マーサー、気候変動による投資の影響に関する報告書を発表
- 今後20年で気候変動の影響は何兆ドルにも及ぶ
・今後20年間において気候変動はポートフォリオの投資リスクの10%を占める見込み
・投資家はインフラストラクチャー、不動産、プライベートエクイティ、農業用地、森林、および持続可能な資産クラスの割合を増やすことでメリットを受けることができる
・2030年までに低炭素技術への投資必要額は5兆米ドルに達する見込み
・機関投資家には気候変動がもたらす投資機会から投資利益を取得、気候変動に起因する投資リスクを管理するための多くの選択肢が存在する
マーサーと世界の主要な機関投資家(運用資産総額2兆米ドル)によって発表された研究報告によると、近年続いている気候変動への政策対応の遅れと国際協調停滞により、今後数十年の間に何兆ドルというコストを機関投資家が負うことになるかもしれないという 。
マーサーのグローバルCIOであるアンドリュー・カートンは、気候変動は投資行動の本質、つまりリスク・リターンに影響するという。
「機関投資家は、気候変動のように長期的な展望を戦略計画に反映させるべきだ。マーサーが、世界の主要な投資家のグループとこういった戦略的な議論を開始したことはよかったと思っている。」とカートン氏は述べている。
また、マーサーのアジア太平洋地域の責任投資の責任者であるヘルガ・バーグデンは、報告書はアジアの投資家にとってのリスクと機会について強調しているという。
「この地域は特に、環境の影響を受けやすく、そのためメガ・テーマとしての気候変動の影響にさらされている。しかし、一方でこの地域は中国や東アジアのように低炭素技術の開発を先導しており、投資機会を生み出すとともに経済が変革していく可能性を秘めている。」
「気候変動に直面する投資家にとって、長期的に強固な新しい戦略を立てることが重要だ。我々は投資家に対して、気候変動に感応度の高い資産への配分を増やするようにアドバイスしているが、リスクへの対応だけでなく、同時に新しい投資機会を捉えるためでもある。さらに、投資家は政策当局に働きかけることによって、国際協調の停滞や気候変動対応策の遅れからくる投資リスクを避けることができるだろう。」
「気候変動シナリオ−戦略的資産配分への影響」研究報告書では、2030年までの4つの気候変動シナリオに基づき、気候変動が投資ポートフォリオに及ぼすであろう財務的な影響について分析している。報告書は、戦略的資産配分にこの影響を考慮していく、実践的なステップを明らかにしている。
カンクンでの国連気候変動会議は、先のコペンハーゲンでの失敗を修正する何らかの合意を生み出したが、一方で京都議定書が失効する2012年以降の市場メカニズムに対する議決ができなかったことにより、投資家にとっては不確実性の暗雲が垂れ込めることになった。
報告書では、機関投資家が、資産クラスや地域にまたがって気候変動に関わる投資リスクと機会について理解するためのフレームワークを示した。このマーサーの「TIPフレームワーク」は、低炭素技術(T=Technologies)への投資度合い、物理的な環境への影響(I=Impacts)、国際的な政策(P=Policy)がもたらす炭素コストを4つの気候変動シナリオについて推計している。
2030年までに起き得る主要なポイント:
・気候変動は長期の機関投資家にとって不確実性を増大させ、そしてそれは積極的に対応する必要がある。
・低炭素技術への投資の必要額は5兆米ドルに達するだろう。
・物理的な環境、健康や食糧安全保障への影響は4兆米ドル以上のコストになる可能性がある。
・気候変動に関連する政策の変更により、炭素排出のコストは8兆米ドルに達する可能性がある。
・気候変動感応度の高い資産へ配分することにより、リスクを緩和したり新しい投資機会を捉えることができる。
・気候変動に対する政策の国際強調の失敗や遅れによるコストを回避するために、機関投資家は、政策当局に働きかけていくことが重要である。
・各国の政策が導入されることにより、リスク、これは常時モニターする必要があるが、だけでなく新しい投資機会も生み出される。
・EUと中国/東アジアはこれからの数十年に亘って、低炭素技術や効率化の中心となるだろう。
この報告書の公表とマーサーTIPフレームワークは、マーサーと14の世界的な機関投資家の協働作業によるものだが、世界銀行グループ一員である国際金融公社(IFC)とカーボントラストのサポートを受けた。また、グランサム研究所・ヴィヴィッド・エコノミクス社が当リサーチの気候変動シナリオの経済的影響の部分を担当し、モデル構築において実務家と学術研究者で構成されたリサーチグループを支援した。
プロジェクト・パートナーは当リサーチとその結果についてコメントを寄せている。
「VicSuperは投資戦略にサステナビリティを組み込むことに対して積極的な立場を取っている。このため、バンガード・カーボンアワード・インターナショナル・シェア・ファンドのような低炭素の株式ファンドや環境問題にソリューションを提供する技術や製品に投資するようなクリーン・テクノロジーのベンチャー・キャピタルに投資している。この気候変動シナリオ研究に参加したのは、気候変動のリスクと投資機会を投資戦略にどのように組み込んでいくかを考える一助になると考えたからだが、同時に気候変動のリスクリターンへの影響を測るしっかりした方法論の確立にも役立つだろう。我々は25万人以上の加入者の利益のために参加した。」
(ピーター・ラント、投資リサーチ責任者、VicSuper)
「気候変動が深刻な財務的かつ経済的リスクを抱合しているということは、最近の気候に関連しておきた天災、オーストラリアやパキスタンの洪水、ロシアの山火事などによる数百億米ドルにおよぶ損害によって、初めて表面化している。この研究は投資ポートフォリオが内包する気候変動のリスクを測るという点に大きく貢献しているが、受益者の期待するリターンを確保しながらリスクを管理することが、こういった資産運用には求められている。このレポートは、投資家が今日気候変動リスクを管理するためにどのように資産配分を変更するか、将来の低炭素社会が必要とするインフラに資金を提供するための実践的な方法を示している。」
(レイチェル・カイト、バイスプレジデント、国際金融公社)
「このレポートは、気候変動に取り組む国際的な努力から発生するポートフォリオのリスクを測ろうとする点でユニークかつ画期的である。そして、グリーン資産クラスへの配分を増やすことによってこのリスクに対応しなければ、長期的なリターンは下落するということを示している。この結論はグリーン資産への投資が受益者の長期的な利益に対立するという考え方に疑問符をつけたといえよう。これは受託者責任に対する意味ある示唆であり、資産運用において気候変動の影響を分析する必要性を明確化したといえる。」
(ブルース・ダグイット、投資家エンゲージメント責任者、カーボントラスト)
※当レポートの全文(英語)、要旨をまとめたエグゼクティブ・サマリー(日・英)はこちらからダウンロードできます http://www.mercer.co.jp/press-releases/1409175
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マーサーについて
マーサー (英語社名: Mercer、本社: ニューヨーク、会長兼CEO: ミシェル・バーンズ)は、世界40カ国以上、約180都市において、コンサルティング、アウトソーシング、インベストメント分野で25,000社以上のクライアントにサービスを提供するグローバル・コンサルティング・ファームです。世界各地に在籍する20,000名以上のスタッフがクライアントの皆様のパートナーとして多様な課題に取り組み、最適なソリューションを総合的に提供しています。
日本においては、30余年の豊富な実績とグローバル・ネットワークを活かし、あらゆる業種の企業・公共団体に対するサービス提供を行っています。組織変革、人事制度構築、福利厚生・退職給付制度構築、M&Aアドバイザリー・サービス、グローバル人材マネジメント基盤構築、給与データサービス、年金数理、年金資産運用など、「人・組織」を基盤とした幅広いコンサルティング・サービスを提供しています。
マーサーについての詳細は、以下をご参照ください:
マーサー ジャパン http://www.mercer.co.jp
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・機関投資家には気候変動がもたらす投資機会から投資利益を取得、気候変動に起因する投資リスクを管理するための多くの選択肢が存在する
マーサーと世界の主要な機関投資家(運用資産総額2兆米ドル)によって発表された研究報告によると、近年続いている気候変動への政策対応の遅れと国際協調停滞により、今後数十年の間に何兆ドルというコストを機関投資家が負うことになるかもしれないという 。
マーサーのグローバルCIOであるアンドリュー・カートンは、気候変動は投資行動の本質、つまりリスク・リターンに影響するという。
「機関投資家は、気候変動のように長期的な展望を戦略計画に反映させるべきだ。マーサーが、世界の主要な投資家のグループとこういった戦略的な議論を開始したことはよかったと思っている。」とカートン氏は述べている。
また、マーサーのアジア太平洋地域の責任投資の責任者であるヘルガ・バーグデンは、報告書はアジアの投資家にとってのリスクと機会について強調しているという。
「この地域は特に、環境の影響を受けやすく、そのためメガ・テーマとしての気候変動の影響にさらされている。しかし、一方でこの地域は中国や東アジアのように低炭素技術の開発を先導しており、投資機会を生み出すとともに経済が変革していく可能性を秘めている。」
「気候変動に直面する投資家にとって、長期的に強固な新しい戦略を立てることが重要だ。我々は投資家に対して、気候変動に感応度の高い資産への配分を増やするようにアドバイスしているが、リスクへの対応だけでなく、同時に新しい投資機会を捉えるためでもある。さらに、投資家は政策当局に働きかけることによって、国際協調の停滞や気候変動対応策の遅れからくる投資リスクを避けることができるだろう。」
「気候変動シナリオ−戦略的資産配分への影響」研究報告書では、2030年までの4つの気候変動シナリオに基づき、気候変動が投資ポートフォリオに及ぼすであろう財務的な影響について分析している。報告書は、戦略的資産配分にこの影響を考慮していく、実践的なステップを明らかにしている。
カンクンでの国連気候変動会議は、先のコペンハーゲンでの失敗を修正する何らかの合意を生み出したが、一方で京都議定書が失効する2012年以降の市場メカニズムに対する議決ができなかったことにより、投資家にとっては不確実性の暗雲が垂れ込めることになった。
報告書では、機関投資家が、資産クラスや地域にまたがって気候変動に関わる投資リスクと機会について理解するためのフレームワークを示した。このマーサーの「TIPフレームワーク」は、低炭素技術(T=Technologies)への投資度合い、物理的な環境への影響(I=Impacts)、国際的な政策(P=Policy)がもたらす炭素コストを4つの気候変動シナリオについて推計している。
2030年までに起き得る主要なポイント:
・気候変動は長期の機関投資家にとって不確実性を増大させ、そしてそれは積極的に対応する必要がある。
・低炭素技術への投資の必要額は5兆米ドルに達するだろう。
・物理的な環境、健康や食糧安全保障への影響は4兆米ドル以上のコストになる可能性がある。
・気候変動に関連する政策の変更により、炭素排出のコストは8兆米ドルに達する可能性がある。
・気候変動感応度の高い資産へ配分することにより、リスクを緩和したり新しい投資機会を捉えることができる。
・気候変動に対する政策の国際強調の失敗や遅れによるコストを回避するために、機関投資家は、政策当局に働きかけていくことが重要である。
・各国の政策が導入されることにより、リスク、これは常時モニターする必要があるが、だけでなく新しい投資機会も生み出される。
・EUと中国/東アジアはこれからの数十年に亘って、低炭素技術や効率化の中心となるだろう。
この報告書の公表とマーサーTIPフレームワークは、マーサーと14の世界的な機関投資家の協働作業によるものだが、世界銀行グループ一員である国際金融公社(IFC)とカーボントラストのサポートを受けた。また、グランサム研究所・ヴィヴィッド・エコノミクス社が当リサーチの気候変動シナリオの経済的影響の部分を担当し、モデル構築において実務家と学術研究者で構成されたリサーチグループを支援した。
プロジェクト・パートナーは当リサーチとその結果についてコメントを寄せている。
「VicSuperは投資戦略にサステナビリティを組み込むことに対して積極的な立場を取っている。このため、バンガード・カーボンアワード・インターナショナル・シェア・ファンドのような低炭素の株式ファンドや環境問題にソリューションを提供する技術や製品に投資するようなクリーン・テクノロジーのベンチャー・キャピタルに投資している。この気候変動シナリオ研究に参加したのは、気候変動のリスクと投資機会を投資戦略にどのように組み込んでいくかを考える一助になると考えたからだが、同時に気候変動のリスクリターンへの影響を測るしっかりした方法論の確立にも役立つだろう。我々は25万人以上の加入者の利益のために参加した。」
(ピーター・ラント、投資リサーチ責任者、VicSuper)
「気候変動が深刻な財務的かつ経済的リスクを抱合しているということは、最近の気候に関連しておきた天災、オーストラリアやパキスタンの洪水、ロシアの山火事などによる数百億米ドルにおよぶ損害によって、初めて表面化している。この研究は投資ポートフォリオが内包する気候変動のリスクを測るという点に大きく貢献しているが、受益者の期待するリターンを確保しながらリスクを管理することが、こういった資産運用には求められている。このレポートは、投資家が今日気候変動リスクを管理するためにどのように資産配分を変更するか、将来の低炭素社会が必要とするインフラに資金を提供するための実践的な方法を示している。」
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「このレポートは、気候変動に取り組む国際的な努力から発生するポートフォリオのリスクを測ろうとする点でユニークかつ画期的である。そして、グリーン資産クラスへの配分を増やすことによってこのリスクに対応しなければ、長期的なリターンは下落するということを示している。この結論はグリーン資産への投資が受益者の長期的な利益に対立するという考え方に疑問符をつけたといえよう。これは受託者責任に対する意味ある示唆であり、資産運用において気候変動の影響を分析する必要性を明確化したといえる。」
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マーサーについて
マーサー (英語社名: Mercer、本社: ニューヨーク、会長兼CEO: ミシェル・バーンズ)は、世界40カ国以上、約180都市において、コンサルティング、アウトソーシング、インベストメント分野で25,000社以上のクライアントにサービスを提供するグローバル・コンサルティング・ファームです。世界各地に在籍する20,000名以上のスタッフがクライアントの皆様のパートナーとして多様な課題に取り組み、最適なソリューションを総合的に提供しています。
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企業情報
企業名 | マーサージャパン株式会社 |
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代表者名 | 鴨居 達哉 |
業種 | その他サービス |
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