大学低学年向けに演技手法を活用したキャリア教育開催。ベースとなる理論はアルバートバンデューラや森田正馬です。特に人前に出るのが苦手な人を対象に実施

5/10(木)から毎週木曜日の5時限目に、ある大学の低学年を対象に演劇ワークショップを開催致します。「モチベーションup講座」と称してカナダ人心理学者アルバートバンデューラの自己効力感の高め方、日本の医学者である森田正馬の目的本位をベースにした体験型プログラムを演劇を通して学んで頂く予定です。

昨今の就職氷河期を受けて大学生の就活は厳しいものとなっております。5/8の読売新聞の記事でも「就活失敗し自殺する若者急増…4年で2・5倍に」というものがありました。そういう流れを受け各大学のキャリアセンターや就職課では内部・外部問わず様々なキャリア教育や就職支援を行っております。巷には就活に関する関連書籍やカリスマセミナー講師の就職イベント、インターネット上におけるハウツー記事なども多数ございます。

また当の大学生はもちろんですが、保護者の方も高い授業料を払って子供を大学に行かせたものの、就職が決まらないかもしれないということで、就職に関して面倒見の良い大学が大学選定基準の上位になっております。(日本経済新聞記事)

一方学生側も厳しい受験を終えて大学に入学したものの、2年も経てばすぐに就職活動が始まり、それまでの「自己本位」な姿勢から急に「他人本位」な姿勢が求められるようになるのが就活の特徴です。そこで今まで特にそういったことを意識しなかった学生やどちらかといえば対人関係や人との交流面で活発でなかった学生は、たちまち戸惑い、悩み、書籍やハウツーセミナー、もしくは自己啓発などにいそしみます。ただ就活は、受験勉強と同じようなマニュアル通りの暗記型では通用しないのが現実で、今までそういった取組みをしてこなかった学生はここで大きくつまずくことになります。

ある中堅企業の役員と話をしていたら「学生と面接すれば大体どこの大学か分かる」というくらい学生の言動が大学によって固定化、マニュアル化されているようです。もちろん、それでも内定を獲得できる学生はそれでも良いでしょう。しかし、今まで対人関係が希薄だったり、人との交流を積極的に行ってこなかった学生にとっては一朝一夕のマニュアル的な就活対策では決して通用しません。

カナダ人心理学者のアルバートバンデューラが提唱した「自己効力感の高め方」という「自信」と同じ意味なのですが、その理論を詳しく提唱しております。自己効力感には3つのタイプがあって、1つ目は自己の行動を制御する自己効力感、2つ目は学業面での自己効力感、そして3つ目が対人関係での自己効力感があるそうですが、3つ目の対人関係の自己効力感だけが2人称であり、自分だけでは完結しない自信の領域なのです。

つまり相手があってこそはじめて成立する自信であり、ここが非常に難しくもあり、面白い部分であります。いくら文明が発達しても、人と人との関係やそれに関する悩みなどは古代ギリシャ時代から全く変わっていないところも興味をそそられます。

話をもとに戻すと、就活前に対人関係の自己効力感が高まっていない学生が急に就活が始まったからといって対人関係で自信が出るはずがありませんし、様々なアドバイスや技術、ノウハウを得たところで、それらを活かす土台が確立されていないので頭では理解しているが、実際にはできないという事態が起こります。その結果、自己嫌悪に陥ったり、外部環境に対して不満を言ったり、挙句の果てに自信喪失から無気力、あきらめ感や周囲からの視線を評価を気にして就職活動を止めてしまい、ひどい場合は自らの命まで断ってしまう。

では、それら就活が上手くいかない学生には何が足りないのでしょうか?

それは圧倒的な「体験不足」だと思うのです。特に対人関係における「体験不足」です。体験がないから自信も起こりようがないのです。言葉の励ましや自分自身に対するマインドコントロールも有効ではありますが、それらの効果はすぐに消滅してしまいます。

一方自身の体験が増えると、もちろん失敗体験も増えますが、当然成功体験も増えていきます。そしてなによりも体験が増えるということは、行動が増えた証であり、行動が増えたということは、チャレンジした回数が増えた証でもあります。

つまり、チャレンジしたということ自体が自己効力感、つまり自分に対する自信につながるのであります。ましてやその体験から成功体験や達成体験が増えてくると、ますます自分自身に対する自信は高まってくるので、当然次なる行動も起こしやすくなります。

アルバートバンデューラの自己効力感を高める4つの源泉でも、一番効果の高いものは「達成体験」であると述べています。

では、今の大学生は一体どこでその「達成体験」を学ぶことができるのでしょうか。

IT産業の台頭や夫婦共働き、核家族化などが原因で、子供達の「遊び」が変わってきてしまった現在、子供達の対人関係の学びを昭和世代の人達と同じようにリアルな日常生活から求めるのはナンセンスです。

もうそろそろ日本でもそういった「対人関係」を学ぶ機会や場所を意図的に提供していかなければならない時だと思います。欧米では各教育機関に必ず「演劇」を学ぶところがあります。演劇は関係性の芸術ともいわれており、空間や状況、そして人と人との関係性があって成立する芸術であります。

演劇活動では、実際にはそこにない状況をお互いの関係性の中から創造し、実際には実物でない物体をその空間との関係性の中から見出し、役作りに関しては自分でない人間を相手との関係性において表現していきます。

しかし、これらはリアルな日常生活でも全く同じではないでしょうか。

自信や自己効力感にしても、決して目に見えるものではありませんし、対人関係におけるコミュニケーションの言葉のやり取りに関しても、そこに「共感」がなければ決して人間関係が深まることはありません。そして「共感」は決して目に見えるものではありませんが、確かに存在するものであります。

つまり演劇体験を通じて、リアルな日常生活、社会人としての必要な社会人基礎力を学ぶことができるのです。しかも、演劇ワークショップという場所は失敗が許されるので学生達にとっても安全な場所です。なぜならワークショップという言葉は、工房とか作業場、実験室のような意味合いがあり、失敗が許されないリアルな本番ではないからです。ですから、このような場所で大いに「体験」特に達成体験を積ませて上げることがこれからの若者にとって非常に重要ではないでしょうか。

そして、アルバートバンデューラはもう一つ、仲間や他者を観察する「代理経験」からも人は自己効力感を高めることができるという、モデリング理論を確立させたことでも有名なのです。

自分の体験からだけでなく、他者を観察することからも「あの人ができるなら自分もできそうだ!」という風に自分に対して自信を持つことができるというのです。自転車や車の運転、スマホの操作などをイメージすると分かりやすいですよね。「うちのばあちゃんが車を運転できるなら、きっと私にもできる!」とか「あの子がスマホ操作できるんなら私だって出来るだろう!」という感覚です。

そして演劇ワークショップは、その代理経験を獲得することができるのです。自分の仲間や同期が一生懸命励んでいる姿を目の当たりにすることで、自分も「やってみよう!」という風になれるのです。

最後に、日本の医学者であり、精神療法でも有名な森田正馬先生の「目的本位」もこの演劇ワークショップで学んで頂ければと考えております。目的本位の逆は「気分本位」であります。

学生時代は「気分本位」でも通じる世界です。気分本位は自己本位でもあります。しかし、ひとたび社会人になると「他人本位」な姿勢が求められますが、それまで「自己本位」な生活が沁みついている人にとっては急に変えようと思って変わるものではありませんし、企業の人事担当者などは採用のプロですから一瞬でそのあたりの姿勢は見抜きます。

「目的本位」な姿勢は、「気分本位」や「自己本位」、「他人本位」を包含したメタ的な姿勢と捉えて頂ければ分かりやすいかと思います。つまり、休日の時は大いに「気分本位」でも良いと思いますし、そもそも自分の人生を考えた場合は「自己本位」であるべきです。社会人になって「他人本位」な姿勢は求められますが、あまり強要され過ぎると自己喪失感に悩まされることになります。つまり時と場合によって「本位」を変えられるメタ的な「目的本位」な姿勢を学ぶことが重要なのです。

そしてこの「目的本位」な姿勢は、実は緊張対策にも有効に働きます。演劇の舞台でこの目的本位を知らない役者は極度の緊張を味わい、それを隠すことに必死になり、結果的には仰々しく大げさな自己顕示欲の固まりのようなお芝居になってしまいます。

しかし、その場面で自分が行う役割という「目的」遂行に集中することを知っている俳優は、緊張をあるがままに受入れながらも、その目的遂行に集中していくため、いつしか緊張を忘れ、その場面に自然体で存在することができます。

これは森田正馬先生の「目的本位」と「あるがままを受入れる」という教えに大いにつながるのであります。

以上を総括しますと、演劇や演技手法の実践は、やり方次第では大いに人間教育やキャリア教育に役立ちます。しかし、今までは演劇教育を教える人は俳優さんが副業的に行っていたり、もしくは教育業界の講師が片手間に演劇を勉強しただけであったり、どっちつかずの中途半端な演劇教育しか日本にはありませんでした。

私は、演劇業界とビジネス業界の両方を経験し、これまで自分が体験したことと、上記のような心理学的な理論を基礎とした演劇ワークショッププログラムを構築し、現在就活で悩んでいる学生達に対して一石投じることができればと大学側に打診したところ、大学側の共感を得、このたび「モチベーションUp講座」を開催することになりました。

是非とも上記のことを広く社会に伝えていければ幸いです。
ご協力よろしくお願い致します。

企業情報

企業名 NS人材教育コーチング
代表者名 松田浩一
業種 教育

コラム

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