接客も商品企画も。現場と共に歩む広報スタイル
100業態100店舗を突破して尚進化し続ける飲食経営会社「ダイヤモンドダイニング」。亀田泰子さんは、店舗広報という裏方に留まらず、メニュー作りやメニューブックの作成にも広報の視点を生かし売上に貢献する。
100業態100店舗突破後のテコ入れが次の課題
Qダイヤモンドダイニングといえば、多種多様な飲食店の展開ですね。現在の広報活動を教えてください
起業当初の目標だった100業態100店舗を達成したので、現在は各店舗のブラッシュアップや売上の強化に努めています。特徴があって広報しやすいお店は従来通り個性を強調し、差別化しにくいお店、たとえば和食店では季節や旬の素材を取り入れたメニューでアピールしています。最近3店舗オープンした秋田料理の店では、きりたんぽ鍋に加えて冬場が旬のハタハタ料理をPRしています。
今までは、現場のアイデアを大事にしようという姿勢から、商品企画は店舗のオリジナリティーを大切にしてきました。ですが、最近では商品企画会議に現場の店長や板長、営業事業部長の他、広報部や販促部のスタッフも参加するようになりました。店舗ごとにPRしやすいように、売り出す前からPRを見据えて売りやすい商品づくりに励んでいます。
Q御社はM&Aにも積極的ですよね
現在、ダイヤモンドダイニンググループ全体で、150業態200店舗ほどになります。私は、平均単価6000円程の高級店を展開するシークレットテーブルや、低価格帯の焼鳥店などを展開するゴールデンマジックといった、関連会社の広報も兼任しています。
Q最近開始した「宴会コンシェルジュ」は、どういったサービスですか?
「宴会コンシェルジュ」は、宴会の幹事さんから人数や予算、お店の雰囲気などのご要望をお聞きして、ダイヤモンドダイニンググループ150業態200店舗の中から、幹事さんのご要望に合致したお店やプランを提案するサービスです。店舗でご予約を受けるのと違う点は、もし希望のお店が満席でも、「個室のお店を探している」「もつ鍋が食べたい」「新宿のお店を探している」といったお客様のご要望に応じて、他のお店をご案内させていただくことができます。
宴会コンシェルジュの受け付けは、毎日8時から23時まで。社内に自前のコールセンターを設置して、今は私も所属するマーケティング部で対応しています。店舗でご予約を承るのと同じように、電話に出てお客様とやり取りをしています。
Q直に顧客と接することで、見えてくるものも変わってきますよね
広報の点でいえば、お店に対するお客様の関心や反応を直接聞けたり、客層を肌で感じることができたのが大きいです。ただ、一番の収穫は、店舗と本部が一緒の気持ちになって「お客様を歓待する」という企業目標を再確認できたことですね。
簡潔なまとめ、メニューブックのコピー。記者を「もてなす」取材対応
Q亀田さんが広報に就任した経緯を教えてください
もともと、小学館の『DIME』という情報誌でライターをしていました。決められたテーマに沿って、取材・執筆するのが当時の私の仕事。特に強みというか、得意とする専門分野もなかったので、ライター経験を生かせる他の職業がないかと探していたところ、ダイヤモンドダイニングの募集に目が留まったのです。
今はもうなくなってしまったのですが、未来のファミレスという触れ込みの「キャンディ」に、当時のデスクに連れていってもらったのが印象に残っています。ウェイトレスのファッションが、ホットパンツに水玉のシャツという奇抜なもので、当時から面白いことをやっている会社と話題になっていました。
Q記者の気持ちがわかるというのも大きいのではないですか?
そうかもしれません。今は新店オープンなどで取材に来ていただいたライターさんに、お店の特徴を簡潔にまとめた説明文を渡しています。また、わざわざノートに書き写さなくてもすむように、メニューブックをコピーして配布したり、必ず試食してもらったり。食べていただかないと、記事も書きにくいでしょうから。
経費と時間がかかることは承知していますが、自分がライターであった時を思い出して、どうすれば気持ちよく取材をしていただけるかを考えるようにしています。ときには料理長にも協力してもらって、できるだけ記者さんを「もてなす」対応を心がけています。
Q各店舗のメニューのキャッチなどもお書きになるそうですね
広報の視点を入れながら、メニューやコンセプトの文章も私が書いています。たとえば、秋田料理の3店舗(銀座INZ、浜松町、田町)のハタハタフェア開催時は、こんなメニューの紹介文を書きました。
『ぶりこ入り生ハタハタ 塩焼き』:
背側と腹側を挟んで全体をほぐし、尻尾を切って頭を引っ張ると骨がするするっと取れます。後は豪快にまるかじり!これぞ地元流。
『生ハタハタ 石焼鍋』:
杉製の桶にハタハタと野菜、それに真っ赤に焼けた石を入れ調理する豪快な郷土料理。使われる石は、5 万年前の噴火でできた、男鹿の石英安山岩質溶結凝灰岩(せきえいあんざんがんしつようけつぎょうかいがん)を使用。石を入れた瞬間、出汁が激しく沸騰する様子は、まさに宴会の盛り上げ役にぴったり!
過去の取材情報をデータベース化してきたい
Q今までのご経験から、広報に必要なスキルは何だと思いますか?
私が大事にしているのは、新聞や雑誌、テレビなどから常に情報を収集することと、トレンドや流行りをキャッチして現場に伝えることの2つです。たとえば塩麹がトレンドの兆しになってきた頃に、塩麹鍋を提案。他にも「豆乳チーズ鍋」を企画しました。料理長と相談して、女性にウケる味や見た目を研究して一緒に創っていきました。「タイミングを逃さない」ことが、ヒットの秘訣だと思います。
広報のスキルというのは、正解がないものですから、コミュニケーションの充実に加えて、現場と一緒に創っていくという姿勢が特に大事ですね。
Q最後に、会社の目標と個人の目標それぞれを教えてください。
会社の目標としては、まずコールセンターを充実させて、幹事さんにもっと活用してもらえる環境を作っていきたいですね。そして、1店舗ご利用いただいたお客様に、「他の店舗も使ってみたい」、「ダイヤモンドダイニングのお店だったら安心」と思ってもらえるよう、各店舗の商品や接客といった基本をしっかり磨いていきたいと思います。グループ200店舗を利用してもらうベース作りです。
個人の目標としては、これまでの取材のストックを元に情報のデータベース化を図り、より一層「タイミングを逃さない」ことを心がけたいですね。数値化しにくいことでも、コツコツと積み重ねてやっていきたいです。
亀田 泰子氏
- 企業名
- 株式会社ダイヤモンドダイニング
- 部署・役職
- マーケティング本部 広報部 課長
- 設立
- 1996-03-01
- 所在地
- 東京都港区西新橋3-7-1 ランディック第2新橋ビル2階
- プロフィール
- 大学卒業後、PR会社に入社。その後、スノーボードの専門誌、男性向け情報誌『DIME』の記者を経て、2006年にダイヤモンドダイニング入社。2009年より広報課長を務める。