コロプラおでかけ研究所レポート#8 震災後100日経過。回復顕著ながら福島県では「母子疎開」が…?
コロプラおでかけ研究所レポート#8 震災後100日経過。回復顕著ながら福島県では「母子疎開」が…?
おでかけを科学する<コロプラおでかけ研究所(主席研究員:長谷部潤)>は、株式会社コロプラ(代表取締役:馬場功淳)が運営する位置ゲープラットフォーム「コロプラ+(プラス)」における月間4,000万回もの位置登録情報を分析。3月31日の第1回レポートに続き、第8回目となる今回は、震災後100日を経過したことでの復興状況、また依然として続く厳しさなど、あらためて震災関連についてレポーティングした。結論から言えば、福島県の特に浜通りエリア以外での位置登録ユーザ数や移動距離は、GWでの活発な「おでかけ」をきっかけに震災前水準へと回復してきた。一方で福島県では県外転居(一時的避難ではなく)と思われる動きが顕著。データ上では、夫が福島に残り妻子を県外に移す「母子疎開」の傾向が読み取れる。東京でも待機児童減少の話を耳にする。我々が考えている以上に、原発事故をきっかけとする「疎開」が進んでいるのかもしれない。
■「移動距離」は震災前水準へと回復・被災地三県は週末に大きく移動
6月18日、東日本大震災からちょうど100日目を迎えた。<おでかけ研究所>では最新の位置情報を元に、あらためて震災から直近までのデータ分析を行った。結論から言うと、ユーザ当たり移動距離は、完全に震災前水準にまで回復してきた。勿論、被災地復旧が実現したわけではなく、まだまだ厳しい状況は続いている。しかし、そこでの人々の営み・活動については、ほぼ元に戻ったと考えている。
震災前のユーザ当たり一日平均移動距離は50km〜60km。昨年のGWを上回る移動距離を今年のそれは実現したように、震災直後からの自粛ムードもGWには「おでかけをして消費をしないとむしろ復興のためには良くない」との認識へと変わっていった。GWを機におでかけは元に戻ったのである。興味深いのは被災地三県(宮城、岩手、福島)での移動距離が、震災前水準を大きく上回り始めた点である。特に平日と週末とのかい離が大きい。被災したその場をとにかく片づける(=移動があまりない)、から復旧に必要なものを(週末に)買いに行く(=移動が増える)へと変わってきたため、と考えている。復旧・復興のステージも「一歩前に進んだ」ということだろう。
■観光地はどうなったのだろう?
被災地での人々の日々の営みの回復は確認できた。では、震災の結果、物理的被害以上にそもそも観光客の足が遠のいていた観光地はどういう状況なのであろうか。震災による物理的被害が比較的小さかった観光地を三つ――平泉、松島、猪苗代湖――を取り上げてみた。平泉は、GWにおける人出がグンと伸びただけでなく、5月7日に世界文化遺産登録を求める評価結果勧告が出たとのニュースもあってか、6月以降も震災前水準を完全に超える水準となっている。以前のレポートに記した「上野動物園のパンダ効果」ではないが、やはりテレビで取り上げられるようなニュースがあると、観光地へのインパクトは大きい。松島は震災前水準にようやく戻してきた印象である。ただGWの伸びが鈍いため、本来、書き入れ時であるその時期での客足は今一つであったのではないかと推察している。
厳しいのが猪苗代湖である。もともと平日と週末の位置登録者数のかい離が大きい(折れ線グラフの振幅が大きい)ことから位置登録者数の多くが観光客であることがうかがえるエリアである。グラフの下限は震災前と同水準で上限がほぼ半減していることから、地元の人の活動は元に戻ったものの、週末の観光客の足は戻っていないことがうかがえる。これはいわゆる「福島の風評」から起因するものなのだろうか。次ページでは福島県の現況について分析した。
■福島県の今は…
東京電力福島第一原子力発電所の事故により、福島県は甚大な被害を受けた。宮城県、岩手県の沿岸部の被害が、建物の全壊など、「見た目」でも被害状況を掴むことができたのに対し、原子力被害の場合、見た目の変化は何もない。今回は、そのことが福島の被害の深刻さへの理解を曇らせているのではないかと考え、数値による状況判断を試みた。福島市など主要都市が並ぶ中通りエリアにおける位置登録者数は、震災前水準にまで回復した。GWまでは非常に厳しい数値であったが、4月29日に東北新幹線が全線開通したことも手伝いGWにて急伸。GW後も他エリアと同じように震災前水準を維持している。
一方で、原発事故の影響が最も大きい浜通りエリアはどうであろうか。第一原発から半径30km圏内に僅かにかかったことで大きな風評被害のあったいわき市は、随分と人の戻りが確認できるようになった。平日では震災前の9割程度の水準である。現在では行政区としていわき市全体(30km圏内の一部エリアも含めて)が屋内避難指示の対象から外されている。南相馬市は厳しさが続いている。4月11日に半径20km圏外ながら放射線年間積算量が20ミリシーベルトを超える可能性のあるエリアを「計画的避難区域」としたが、南相馬市は一部それに該当となってしまった。「一ヶ月後を目処に区域外への避難が求められる」ということであったが、実際に一ヶ月後に当たるGW以降、他エリアとは異なり、再び位置登録者数は下降トレンドを描き始めている。
■住宅全壊数4倍の宮城県と同水準の福島県県外転居者数
おでかけ研究所では、「位置登録者数」をそのエリアのアクティビティを見る指標として本来は捉えている。しかしながら今回の福島県、特に浜通りエリアでの減少は、そもそもそこに住まう人がいなくなったこと――つまり転居したことが最大の理由であることが考えられる。そこで、<コロプラ+>ユーザの「自宅」と想定されるエリアの移動――つまり転居したと推定される件数を調査した。
結果は、下図の通りである。震災以降、特に宮城、福島の転居者数が急激に上昇した。「両県同じくらいか…」と普通に思われるかもしれない。しかし本来転居せざるを得ない最も大きな理由と思われる「住宅全壊数」は宮城県が福島県の4倍もの値となっているのである。にもかかわらず両県同じくらいの転居者数なのである。我々は津波で街がごっそりと流されてしまった衝撃な絵を今なお強く記憶している。福島県では、家は以前と同じくそこに建っているかもしれない。しかし当面は戻れない家なのである。転居者数が同じ、ということは、あの津波被害の衝撃的な絵と実は同じくらいの被害が、原発事故によって福島県に生じているということなのである。福島県から県外への転居者数が震災直後から4月末にかけて「一気に」行われている点も興味深い。いかに「今そこにある危機」であったかが伺えるグラフである。そして福島県には、もう一つ興味深い数字がある。
■母子疎開
震災による「避難」には二つの意味があると考えている。一つは文字通り危険なエリアを避ける、という意味で、危険が去れば元の場所に帰ることが前提だ。もう一つは、避けるというよりは、そこから離れる――つまり元の場所には戻らない、という意味である。内閣府発表データでは6月2日段階で避難者数は約12万人。そのうち被災地三県以外に避難した人は約5万人。その5万人のうち福島県からの避難者は4万人近くを占めているのである。しかも県外避難の場合、避難所や旅館よりも「住宅等」が多くを占めている。住まうための避難先なのである。ちなみに宮城県は公民館、学校などの「避難所」が最も多い。このように避難先の内訳を見る限り、福島県は避難というよりは転居との印象が強い。
更に興味深いデータがある。都道府県別の住民票の移動状況(他都道府県への転入、転出数:総務省)である。通常においては単身赴任など仕事の関係もあり、女性よりも男性の「転出」の方が多い。本年および昨年の4月も全国平均は男性58%、女性42%である。ところが今年の4月福島県で異常値とも思える数値となった。女性比率が50.6%と男性を超えたのである。これは何を意味するのか。普通に考えれば、ご主人が福島に残り、妻子を県外に「疎開」させたとなるだろう。福島県から県外への転居者が全壊数4倍の宮城県並みに存在し、しかもその過半が女性なのである。まさに原発事故特有の人々の避難――というより疎開状況と言えるだろう。東京都でも保育園などの待機児童が減少しているとのことである。我々が考えている以上に、原発事故をきっかけとする「疎開」が進んでいるのかもしれない。
― 以上 ―
【コロプラおでかけ研究所について】
株式会社コロプラ内に設立された「おでかけ」に関するリサーチセンター。位置情報プラットフォーム<コロプラ+>におけるユーザからの月間4,000万回にも及ぶ位置登録情報データをベースに「人々の移動」を調査・分析し定期レポートを発表している。
主席研究員: 長谷部潤 ※株式会社コロプラ 取締役CSO(最高戦略責任者)を兼務
※GeoHex by sa2da is licensed under a Creative Commons 表示-継承 2.1 日本 License.Creative Commons License
【株式会社コロプラ 会社概要】
社名: 株式会社コロプラ http://colopl.co.jp
所在地: 東京都渋谷区恵比寿南1-15-1 JT恵比寿南ビル3F
設立: 2008年10月1日
資本金: 256,385,000円
代表者: 代表取締役社長 馬場功淳
事業内容: 「コロニーな生活☆PLUS」など位置情報ゲーム、位置情報サービスプラットフォーム「コロプラ+」の開発・運営
【本リリースに関するお問い合わせ】
株式会社コロプラ 経営企画部 天野 press@colopl.co.jp
■「移動距離」は震災前水準へと回復・被災地三県は週末に大きく移動
6月18日、東日本大震災からちょうど100日目を迎えた。<おでかけ研究所>では最新の位置情報を元に、あらためて震災から直近までのデータ分析を行った。結論から言うと、ユーザ当たり移動距離は、完全に震災前水準にまで回復してきた。勿論、被災地復旧が実現したわけではなく、まだまだ厳しい状況は続いている。しかし、そこでの人々の営み・活動については、ほぼ元に戻ったと考えている。
震災前のユーザ当たり一日平均移動距離は50km〜60km。昨年のGWを上回る移動距離を今年のそれは実現したように、震災直後からの自粛ムードもGWには「おでかけをして消費をしないとむしろ復興のためには良くない」との認識へと変わっていった。GWを機におでかけは元に戻ったのである。興味深いのは被災地三県(宮城、岩手、福島)での移動距離が、震災前水準を大きく上回り始めた点である。特に平日と週末とのかい離が大きい。被災したその場をとにかく片づける(=移動があまりない)、から復旧に必要なものを(週末に)買いに行く(=移動が増える)へと変わってきたため、と考えている。復旧・復興のステージも「一歩前に進んだ」ということだろう。
■観光地はどうなったのだろう?
被災地での人々の日々の営みの回復は確認できた。では、震災の結果、物理的被害以上にそもそも観光客の足が遠のいていた観光地はどういう状況なのであろうか。震災による物理的被害が比較的小さかった観光地を三つ――平泉、松島、猪苗代湖――を取り上げてみた。平泉は、GWにおける人出がグンと伸びただけでなく、5月7日に世界文化遺産登録を求める評価結果勧告が出たとのニュースもあってか、6月以降も震災前水準を完全に超える水準となっている。以前のレポートに記した「上野動物園のパンダ効果」ではないが、やはりテレビで取り上げられるようなニュースがあると、観光地へのインパクトは大きい。松島は震災前水準にようやく戻してきた印象である。ただGWの伸びが鈍いため、本来、書き入れ時であるその時期での客足は今一つであったのではないかと推察している。
厳しいのが猪苗代湖である。もともと平日と週末の位置登録者数のかい離が大きい(折れ線グラフの振幅が大きい)ことから位置登録者数の多くが観光客であることがうかがえるエリアである。グラフの下限は震災前と同水準で上限がほぼ半減していることから、地元の人の活動は元に戻ったものの、週末の観光客の足は戻っていないことがうかがえる。これはいわゆる「福島の風評」から起因するものなのだろうか。次ページでは福島県の現況について分析した。
■福島県の今は…
東京電力福島第一原子力発電所の事故により、福島県は甚大な被害を受けた。宮城県、岩手県の沿岸部の被害が、建物の全壊など、「見た目」でも被害状況を掴むことができたのに対し、原子力被害の場合、見た目の変化は何もない。今回は、そのことが福島の被害の深刻さへの理解を曇らせているのではないかと考え、数値による状況判断を試みた。福島市など主要都市が並ぶ中通りエリアにおける位置登録者数は、震災前水準にまで回復した。GWまでは非常に厳しい数値であったが、4月29日に東北新幹線が全線開通したことも手伝いGWにて急伸。GW後も他エリアと同じように震災前水準を維持している。
一方で、原発事故の影響が最も大きい浜通りエリアはどうであろうか。第一原発から半径30km圏内に僅かにかかったことで大きな風評被害のあったいわき市は、随分と人の戻りが確認できるようになった。平日では震災前の9割程度の水準である。現在では行政区としていわき市全体(30km圏内の一部エリアも含めて)が屋内避難指示の対象から外されている。南相馬市は厳しさが続いている。4月11日に半径20km圏外ながら放射線年間積算量が20ミリシーベルトを超える可能性のあるエリアを「計画的避難区域」としたが、南相馬市は一部それに該当となってしまった。「一ヶ月後を目処に区域外への避難が求められる」ということであったが、実際に一ヶ月後に当たるGW以降、他エリアとは異なり、再び位置登録者数は下降トレンドを描き始めている。
■住宅全壊数4倍の宮城県と同水準の福島県県外転居者数
おでかけ研究所では、「位置登録者数」をそのエリアのアクティビティを見る指標として本来は捉えている。しかしながら今回の福島県、特に浜通りエリアでの減少は、そもそもそこに住まう人がいなくなったこと――つまり転居したことが最大の理由であることが考えられる。そこで、<コロプラ+>ユーザの「自宅」と想定されるエリアの移動――つまり転居したと推定される件数を調査した。
結果は、下図の通りである。震災以降、特に宮城、福島の転居者数が急激に上昇した。「両県同じくらいか…」と普通に思われるかもしれない。しかし本来転居せざるを得ない最も大きな理由と思われる「住宅全壊数」は宮城県が福島県の4倍もの値となっているのである。にもかかわらず両県同じくらいの転居者数なのである。我々は津波で街がごっそりと流されてしまった衝撃な絵を今なお強く記憶している。福島県では、家は以前と同じくそこに建っているかもしれない。しかし当面は戻れない家なのである。転居者数が同じ、ということは、あの津波被害の衝撃的な絵と実は同じくらいの被害が、原発事故によって福島県に生じているということなのである。福島県から県外への転居者数が震災直後から4月末にかけて「一気に」行われている点も興味深い。いかに「今そこにある危機」であったかが伺えるグラフである。そして福島県には、もう一つ興味深い数字がある。
■母子疎開
震災による「避難」には二つの意味があると考えている。一つは文字通り危険なエリアを避ける、という意味で、危険が去れば元の場所に帰ることが前提だ。もう一つは、避けるというよりは、そこから離れる――つまり元の場所には戻らない、という意味である。内閣府発表データでは6月2日段階で避難者数は約12万人。そのうち被災地三県以外に避難した人は約5万人。その5万人のうち福島県からの避難者は4万人近くを占めているのである。しかも県外避難の場合、避難所や旅館よりも「住宅等」が多くを占めている。住まうための避難先なのである。ちなみに宮城県は公民館、学校などの「避難所」が最も多い。このように避難先の内訳を見る限り、福島県は避難というよりは転居との印象が強い。
更に興味深いデータがある。都道府県別の住民票の移動状況(他都道府県への転入、転出数:総務省)である。通常においては単身赴任など仕事の関係もあり、女性よりも男性の「転出」の方が多い。本年および昨年の4月も全国平均は男性58%、女性42%である。ところが今年の4月福島県で異常値とも思える数値となった。女性比率が50.6%と男性を超えたのである。これは何を意味するのか。普通に考えれば、ご主人が福島に残り、妻子を県外に「疎開」させたとなるだろう。福島県から県外への転居者が全壊数4倍の宮城県並みに存在し、しかもその過半が女性なのである。まさに原発事故特有の人々の避難――というより疎開状況と言えるだろう。東京都でも保育園などの待機児童が減少しているとのことである。我々が考えている以上に、原発事故をきっかけとする「疎開」が進んでいるのかもしれない。
― 以上 ―
【コロプラおでかけ研究所について】
株式会社コロプラ内に設立された「おでかけ」に関するリサーチセンター。位置情報プラットフォーム<コロプラ+>におけるユーザからの月間4,000万回にも及ぶ位置登録情報データをベースに「人々の移動」を調査・分析し定期レポートを発表している。
主席研究員: 長谷部潤 ※株式会社コロプラ 取締役CSO(最高戦略責任者)を兼務
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【株式会社コロプラ 会社概要】
社名: 株式会社コロプラ http://colopl.co.jp
所在地: 東京都渋谷区恵比寿南1-15-1 JT恵比寿南ビル3F
設立: 2008年10月1日
資本金: 256,385,000円
代表者: 代表取締役社長 馬場功淳
事業内容: 「コロニーな生活☆PLUS」など位置情報ゲーム、位置情報サービスプラットフォーム「コロプラ+」の開発・運営
【本リリースに関するお問い合わせ】
株式会社コロプラ 経営企画部 天野 press@colopl.co.jp
企業情報
企業名 | 株式会社コロプラ |
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代表者名 | 馬場功淳 |
業種 | ネットサービス |
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