【宇宙ビジネスアイデアコンテスト S-Booster 2018】開催レポートVol. 2~2017受賞者、そして2018へ~
前回に続き、11月19日(月)に開催された「S-Booster 2018」最終選抜会のレポートをお届けします。 今回はスペシャルトークショーと受賞結果の紹介です。
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【宇宙ビジネスアイデアコンテスト S-Booster 2018】開催レポートVol. 1~最高賞金1000万円をかけた戦い~
https://www.value-press.com/pressrelease/211808
◆◆スペシャルトークショー
「宇宙ビジネスアイデアを具体化していくためには?」
スペシャルトークショーには、昨年開催された「S-Booster 2017」の受賞者が登壇し、事業の進捗報告を含めた宇宙ビジネスに関するディスカッションが行われました。
出演者
「S-Booster 2017」受賞者:
ANAホールディングス株式会社・松本 紋子氏(大賞、スカパーJSAT賞受賞)
NHO渋川医療センター/STONY・石北 直之氏(ANAホールディングス賞受賞)
日本大学理工学部・青木 義男氏(大林組賞受賞)
株式会社スペースエッジラボ・福代 孝良氏(審査員特別賞受賞)
アクセラレーターゲスト:
一般社団法人TXアントレプレナーパートナーズ 副代表理事・尾﨑 典明氏
モデレータ:
グローバル・ブレイン株式会社 宇宙エバンジェリスト・青木 英剛氏
ANAホールディングスの松本氏は、衛星搭載ドップラーライダー(*1)で高空の風を観測し、航空機の燃料節約につなげるプランについて説明。JAXAの宇宙イノベーションパートナーシップの枠組みで具体的な検討を開始したほか、NICT(情報通信研究機構)、ENRI(海上・港湾・航空技術研究所 電子航法研究所)、気象研究所、慶應義塾大学などとも連携して衛星地球観測ミッションに応募したとの説明がありました。
医師でもある石北氏は、麻酔ガスを使った「嗅ぎ注射器」の宇宙実証に向けた、無重力実験などの様子を紹介。薬事申請に通っていない医療機器は宇宙へ持ち込めないという大きな“制限”を、宇宙に持ち込まれた3Dプリンタにデータ伝送して宇宙実証を行う手法で克服し、2023年度の実用化をめざすと説明しました。
日本大学の青木(義)氏は、超小型衛星をテザーで結合・宇宙で展開し、より高精度の観測を行うコンセプトを紹介。テザー展開の技術実証のため、今年9月に「こうのとり7号機」で宇宙に運ばれ、10月に国際宇宙ステーションから周回軌道に放出された超小型衛星「てんりゅう(STARS-Me)」について説明しました。
静岡大学 STARSプロジェクト http://stars.eng.shizuoka.ac.jp/starsme.html
スペースエッジラボの福代氏は、「TRICOM-1R(たすき)」によるLoRa通信(*2)実験の成功や、ルワンダなどによるアフリカ22か国の衛星計画「スマートアフリカ」の計画を紹介、衛星開発や打ち上げスケジュールについて紹介しました。
モデレータの青木(英)氏は「直面した課題」や「S-Booster受賞の意義やメリット」について登壇者に問いかけました。
福代氏は手弁当で立ち上げたベンチャー企業の運営の苦労やアフリカをカウンターパートとした交渉の難しさを、青木(義)氏はデブリアセスメントに抵触する長大なテザーの宇宙実証をデブリ対策という目的でどう理解してもらい実施するかについて、石北氏は宇宙や航空分野での治験実施に向けた苦労を語りました。
また、松本氏は複数の省庁や研究機関にまたがる調整が比較的スムーズに進んでいることは、昨年のS-Boosterで大賞を受けられた恩恵が大きいと語り、青木(英)氏から、S-Boosterの受賞者、ファイナリストは政府主催のS-Boosterという後ろ盾を大いに活用するべきとのアドバイスもありました。
アクセラレーターゲストの尾﨑氏からは、今回のファイナリストや次回の応募者に向け「巻き込み力や実行力が大事。使えるものは何でも使っていかないとベンチャーというのは立ち上がらない。ネットワークなどもフルに活用していく、ある種の図々しさが必要になってくる。宇宙分野は初期投資費用がかかるが、大分環境が整ってきているところなので、何度突き返されても諦めずにトライしていく耐性をつけていってもらいたいと思う。」というコメントがありました。
また、会場との質疑応答では、今年のファイナリストや投資家から登壇者への率直な質問が寄せられ、登壇者へのエールも送られました。
青木(英)氏はそれらを踏まえたうえで「宇宙分野のビジネスには夢があるので、その夢を足がかりに応援団を集められやすい。それが、宇宙をターゲットにしたビジネスアイデアならではの特権です。ただ、アイデアだけならば多くの人が思いつきます。思いついた1万人のうち、誰かにそれを話し、起業し、資金調達して前に進み、大成功するのはせいぜい3人程度でしょう。大事なことは、周囲に反対されても信念を持ってやり続けること。そうなれるかどうかは、あなた次第です。」と力強く語り、トークショーは終了しました。
◆◆受賞結果
受賞結果は以下の通りとなりました。
最優秀賞 「ロケット海上打ち上げ」 森琢磨・山田龍太朗
未来コンセプト賞 「地球内部のCTスキャン」 大出 大輔
審査員特別賞 「宇宙から見つけるポテンシャル名産地」 天地人
ANAホールディングス賞 「宇宙から見つけるポテンシャル名産地」 天地人
大林組賞 「ロケット海上打ち上げ」 森琢磨・山田龍太朗
スカパーJSAT賞 「地球上から月面基地開発可能なテレプレゼンスロボットの実現」 GITAI
JAL賞 「宇宙から見つけるポテンシャル名産地」 天地人
ポーラ・オルビスホールディングス賞 「成層圏における微生物採取請負人」 チーム スペースドリフター
「航空貨物需要増への期待」などからANAホールディングス、JAL、審査委員特別賞の3賞を受けたチーム「天地人」や、微生物という接点でポーラ・オルビスホールディングス賞を受けた「チーム スペースドリフター」、通信における高い技術力を期待されてスカパーJSAT賞を受けたチーム「GITAI」、壮大なコンセプトが会場を魅了し未来コンセプト賞を受けた大出大輔氏の「地球内部のCTスキャン」など、いずれもアイデアやコンセプトはもとよりプレゼンテーションの質も高く、発表のたび会場から大きな拍手が沸き起こりました。
そして最優秀賞に選ばれたのは、宇宙エレベーターの基地への期待も含め大林組賞を受賞した、チーム「森琢磨・山田龍太朗」の「ロケット海上打ち上げ」のビジネスプランでした。
夏野特別審査員長は「いますぐ実行可能で、3年以内に事業化が可能というスピード感、そしてそのインパクトを高く評価したい」とコメント。受賞者コメントで森氏は「たくさんの方々に応援いただく中で、今すぐにでも実現可能であることが見えてきました。日本を宇宙大国にします!」と力強く宣言しました。
(*1) ドップラーライダーとは、特殊なレーザー光を大気中に放射して、大気中の塵や微粒子からの散乱光を受信し、風向風速などを計測することができるシステムのこと。
(*2) LoRaとは、LPWA(Low Power, Wide Area)という、少ない消費電力で広いエリアをカバーする無線通信方式の一つで、IoT向けの通信ネットワークに用いられている。
>次回予告
次回は、S-Booster 2018のまとめと次回開催に向けたレポートを12月14日(金)に配信予定です。
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企業情報
企業名 | 宇宙を活用したビジネスアイデアコンテスト S-Booster |
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代表者名 | 内閣府宇宙開発戦略推進事務局 |
業種 | その他サービス |
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