
令和もやっぱり「恋愛結婚」が良いですか?~恋愛感情と結婚に関する実態調査(第1報)ロマンチックラブイデオロギーと結婚のリアル~
「恋愛結婚して家庭を作り、配偶者を愛し続けて裏切らず、人生を全うすべき」という考え方をどう思いますか? 平成時代までは多くの人たちに共有する価値観でしたが、令和の今も通用するのでしょうか。近年は未婚率も離婚率も上昇し、「結婚は割に合わない」「自由を奪われ窮屈」と考える人が増えているように感じられます。にもかかわらず、不倫バッシングの風潮は高まるばかりで、「結婚したら裏切ってはならない」という社会的圧力は強固です。この「恋愛結婚して一生の愛を貫くべき」という価値観は、ロマンチックラブイデオロギーと呼ばれ、実は一般的になってから200年ほどしか経っていません。日本で浸透したのは1960年代ごろです。結婚に対する意識が大きく変化するなか、恋愛を切り口に、令和の「結婚のリアル」を紐解きます。
ロマンチックラブイデオロギーという言葉をご存知でしょうか。社会学の言葉ですが、難しい説明は抜きに簡単に言えば「恋愛で結ばれた者同士が結婚して家族を作るのが当然だし、そうあるべき」という考え方です。
「普通のことじゃない?」と感じる方もいるでしょうが、その昔、恋愛結婚は一般的な形ではありませんでした。恋愛(ロマンチックラブ)は感情の問題、結婚は家制度や生活制度として、全くの別ものだったのです(※1)。
「恋愛結婚を当然」とするロマンチックラブイデオロギーは、恋愛への憧れが広がった19世紀のヨーロッパで生まれました。日本で一般に定着したのは1960年代とされています(※2)。ちょうど日本で「お見合い結婚」と「恋愛結婚」の件数が逆転した頃です(※3)。
しかし、20世紀に多くの国々で標準的な考え方になったロマンチックラブイデオロギーですが、現在は大きな「揺らぎ」を見せているのではないでしょうか。
日本の状況だけを考えても、離婚が当たり前になり離婚率が高止まりしている状況です。また、夫婦間のセックスレスの問題も深刻で、多くの調査ではセックスレス夫婦が5割を超えると推計されています(※4)。有名人の不倫報道が連日ニュースを騒がせ、若者の結婚離れ、恋愛離れも進む状況となり、まだ少数ですが「恋愛と結婚は切り離すべきでは?」と主張する人も目に付くようになりました。
そこで、既婚者コミュニティサイトを運営するレゾンデートル株式会社(東京・新宿区、https://raisondetre-inc.co.jp/)では、結婚と幸せ、既婚者の人生の在り方を改めて考えるヒントとして、ロマンチックイデオロギーを切り口にした「恋愛感情と結婚」に関するアンケート調査を実施しました。
第1回のテーマは「令和の人々の恋愛結婚に対する意識」です。日本では1980年代が「恋愛至上主義」時代のピークだったとされていますが(※5)、それから40年を経た現代人の恋愛結婚に対する意識を紐解きます。どうぞ最後までご覧ください。
【引用・参考】
※1 谷本奈穂・渡邉大輔「ロマンティック・ラブ・イデオロギー再考―恋愛研究の視点から」、『理論と方法』31巻1号(数理社会学会、2016年)
※2 大塚明子「近代家族とロマンティック ・ラブ ・イデオロギーの2類型」『文教大学女子短期大学部研究紀要』第45集(2002年)
※3 国立社会保障・人口問題研究所『第16回出生動向基本調査』(2023年)
※4 レゾンデートル株式会社『夫婦のセックスレスに関する実態調査』(2023年)
※5 木村絵里子「1980 年代の「恋愛至上主義」」、高橋幸・永田夏来編『恋愛社会学: 多様化する親密な関係に接近する』(ナカニシヤ書店、2024年)
<調査概要>
・調査タイトル:恋愛感情と結婚に関する実態調査(ロマンチックラブイデオロギー調査)第1報
・調査期間:2024年12月19日~30日
・調査対象者:20~59歳の男女4,000人(男性2,000人、女性2,000人)
・調査方法:インターネット(セルフ型アンケートツールFreeasyを利用)
・エリア:全国
・調査機関:レゾンデートル株式会社(https://raisondetre-inc.co.jp/)
・調査報告の掲載:「既婚者の男女関係に関する調査」で検索ください
・本報告の発表日:2025年2月14日
<調査対象者について>
下表の通り男女、各年代とも均等なサンプルになっています。
男性(2,000人) | 女性(2,000人) | |
20代 | 500人(25.0%) | 500人(25.0%) |
30代 | 500人(25.0%) | 500人(25.0%) |
40代 | 500人(25.0%) | 500人(25.0%) |
50代 | 500人(25.0%) | 500人(25.0%) |
回答者は全都道府県におおむね人口と相関する形で分布しており地域的な偏りはありません。
1) 最近の「恋愛結婚」ってどうなの?
◎恋愛結婚が減っている?
日本人の9割は「恋愛結婚」とよく説明されます。確かに1995年から2015年頃まではそうでした。「平成25年版厚生労働白書」の、未婚率の上昇を分析する章には、次の記述があります。
「我が国では戦後半世紀の間に結婚の仕方が大きく転換したことがうかがえる。戦前には約7割を占めていた見合い結婚は一貫して減少し続け、1965(昭和40)~1969(昭和44)年頃に恋愛結婚と比率が逆転した。現在では結婚の9割近くが恋愛結婚となっており、異性との交際は結婚相手の候補者を得る前提となっていると言える」(※6)
ところが、です。
最新の「第16回出生動向基本調査」(2021年調査、2023年発表)をみると、恋愛結婚の割合が急落していることが分かります。たった5年程度で恋愛結婚が10%も減少しているのです。お見合い結婚も微増していますが、代わりに伸びているのがインターネットの出会いで15%に達します。「恋愛結婚」重視のトレンドが少し変わりつつあると言えるでしょう。
ただし、同調査の質問紙は、「知り合ったきっかけ」で「お見合い」「結婚相談所」「インターネット」以外(例えば「職場」「学校」など)を選ぶと、それらをすべて「恋愛結婚」にカウントするため、少し割り引いて考える必要はあります。
【引用・参考】
※6 厚生労働省「結婚に関する意識」『平成25年 厚生労働白書』(2013)
◎結婚するなら「恋愛結婚」?
このような前提を踏まえ、今回の「恋愛感情と結婚に関する実態調査」のアンケートの結果を紹介しましょう。20代から50代の男女4,000人に「結婚するなら『恋愛結婚』が良いと思うか」を尋ねたところ、「恋愛結婚が良い」が36.2%、「どちらかと言えば恋愛結婚が良い」が30.9%と、合わせて約7割(67.1%)が「恋愛結婚」に肯定的という結果になりました。
「恋愛」「結婚」それぞれに関する意識調査は多くありますが、「恋愛結婚」そのものを尋ねた意識調査は過去に例がないため、結果の比較ができません。「想像よりも肯定する割合が低い」「想像どおり」「令和の今でも恋愛結婚はこんなに重視されている」など、とらえ方は様々でしょう。なお、回答者には独身も既婚も含みます(独身:2,151人、既婚:1,849人)。
2)「恋愛結婚派」が多い属性は?(男女差・独身と既婚・年収など)
続いて、性別・婚姻状況・年代などの属性別に回答を比較し、傾向に違いがないか探ってみます。
◎男性×女性
まずは、常道である男女差を比較してみました。すると、「恋愛結婚が良い」「どちらかと言えば恋愛結婚が良い」を合わせると、男性は66.9%、女性は67.1%で、ほとんど男女差がないという珍しい結果になりました。通常、この種の意識調査は多少なりとも違いが出るものですが、「恋愛結婚が良い」という認識には男女間の齟齬はなさそうです。これ自体が発見かもしれません。
◎独身×既婚
次に独身者と既婚者で比較すると、既婚者の方が「恋愛結婚が良い」と回答した割合が10ポイントも高い結果になりました。これほどの差が出るのは予想外でしたが、弊社の過去の様々な調査結果では「夫婦仲が良い」と回答する人が多かったことを考えると(※7・8)、恋愛結婚の結果、現在の結婚に満足している人が多い反映かもしれません。なかには「現状に不満はあるが恋愛結婚だったから我慢できる」というケースもあるでしょう。一方、独身者の場合は、「結婚願望はあるが恋愛にたどり着くのが難しい」「恋愛結婚に失敗した」などの人が含まれるため、そのぶん肯定的ではない人が多いかもしれません。
さらに、性別で分けてみると、次のようになります。際立って既婚男性が恋愛結婚を肯定的に評価していることが分かるでしょう。日本人の結婚の大半が恋愛結婚ですから、既婚男性は自分の結婚に満足している一方、配偶者である既婚女性はそれほどでもないと言えそうです。
なお、年齢別にみると、20代女性は恋愛結婚に肯定的な傾向が強く、独身と既婚の間に差はありません。独身女性の41.3%、既婚女性の40.8%が「恋愛結婚が良い」と断言しており、「どちらかと言えば恋愛結婚が良い」を含めると65%前後になります。
一方、20代男性の場合は、既婚男性の49.2%が「恋愛結婚が良い」と断言するのに対し、独身男性は同じ回答が28.7%に止まります。「どちらかと言えば恋愛結婚が良い」を含めると、既婚男性は65%を超えますが、独身男性は6割を切ります。若年男性の草食化、恋愛への消極傾向を反映しているといえるでしょう。
【引用・参考】
※7 レゾンデートル株式会社『夫婦のセックスレスに関する実態調査 第6報』(2024)
※8 レゾンデートル株式会社『夫婦のセックスレスに関する実態調査 第7報』(2024)
◎低所得×高所得
続いて、恋愛結婚に対する考え方に影響を与えそうな因子として、収入の違いで比べてみました。アンケートツールの都合上、世帯年収での比較になるため、個人の年収とは直結しませんが、おおよその傾向は測れるでしょう。
男性は、年収400万円未満で恋愛結婚を肯定する割合が低くなっていますが、恋愛に対する消極さや余裕のなさの現れかもしれません。一方、1500万円以上の高所得層が恋愛結婚に肯定的なのは意外な結果と言えるでしょう。高所得男性は、恋愛的な気持ちを優先するより自分の好条件を有利に使って結婚したいと考える人が多いと予想していましたが、偏見だったようです。
一方、女性はおおむね年収に応じて恋愛結婚を肯定的にとらえる割合が高くなっていて興味深いところですが、1500万円以上の高所得層に限り急に低くなります。高収入の女性は恋愛感情に重きをおかないのでしょうか。男性との対比が興味深いところです。
◎恋愛経験×恋愛結婚
この項目の最後に、それまでの恋愛経験が恋愛結婚への意識に関連するかを調べてみました。結果は読道どおり、見事に相関する形となりました。恋愛経験が豊富なほど、恋愛結婚を肯定的にとらえている様子が見て取れます。交際人数が多すぎるとマイナス要因になるかとも予想しましたが、影響はないようです。
3) 結婚に恋愛感情は必須?
これまで恋愛結婚に対する意識を分析してきましたが、少し質問の角度を変えて「結婚するのに恋愛感情が必要と思うか」を尋ねたところ、次の結果になりました。おおむね「結婚するなら恋愛結婚が良いと思うか」への回答と傾向は同じですが、女性の方が「必要ではない」ととらえる割合が高く、より現実的な側面が垣間見えて興味深いところです。
4) 今回のまとめと今後の展開
令和に生きる人々の恋愛結婚に対する意識を、様々な角度から分析してきました。恋愛至上主義時代が終わって20年以上が経ちます。感情よりも合理的な思考に重きが置かれ、若者の間では恋愛に消極的な姿勢が拡大する昨今ですが、恋愛結婚に対する肯定的な評価はいまだ揺らいでいないように見受けられます。恋愛と結婚を結びつけるロマンチックラブイデオロギーは、令和の現在も健在といえるでしょう。
しかし問題は、結婚後の「恋愛感情」の行き先です。配偶者にずっと恋愛感情を保ち続けている人は、どの程度いるのでしょうか。また、恋愛感情が夫婦愛や家族愛に発展している夫婦は、どれほどいるのでしょうか。
結婚は、家族をつくる行為です。家族には、生活や生計、子育て、介護などの機能があり、恋愛感情がなくなったからといって簡単に解消できません。もともと別ものだった恋愛と結婚の結合によって生じる矛盾を、令和の人々はどのように考えているか、興味深いところです。
加えて、ロマンチックラブイデオロギーは、「結婚したら生涯パートナーを愛し、他の異性と性関係を結ばない」という規範がセットとなっています。このため、ロマンチックラブイデオロギーが広がる前の時代は、男性が妾や愛人を持つことが当たり前でしたが、今では、妻以外と恋愛関係や性関係を結ぶことは悪とみなされるようになりました。
しかしここ数年、配偶者の許可を得て他の異性との恋愛や性関係を自由化するオープンマリッジを選択する夫婦が注目されるなど、現在の結婚の在り方を問い直す動きも出ています。1990年代によく議論されたロマンチックラブイデオロギーが、令和の現代に再び注目を集めるようになったのには、そのような背景があるのでしょう。
今後の調査では、恋愛感情と結婚の関係、既婚者の内面を深掘りしていきたいと考えます。
◎調査の目的
私どもレゾンデートル株式会社(東京都新宿区)は、「結婚後の新たな生き方」を提案する既婚者向けメディアやネットサービスの展開を行うシステム開発企業です。現代の夫婦関係のあり方や多様性を把握し、今後のサービス開発に向けた市場動向を探るため、今回の調査を企画しました。
◎調査内容・本リリースに関するお問い合わせ
今回の調査内容やデータの詳細に関するお問い合わせ、報道関係の皆様の取材依頼やお問い合わせは下記までお願い申し上げます。
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企業情報
企業名 | レゾンデートル株式会社 |
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代表者名 | 磯野妙子 |
業種 | ネットサービス |
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