されないモデルもあり、電圧上昇抑制に気付かなければ不利益な状態となります。パワコンメーカーには、電圧上昇抑制の発生をコンソールや表示器に表示するとともに、パワコン内に記録され、ユーザーが発生状況の確認ができる仕様となるよう、JET(一般財団法人電気安全環境研究所)の定める系統連系保護装置認証基準の改定を提案します。
~電圧上昇抑制の早期発見と解決策~
電圧上昇抑制の発生は、「1.パワコンの表示器(コンソール)を観察、またはエラーの履歴を確認する」「2.その地域の毎月の日射量などをもとに計算した推定発電量と実際の発電量を比較する」などを行わないと確認ができません。そのため、すべての住宅用太陽光発電システムの設置者に対して、電圧上昇抑制と整定値に関する情報公開と注意喚起が必要です。
また、高圧幹線の電圧に影響される電圧上昇抑制の発生は、太陽光発電設置世帯の売電電力量に格差を生むことから、電力会社には速やかな改善を求めます。さらには、電力会社はパワコンメーカーなどと協力して電圧上昇抑制の実態把握を行い、太陽光発電システムから発電された電力が最大限有効に活用されるよう適正な整定値への変更や幹線側の改善に努める必要があるでしょう。ただし、安易に整定値を上げることは、パワコンから屋内の家電に対して高い電圧を供給することになり、別の障害を引き起こす可能性があるので留意が必要です。
【産業用太陽光発電システムの場合】
~電力会社側の幹線接続要件に~
大規模太陽光発電設備においては、電力会社の送電網に接続できる容量等に上限が設けられていますが、産業用太陽光発電施設から送電される電力の電圧変動が同じ幹線に接続されている住宅用太陽光発電システムに対して、電圧上昇抑制が起きる可能性があることから、これについても産業用太陽光発電建設の判断基準に盛り込むことを提案します。仮に産業用太陽光発電施設が接続される場合には、同じ幹線に接続されている周辺の住宅用太陽光発電システムの所有者に対して、電圧上昇抑制の注意喚起の周知を行う必要があります。こうした対応は、系統情報の詳細や個人情報であって、現在のところ電力会社にしか行うことができません。さらには、実際に同じ幹線に接続されている住宅用太陽光発電システムに電圧上昇抑制という形で影響が出た場合は、改善するための改修費用を事業者に対して請求できるようにすることが望まれます。
レポート「太陽光発電の普及・促進の影で」は、以下のURLからダウンロードできます
http://www.greenenergy.jp/press_release.html
企業情報
企業名 | 特定非営利活動法人太陽光発電所ネットワーク |
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代表者名 | 都筑 建 |
業種 | その他サービス |
コラム
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