【にじいろの食育スクール開催レポート第5弾】栄養学博士&保育士による一般向け第5回webセミナーを開催 「「葉酸」は何で必要なの?」
この度、慶應義塾大学SFC研究所 健康情報コンソーシアム (所在地:神奈川県藤沢市 代表:中澤 仁)は、2021年8月18日(水)・21日(土)に20代以上の一般の方々を対象とした、webセミナー(zoom)の第5弾を実施しました。各回とも大人と子ども(赤ちゃん)合わせて、約20名の方々にご参加いただきました。参加後アンケートは、【初級】満足100% 、【中級】満足71.4% 、やや満足14.3%という結果となりました。中級は難易度がやや高めだったにも関わらず参加者の方にご満足いただけたようです。 にじいろの食育スクールは、今後も継続して、科学的根拠・データを示しながら、正しい情報をわかりやすく・楽しく解説するwebセミナーを開催してまいります。
●レッスン内容
今回は「葉酸」にフォーカスしたお話でした。葉酸というと妊娠したら取る栄養素、というイメージを持たれる方が多いようですが実は早くから摂っておくべき栄養素であること、葉酸には食事型葉酸とサプリメントから摂るサプリメント葉酸という2つのタイプがあること、またどんな効果があるのか、どのような調理法(油いため、ゆで、生など)で摂るとよいのか、などのお話がありました。また【初級】ではレッスンの最後に、保育士さんから、食育に役立つ「絵本紹介」や絵本の読み聞かせをしていただきました。パラリンピックの開催が近いということもあり、色々なお野菜がマラソン競争をする内容で、楽しく、だじゃれの文章が面白いお話でした。読み聞かせのポイントなどもいろいろお話しいただきました。
●講師
久保 佳範
慶應義塾大学SFC研究所 上席所員、慶應義塾大学SFC研究所 健康情報コンソーシアムメンバー
博士(栄養学)
順天堂大学協力研究員、国際DOHaD学会組織日本代表、日本DOHaD学会分科会ASTRO共同代表日本脂質栄養学会理事、順天堂大学協力研究員
●概要
レッスン5 「葉酸」は何で必要なの?~妊娠前から摂ったほうがいい、ほとんどの人が知らない葉酸の大事な働き~
初級編
日時:8月18日(水)20:00〜21:15(食育・初心向け)
中級編
日時:8月21日(土)20:00〜21:15(食育・中級者向け)
費用:無料
会場:Zoom配信
(1)葉酸とは?
葉酸は水溶性(水に溶ける性質をもつ)ビタミンであり、大きく分けて天然の食品に含まれる葉酸と、人工的に合成された葉酸の2種類に分けることができます。この2つの葉酸は体内での利用効率が大きく異なる(図1)為、今回のセミナーでは天然の食品に含まれる葉酸を「食事性葉酸」、サプリメントやシリアル・乳製品などに入っている人工的に合成された葉酸を「サプリメント葉酸」と呼ぶことにします。
(図1)
葉酸の主な働きとしては、体の設計図であるDNAなどを合成する際に必要となります。葉酸の摂取量が不足すると、赤血球がうまく作れなくなる貧血(巨赤芽球性貧血)になってしまいます。
(2)妊娠と葉酸
サプリメント葉酸は、生まれてくる子供の神経管閉鎖障害(脳や脊髄がうまく作れない先天性の障害)(図2)のリスクを低減できる唯一の栄養素です。子供の神経管閉鎖障害を防ぐには、妊娠のごく初期(排卵日からわずか28日後!)までに体の中に十分な量の葉酸を蓄えておく必要があります。しかし、体の中の葉酸の状態はすぐには上昇しないので、妊娠する可能性があるとき(妊娠を計画するより前)からサプリメント葉酸を摂取することが推奨されています。加えて、妊娠すると胎児の成長や、子宮・胎盤組織の発達(細胞増殖)のために妊娠していないときと比べて多くの葉酸が必要になるのです。
(図2)
(3)葉酸の摂取量
妊娠適齢期の女性は、妊娠前、妊娠中、産後に限らず、どのステージでも食事性葉酸を1日に一律240 µg摂取するよう推奨されています(図3)。これは巨赤芽球性貧血予防のための必要量です。
(図3)
さらに妊娠を計画している女性・妊娠の可能性のある女性は、妊娠前から1日に400 µgのサプリメント葉酸を追加して摂取することが推奨されており、これを妊娠初期まで継続していく必要があります。妊娠中期・後期では240 µgの食事性葉酸をプラスして、合計480 µgの食事性葉酸を1日に摂取することが推奨されています。出産後授乳をする場合は、母乳中に流出する量の100 µgをプラスして1日に合計340 µgの葉酸を摂取することが推奨されています。ただし、サプリメント葉酸は摂り過ぎると健康障害を生じる為、1日あたりの葉酸の摂取量を18-29歳の女性は900 µg未満、30-49歳の女性は1000 µg未満にする必要があります。冒頭にお伝えしたように、食事性葉酸とサプリメント葉酸は体の中での利用効率が異なるため、それぞれに 推奨量が設定されていることにご注意ください。
4.葉酸の摂取方法
食事性葉酸は、葉ものや成長が早い(細胞分裂が盛んな)食品に多く含まれています。例えばほうれん草、小松菜、アスパラガス、ブロッコリー、えだまめなどです。葉酸は葉ものの野菜では、ゆでる調理によってその多くを失われるという特徴があります。(図4)。その場合は、生で食べたり炒めたりすることで葉酸の流出を最低限にとどめることができます。
(図4)
前述のとおり、妊娠中期・後期では1日に食事性葉酸を480 µg摂取することが推奨されていますが、この量を食事から摂るのはなかなか難しいことです。まずは無理の無い範囲で、意識的に食事から葉酸を摂るように心掛け、葉酸強化食品やサプリメント葉酸を活用することも検討してみてください。逆に葉酸サプリメントだけとっても健康になれる訳ではなく、主食・主菜・副菜を意識して、必要な栄養素を食事からしっかりとることが大前提となります。
●レッスン5でご紹介した絵本
・おやおや、おやさい|石津ちひろ 文 山村浩二 絵(福音館)
●参加者アンケートの結果
セミナーの総合満足度について、【初級】満足100% 、【中級】満足71.4% 、やや満足14.3%という結果となりました。中級は難易度がやや高めだったにも関わらず参加者の方にご満足いただけたようです。
「葉酸」という栄養素については「聞いたことがあるが働きまではよくわかっていなかった」という方が100%でした。葉酸の効果やいつから摂ればよい栄養素なのか、ということまできちんと把握していらっしゃる方は少なかったようでした。その他に
・「今までぼんやりと認識していた葉酸について、少し理解が高まった」
・ 「食品と人工の区別(名称)がわかり、食品の数値や効果的なとりかたがわかりました。難しい資料も丁寧にわかりやすく説明していただきありがとうございます。」
などの感想をいただきました。
今後も、「にじいろの食育セミナー」に参加して、知ってよかったと言っていただけるような日々の健康に役立つ栄養のお話を分かりやすく説明していきますので、どうぞお気軽に参加していただきますようお願いします。
●総括
日本では国民の健康のために、生涯を通じた心身の健康を支える食育が推進されています。しかし、食育基本法が施行され、本格的に食育が始まったのは2005年からであり、20代の女性は食育を十分に受けられていません。逆に言えば今からでも栄養学の基礎や科学的根拠に基づいた情報を知っておけば、食事を楽しみつつ病気になる確率も下がるので、今後の人生がHAPPYになるはずです。今後も科学的根拠に基づいた栄養学を、にじいろの食育スクールで一緒に学んでいきましょう。
●今後のウェブセミナー :お申し込みはこちらから↓
https://forms.gle/cQdcHHoH1LYUCFFfA
●「にじいろの食育スクール」に関するプレスリリース
https://www.value-press.com/pressrelease/274592
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■主催:慶應義塾大学SFC研究所 健康情報コンソーシアム
TeamROSE・産後ママSOSプロジェクト
■共催:産科婦人科舘出張 佐藤病院
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企業情報
企業名 | 慶應義塾大学 SFC 健康情報コンソーシアム |
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代表者名 | 中澤仁 |
業種 | 教育 |
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