死ぬまでに行きたい!世界の絶景「ネモフィラの丘」は、なぜ人を呼び寄せるのか
一生に一度は見たい景色と言われる真っ青なネモフィラの花畑がある「国営ひたち海浜公園(茨城県)」。ゴールデンウィーク前後に見ごろを迎えるネモフィラだけでなく、秋には真っ赤なコキアの紅葉、冬にはアイスチューリップや水仙が楽しめるスポットです。この国営ひたち海浜公園は、東京都心から離れたいわゆる「交通の便が悪い場所」ですが、近年入園者数が上昇傾向にあります。こんな場所の公園が何故、人を集めているのか。今回はそのポイントについて見ていきたいと思います。
世界の絶景ランキング11位「ネモフィラの丘」
ひたち海浜公園の中で最も有名なスポットは、何と言っても「ネモフィラの丘」でしょう。英語で「baby blue eyes」と呼ばれる小さな可愛らしい花が約450万本咲き、ライトブルーの絨毯のようだと言われています。このネモフィラの丘を目的とした入園者数が増えた理由の一つは、自然を楽しむというレジャートレンド。山登り、植物園めぐり、紅葉狩りなど、自然に関するレジャーを楽しむ人の割合は近年増えています。そんな中で美しい青い絨毯の光景は例に漏れず注目のスポットとなっていきました。
更にその話題に火をつけたのが『死ぬまでに行きたい!世界の絶景』です。この書籍は数多くのTV、雑誌で紹介され、Amazon総合ランキングでも1位を獲得した人気書籍で、既にご存知の方も多いでしょう。ひたち海浜公園は、2013年夏に発刊された本書籍に取り上げられ「世界の絶景ランキング11位」となった事で認知度がグッと上がりました。その影響もあってか2014年入園者数は177万名を超え過去最高となったそうです。
近くの観光スポットも集客のポイント
(出典:利用者状況|国営常陸海浜公園事務所)
都心からひたち海浜公園に電車で行くためには、JR線からひたちなか海浜鉄道湊線に乗換えをしたり、その後運行本数の少ないバスを利用しなくてはなりません。車でも2時間はかかりますので、冒頭でも触れたとおり交通の便は決して良くありません。訪れる観光客としては、時間をかけた分楽しみたいのは当然ですね。そこでポイントとなるのが周辺の観光スポットです。
ひたち海浜公園は水族館やアウトレットのある大洗が近くにあります。大洗は釣り、潮干狩り、海水浴と海のレジャーがどの季節も楽しめるスポットとしても有名。疲れを癒す温泉スポットがあるのも魅力的です。また、ひたち海浜公園の最寄り駅、阿字ヶ浦の隣の那珂湊(なかみなと)は、北関東で非常に有名な魚市場があります。東日本大震災の時はこの地も恐怖に見舞われましたが、今は活気あふれる人気の場所。地元で捕れた魚介類から、全国の新鮮な海産物までが新鮮なまま手軽に購入できるため、飲食店からも、周辺のお母さん達からも人気があります。ひたち海浜公園に訪れたついでに周辺まで足を延ばせば充実した時間が一日中楽しめる。そう考えると、少し時間をかけてでも行きたい気持ちが強くなりますね。
地道な努力の積み重ねが大切
忘れてはいけないのは「国営ひたち海浜公園」や地元の努力です。地道ではありますが、公園からはその都度、花の見ごろ情報、イベント情報をプレスリリースで出しています。また、公園を無料で開放したり、子供たちのダンスを披露するイベントを行ったりと来客数を増やす施策を季節ごとに開催。湊線はローカルな線ですが、その特徴を生かしてスタンプラリーを行う日は、湊線の一日フリー切符を出すなどしており、各駅は親子の行列ができています。小さい努力が積み重なって、地元の魅力が少しずつ浮き出されている様子は、観光客にとってもメディアにとっても印象が良いでしょう。
「国営ひたち海浜公園」の来園者数が伸びている理由は、ここに挙げただけではありません。多くの要素があって、この地に人が集まっているのだと思います。ただ、このような都心からアクセスが悪い場所でも人気スポットとなりうるという点で学ぶ事が多いので、ぜひ参考にしてください。
最後に、近年「ネモフィラの丘」に観光客が増えた事で一部の花が荒らされ柵や看板が設置されました。景観を損ねるため、公園側は頭を悩ませているそうです。その土地、その時の楽しみ方は人それぞれですが、自分勝手にふるまって良いわけではありません。自然の事、他の人の事をきちんと考えてマナーを守って楽しんでいただけたらと思います。
(執筆・丸山夏名美)