連合調べ 「外国人労働者の受入れ拡大について、政府の説明が十分ではない」69%
政府は、「経済財政運営と改革の基本方針2018」において、専ら人手不足対応の観点から、即戦力となる外国人材を幅広く受け入れるための新たな在留資格を設けることを明らかにしました。現在、日本には約128万人の外国人労働者が働いていますが、新たな在留資格の創設により、今後一層の外国人労働者の増加が見込まれます。 そこで、日本労働組合総連合会(略称:連合、所在地:東京都千代田区、会長:神津 里季生)は、外国人労働者の受入れおよび、外国人との共生に対する意識について把握するため、「外国人労働者の受入れに関する意識調査」を2018年9月25日~9月26日の2日間でインターネットリサーチにより実施し、全国の20歳~69歳の働く男女1,000名の有効サンプルを集計しました。(調査協力機関:ネットエイジア株式会社)
[調査結果]
≪外国人労働者の受入れについて≫
◆自分の職場に外国人労働者が「いる」28% 情報通信業では48%が「いる」と回答
全国の20歳~69歳の働く男女1,000名(全回答者)に、職場における外国人労働者の受入れ状況や外国人労働者の受入れに対する意識を聞きました。
まず、全回答者(1,000名)に、自分の職場に外国人労働者がいるか、いないかを聞いたところ、「いる」が27.7%、「いない」が72.3%となりました。
居住地別にみると、「いる」の割合が最も高かったのは関東(33.0%)、最も低かったのは北海道・東北(12.1%)でした。
また、業種別にみると、情報通信業(47.9%)や教育、学習支援業(46.6%)、製造業(46.3%)では、「いる」の割合が他の業種より高くなりました。一方、最も低かったのは医療、福祉で14.2%でした。
◆外国人労働者が増えること 「よいことだと思う」55% 「よくないことだと思う」22%
20代では肯定派が66%、40代では肯定派は47%
次に、日本に外国人労働者が増えることに対する意識を聞きました。
全回答者(1,000名)に、日本全体として外国人労働者が増えることについて、どのように思うか聞いたところ、『よいことだと思う(計)』(「非常によいことだと思う」「まあよいことだと思う」の合計、以下同様)は54.9%、『よくないことだと思う(計)』(「非常によくないことだと思う」「あまりよくないことだと思う」の合計、以下同様)は21.7%となり、肯定的な人が多数派となりました。また、「わからない」は23.4%でした。
世代別にみると、『よいことだと思う(計)』の割合が最も高かったのは20代で65.5%でした。20代は他の世代に比べて外国人労働者が増えることをよいことだと考える人が多いようです。一方、『よいことだと思う(計)』の割合が最も低かったのは40代で46.5%と半数を下回りました。
◆外国人労働者が増えることをよいことだと思う理由 1位「人手不足を補うため」
情報通信業では「新しいアイディアが生まれる」「働き方にプラスの影響がある」が他業種より高い傾向
日本全体として外国人労働者が増えることを「よいこと」だと考えている人(549名)に、よいことだと考える理由を聞いたところ、「人手不足を補うためには必要であるから」が最も多く63.9%、次いで、「外国人労働者が増えて多様な考えに触れると、新しいアイディアなどが生まれるから」が40.4%、「外国人労働者、日本人労働者と区別すること自体がおかしいから」が39.7%となりました。近年深刻化している人手不足を補うために外国人労働者が必要だと考えている人が多い結果となりました。
業種別にみると、「外国人労働者が増えて多様な考えに触れると、新しいアイディアなどが生まれるから」は、情報通信業(54.8%)と教育、学習支援業(64.0%)で他の業種より高くなり、情報通信業では「日本人の雇用・労働条件、働き方や意識にプラスの影響があるから」(45.2%)も他の業種より高くなりました。また、医療、福祉では、「人手不足を補うためには必要であるから」が76.5%で他の業種に比べて高い結果となりました。
◆外国人労働者が増えることをよくないことだと思う理由
1位「まずは日本人の雇用を優先すべき」2位「日本人の雇用・労働条件、働き方にマイナスの影響がある」
他方、日本全体として外国人労働者が増えることについて「よくないこと」だと考えている人(217名)に、よくないことだと考える理由を聞いたところ、「外国人労働者の雇用より、まずは日本人の雇用を優先すべきであるから」が最も多く61.8%、次いで、「日本人の雇用・労働条件、働き方にマイナスの影響があるから」が45.6%、「日本人が就きたがらない仕事に、外国人労働者を活用すればよいという考えはよくないから」が30.0%、「日本全体として、多言語化などの環境整備が進んでいないから」が18.4%、「国民の中に外国人労働者を受け入れるという意識がないから」が16.6%となりました。外国人労働者の雇用より日本人の雇用を優先するべきとの考えから、外国人労働者が増えることをよくないと思う人が多いようです。また、日本人の労働条件や働き方にマイナスの影響が出ることを懸念し、よくないと考える人は少なくないようです。
◆自分の職場に外国人労働者が増えること 「よいことだと思う」51% 「よくないことだと思う」25%
肯定派が最も多いのは20代で64%、肯定派が最も少ないのは40代で43%
続いて、全回答者(1,000名)に、自分の職場に外国人労働者が増えることについてどのように思うかを聞いたところ、『よいことだと思う(計)』は51.3%、『よくないことだと思う(計)』は25.4%となりました。自分の職場に、外国人労働者が増えるのをよいことだと思う人が半数を超えました。また、「わからない」は23.3%となっています。
世代別にみると、肯定派の割合が最も高かったのは20代(『よいことだと思う(計)』63.5%)、最も低かったのは40代(『よいことだと思う(計)』42.5%)でした。
◆自分の職場に外国人労働者が増えることをよいことだと思う理由 1位「人手不足を補うため」
◆自分の職場に外国人労働者が増えることをよくないことだと思う理由 1位「職場の環境整備が進んでいない」
自分の職場に外国人労働者が増えることについて「よいこと」だと考えている人(513名)に、よいことだと考える理由を聞いたところ、「人手不足を補うためには必要であるから」が最も多く52.2%、次いで、「外国人労働者が増えて多様な考えに触れると、新しいアイディアなどが生まれるから」が46.2%、「外国人労働者、日本人労働者と区別すること自体がおかしいから」が40.9%となりました。人手不足を補えることや多様な考えに触れることで新しいアイディアが生まれることを期待し、職場に外国人労働者が増えることを肯定的に捉える人が多いようです。
他方、自分の職場に外国人労働者が増えることについて「よくないこと」だと考えている人(254名)に、よくないことだと考える理由を聞いたところ、「自分の職場で、多言語化などの環境整備が進んでいないから」が最も多く33.5%、次いで、「外国人労働者の雇用より、まずは自分の雇用を優先すべきであるから」が31.9%、「自分の雇用・労働条件、働き方にマイナスの影響があるから」が30.3%、「自分の職場の中に外国人労働者を受け入れるという意識がないから」が24.4%、「自分が就きたくない仕事に、外国人労働者を活用すればよいという考えはよくないから」が19.7%となりました。外国人労働者を受け入れるための職場環境の整備ができていないことを理由に挙げる人が最も多い結果となりました。
≪外国人労働者受入れに対する政策について≫
◆「外国人労働者の受入れ拡大について、政府の説明が十分ではない」69%
◆「外国人労働者の受入れ拡大が日本人の雇用や労働条件に影響する」49%
現在、政府は人手不足への対応のために、外国人労働者の受入れを拡大しようとしています。
そこで、全回答者(1,000名)に、政府は、外国人労働者の受入れ拡大について、国民に対して十分に説明していると思うか聞いたところ、『そう思う(計)』(「非常にそう思う」「まあそう思う」の合計、以下同様)は17.0%、『そう思わない(計)』(「全くそう思わない」「あまりそう思わない」の合計、以下同様)は68.8%となりました。政府の説明が十分ではないと考えている人が多数派であることがわかりました。
次に、外国人労働者の受入れ拡大が行われた場合、日本人の雇用や労働条件に影響があると思うか聞いたところ、『そう思う(計)』は49.1%、『そう思わない(計)』は35.3%となりました。
業種別にみると、『そう思う(計)』の割合が最も高かったのは情報通信業(64.6%)、最も低かったのは医療、福祉(40.6%)となりました。
◆外国人労働者の受入れ拡大が雇用や労働条件に与える影響
20代では「よい影響」が多数派、40代以上では「よくない影響」が多数派という結果に
◆「外国人労働者の受入れを拡大する場合、受け入れる人数の制限が必要」55%
外国人労働者の受入れ拡大が行われた場合、日本人の雇用や労働条件に影響があると思っている人(491名)に、どのような影響があると思うか聞いたところ、『よい影響(計)』(「非常によい影響」「まあよい影響」の合計)は41.8%、『よくない影響(計)』(「非常によくない影響」「あまりよくない影響」の合計)は47.9%となり、よくない影響が及ぶと考える人のほうが多くなりました。
世代別にみると、20代では『よい影響(計)』が55.8%で半数以上となりました。他方、40代以上では、『よくない影響(計)』が40代50.0%、50代53.1%、60代53.7%といずれも半数以上となりました。世代が上がるにつれ、よくない影響があると考える人が増えるようです。
次に、全回答者(1,000名)に、外国人労働者の受入れを拡大する場合、受け入れる対象(技能レベルや職種、業種など)に制限が必要であると思うか聞いたところ、『そう思う(計)』は55.7%、『そう思わない(計)』は26.8%となり、受け入れる対象の制限が必要だと思う人が多数派となりました。
また、外国人労働者の受入れを拡大する場合、受け入れる人数の制限が必要であると思うか聞いたところ、『そう思う(計)』は54.9%、『そう思わない(計)』は28.0%となりました。人数についても、制限が必要と思う人が多くなりました。
◆外国人労働者受入れの環境整備で重要なこと
「受け入れる企業の体制整備」46%、「日本人の意識の醸成」45%
◆外国人労働者に必要な日本語能力 「日常会話レベル以上」68%
続いて、全回答者(1,000名)に、外国人労働者の受入れの環境整備にあたって、何が重要だと思うかを聞いたところ、「外国人労働者を受け入れる企業の体制整備」が最も多く46.2%、次いで、「外国人労働者も同じ職場の仲間として受け入れる日本人の意識の醸成」が45.3%、「外国人労働者に対する日本語教育」が39.8%、「外国人労働者の権利を保護するための法律や制度の整備」が38.2%、「外国人労働者に対する母国語による相談・支援体制」が27.3%となりました。企業の受入れ体制の整備が重要視されているようです。
また、外国人労働者の受入れ拡大を行う場合、外国人労働者の日本語の能力はどの程度必要だと思うかを聞いたところ、「仕事で使うレベルの日本語が理解できる」が32.4%、「日常会話レベルの日本語が理解できる」が35.2%となり、『日常会話レベル以上』の日本語が理解できることが必要だと考える人は67.6%になりました。他方、「簡単な日常会話レベルの日本語(片言)が理解できる」は16.3%、「受入れ時点で日本語ができなくとも、入国後に訓練すればよい」は4.5%、「日本語は全くできなくてよい」は1.0%でした。
≪地域における外国人との共生≫
◆自分が暮らしている地域に外国人住民が「生活している」52%
◆地域に外国人住民が生活している人の68%は「地域に暮らしている外国人住民と関わる機会がない」
全回答者(1,000名)に、自分が暮らしている地域に外国人住民が増えることをどのように考えるか聞きました。
まず、自分が暮らしている地域に、外国人住民が生活しているかを聞いたところ、「生活している」は51.8%、「生活していない」は20.9%、「わからない」は27.3%でした。
居住地別にみると、「生活している」の割合が最も高かったのは北陸・甲信越(59.6%)、最も低かったのは近畿(39.2%)となりました。
自分が暮らしている地域に外国人住民が生活している人(518名)に、地域に暮らしている外国人住民と関わる機会があるか聞いたところ、『ある(計)』(「よくある」「時々ある」の合計)は32.4%、『ない(計)』(「全くない」「あまりない」の合計)は67.6%となりました。
世代別にみると、『ある(計)』の割合が最も高かったのは20代(42.6%)、最も低かったのは40代(26.1%)で、その差は16.5ポイントとなりました。世代によって、外国人住民との関わり方には差がみられました。
◆「外国人住民が母国から家族を呼び寄せて定住すること」45%が肯定的
◆「地域に外国人住民が増えるのはよいことだと思う」37%
次に、全回答者(1,000名)に、外国人住民が、母国から家族を呼び寄せて日本に定住することに対して、どのように思うか聞いたところ、『よいことだと思う(計)』45.2%、『よくないことだと思う(計)』は22.1%と、よいことだと思う人が多数派となりました。
世代別にみると、『よいことだと思う(計)』の割合は20代(55.0%)が最も高く、40代(36.0%)が最も低くなりました。
また、全回答者(1,000名)に、地域に暮らす外国人住民が増えることについて、どのように思うか聞いたところ、『よいことだと思う(計)』は37.3%、『よくないことだと思う(計)』は27.5%となりました。
居住地別にみると、『よいことだと思う(計)』が最も高かったのは九州・沖縄で52.4%と半数を超えました。一方、最も低かったのは東海で25.7%と4人に1人の割合にとどまりました。
◆地域に外国人住民が増えることをよいことだと思う理由
1位「地域の多様性につながる」2位「地域の活性化につながる」
◆地域に外国人住民が増えることをよくないことだと思う理由
1位「文化・習慣の違いがある」2位「地域の環境(治安など)にマイナスの影響がある」
地域に暮らす外国人住民が増えることについて、「よいこと」だと考えている人(373名)に、よいことだと考える理由を聞いたところ、「地域の多様性につながるから」が最も多く59.0%、次いで、「人口が増え、地域の活性化につながるから」が53.4%、「外国の言葉や文化、習慣等に触れる機会が増えるから」が48.3%となりました。外国人住民の多様な力を活かしたまちづくりや、地域が活性化されることを期待し、外国人住民が増えることを肯定的に捉える人が多いようです。
他方、地域に暮らす外国人住民が増えることについて、「よくないこと」だと考えている人(275名)に、なぜ地域で暮らす外国人住民が増えることはよくないことだと考えるのか聞いたところ、「文化・習慣の違いがあるから」が最も多く57.8%、次いで、「地域の環境(治安など)にマイナスの影響があると思うから」が54.9%、「外国人住民が増えることに漠然とした不安を感じるから」が37.1%、「外国人住民を受け入れるより、まず日本人が住みやすい環境を整備する必要があるから」が29.1%、「言葉の壁があるから」が25.1%となりました。
≪外国人の受入れ環境整備の費用負担≫
◆外国人労働者受入れの費用負担 「受け入れたい業界で負担」は肯定派が65%
一方、「税金で負担」は否定派が多数という結果に
最後に、外国人労働者の受入れ環境の整備(公共サービスの多言語化、日本語教育など)に関する費用負担について聞きました。
全回答者(1,000名)に、外国人労働者を受け入れる際の環境整備の費用負担について、負担先を複数提示し、それぞれについて、どのように思うか聞いたところ、『よいことだと思う(計)』(「非常によいことだと思う」と「まあよいことだと思う」の合計)は、【外国人労働者を受け入れたい業界で負担すること】で最も高く64.7%でした。また、【外国人労働者を雇い入れる事業主が負担すること】(61.1%)や【外国人労働者自身が負担すること】(60.1%)でも肯定的な意見の人が多数派となりました。
一方、【国民全体(税金)で負担すること】では、『よいことだと思う(計)』が34.9%、『よくないことだと思う(計)』(「あまりよくないことだと思う」と「非常によくないことだと思う」の合計)が42.8%となりました。税金で負担することについては、否定的な意見を持つ人が多い結果となりました。
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