【 ペライチ × ValuePress! 】まずは1枚でサービスをまとめよう
2015年4月よりValuePress!でスタートした「Value Apps」では、「誰でも、簡単に」というコンセプトのもと、協力関係を結んだ外部パートナーを紹介。今回は、1枚のWebページ作成サービス「ペライチ」を立ち上げた株式会社ホットスタートアップの橋田一秀社長にインタビュー。サービス誕生の背景や今後の展望について伺いました(聞き手:当社代表 土屋)。
誰でも簡単に作れるホームページサービスがなかった
QQ. まずは、1枚のWEBページを作成する「ペライチ」というサービスを作ろうと思ったきっかけからお伺いできればと。
前提として、インターネットが普及して20年くらい経つ割に、ホームページって未だに作るのが大変だなという印象がありました。僕の周りの人たちもホームページ作りの大変さに困っていたんです。
海外だと簡単にホームページを作れるサービスはあるのですが、日本にはまだない。もちろん「ホームページ・ビルダー」や「Jimdo」や「Wix」は素晴らしいプロダクトではありますが、「誰でも、簡単に」作れるかと聞かれたら、そうではない。僕の知り合いたちにも勧めてみましたが、難しくて自分では作れないと。そこで、もっと簡単に作れないのか、理想をいえばマイクロソフトのパワーポイントくらい直感的に作れないのかと考え始めたのがきっかけでした。
複数ページにわたる従来型のホームページを作るのは敷居が高い。でも、一番最初はそんなに仰々しいものを作らなくていいと思うんです。まずは一枚で自分の活動、サービスをまとめてみようよ。もっと伝えたいことや使いたい機能が増えてきたら、徐々にページを増やせばいいじゃないかと。
Q確かに。1枚でわかりやすく伝えられないことは、ページを増やしても伝わりませんよね。
システムと人力を組合わせて良いサービスを作る
QQ. 前職は4年ほど株式会社うるるでエンジニアをしていらしたとのこと。同社は、シュフティなど、基本的にWebにあまり詳しくない方をターゲットにしたWebサービスを作られていますよね。うるる社での経験も、ペライチのサービス作りに生きているのでしょうか。
うるる時代に得たもので、今のサービスにフィードバックされているものが2つあると思っています。ひとつ目は、当時、入札情報速達サービス「NJSS」の開発に携わっていたのですが、ユーザーさん側の決済権者がいわゆる「おっちゃん」みたいな方たちで、ITリテラシーにあまり詳しくない方が多かったんです。営業担当についていって、彼らにサービス説明をして口説くときに、どういう風に説明したらわかりやすいか、どのようなサイトならわかりやすいかを考え抜いていました。その経験が今、どなたでも簡単に使っていただける「ペライチ」のサービスに活かされています。
もう1点は、うるるのサービスは、シュフティに代表されるように、「人力で解決すること」と「システムで解決すること」を一緒にやっているものが多かったんです。シュフティのワーカーの方たちにお仕事をお願いして情報収集してもらうのと同時に、自動でサイトの情報を収集するクローラーとかを作ってたんですよ。人力とシステムをうまくハイブリッドさせることによって、いいサービスになってくる。まさにこれが今、僕らがペライチでやりたいことなんです。
法人のサービスページから俳優のオフィシャルサイトまで
QQ. 企画の発案からサービス開始まではどのように進んだのでしょうか。
企画発案は約2年前でしたが、本格的に考えだしたのは約1年前。最初の頃はどういうコンセプトがいいか考えるところからでした。今のコンセプトになる前は、アプリ開発者向けにアプリ紹介のランディングページを作れますよ、というサービスだったんです。でもアプリを開発できる人たちは、時間さえあればランディングページは作れるわけで。もっと敷居を低く、と考えていったところ、今の形に落ち着きました。
2014年12月から本格的に開発を開始。プレモニターを募集したりもしましたね。ECサイトの運営者さんは、売上アップのためのランディングページとして、ペライチを使うんじゃないかという仮説を立てて、「BASE」や「STORES.jp」のドメインをひたすらツイッターで検索して、「ペライチでページを作らせてください」というメンションをばんばん送って(笑)。これが意外と反応があって、3割くらいの人がメンションを返してくれました。そのうち半分の人たちから「ページを作って欲しい」と言っていただけたので、商品説明などの情報をいただいて私たちがペライチを使ってページを作成し、それに対してフィードバックをいただきました。
サービスリリース直前の1カ月半は、毎日のように誰かにオフィスに来てもらってユーザーテストをしていましたね。ユーザーテストをすることで、細かい使い勝手が改善されていきました。想定外の使い方をされることがあって、意外なところのボタンをクリックされたり、気付いてほしいボタンに気付いてもらえなかったり。改善を重ねて、2015年4月21日にリリースしました。
QQ. 現在、どのような方がペライチを使っているのでしょうか。
本当に様々ですが、印象に残っているものに、株式会社worth style homeさんが作成された「住まいの福利厚生サービスHOMEBASE」のページがあります。
どういうサービスかというと、企業がここに無料登録しておくと、社員が転勤するとき、転勤先での住居探しを全部代行してくれるというものです。たとえば飲食店のチェーンとかで働いていると、10日後に地方に赴任するようなケースがあります。物件探しをする時間なんてないですよね。そこで株式会社worth style homeが社員に住居の希望をヒアリングして、手配までしてくれるというサービスです。その内容が、一枚に非常にわかりやすくまとめられているんです。使いたいと思いました(笑)。僕がこれだけ説明できているということは、それだけ時間をかけてペライチで作ってくださったのだなと。
QQ. 法人の利用が増えると、有料プランの利用者も増えるでしょうし、しっかりビジネスとして回っていきますね。
そうですね。もうひとつ印象に残っている例でいうと、俳優の佐伯恵太さん。京都大学の大学院を卒業後、ボーイズシンクロチームに所属して全国各地で公演を行い、現在は俳優・タレントとして活動している方なのですが、ペライチのクローズドベータ版が始まった瞬間に問合せをいただいて、ご利用いただいています。頻繁に更新されていて、Facebookで「オフィシャルサイトです」と紹介してくださっているのを見たときは嬉しかったですね。
ビジネスモデルを決めるのはユーザー
QQ. ペライチは今後どのように展開されていくのでしょうか。
2015年6月上旬から、有料プランを実装したいと考えています。有料プランでは、お客様が取得した独自ドメインをペライチで設定したページに当てることが出来たり、HTMLコードの埋め込み機能によってお客様ができることが増える。たとえば決済ボタンを埋め込めたりと、いろいろ考え中です。
QQ. よりわかりやすく、より簡単に使えるよう改善されていくのかと思いますが、具体的にはどのような施策をお考えですか。
サイトを作るときの課題は大きくは2つあって、ひとつはサーバ設定とかプログラムなどの技術的な課題。これはペライチでは考えずに済みますのでクリアです。もうひとつがストーリー作り。ページの閲覧者に伝えたい全体的なストーリーや、個々のコンテンツをつくるのに必要な能力は、主にライティング能力と文章に合った画像の選定/作成能力ですね。ここを解決すれば、良質なページが作れる可能性が高くなる。なので今後は、赤ペン先生のようにライティング支援のサービスとくっつけたり、PIXTA(ピクスタ)さんなどと連携した写真サービスを提供したりすることを考えています。
現在はテンプレートがあって、「ここにサービス説明を入れて」とか、「ユーザーボイスを入れて」というのを選んで上から順に入れていくだけで、わかりやすいページになるようデザインされているのですが、今後は各ブロックごとに細かくサポートしていければなと。「ここには何を入れたらいいよ」とポップアップが出て教えてくれるとか。もしくは対話式UIで、質問に応えていくだけでページができるようにもできればなと。人力とシステムと他社サービスをうまく組合せた、ユーザーにとって使いやすいサービスを提供していければと思っています。
まだ何がベストなのかは模索中ですが、ユーザーが思い入れを持ってくれるようなサービスにしたいですね。今、ユーザーさんからの質問には、全部僕がチャットメッセージで対応しているんです。チャットには基本的に即レスしています。この前夜中の3時に来たチャットに即レスしたら感動されました(笑)。
もちろん他にやらなきゃいけないことは山ほどあるんですけど、今はとにかくユーザーの方を向いていきたいなと。そうでないと本当にいいサービスはできないし、ユーザーがビジネスモデルを決めるとも思っているので。熱狂的なファンが5人いれば、彼らがサービスを広めてくれて、自然と拡大していくと思います。現在のフェーズでは、ユーザーととことん向き合うことを、一番大事にしたいと思っています。なので今は毎日のように、ユーザーさんが生み出したページを隅から隅まで見ています。
(取材日:2015年5月11日/聞き手:土屋 明子・撮影:首藤 達広)
Q橋田 一秀 氏 プロフィール
株式会社ホットスタートアップ 代表取締役
1983年東京都生まれ。東京理科大学工学部電気工学科修了後、株式会社NTTデータに就職。1年半で退職し、株式会社うるるでほぼ未経験ながらエンジニアとして就職。4年3ヶ月の勤務後、株式会社ホットスタートアップを創業。