ステージを見据えた戦略を。最年少上場社長を支える広報・IR
この10月1日、求人サイト「ジョブセンス」などを運営するリブセンスが、東京証券取引所第一部に上場した。村上太一社長は当時25歳、史上最年少での一部上場となる。この成長著しい同社で広報・IRを一手に引き受けているのが、経営管理本部の真鍋順子さんだ。
広報とIRを一人で担当できるのが魅力だった
Q2011年12月のマザーズ上場からわずか10カ月での昇格ですが、広報・IRご担当として、さぞ多忙な日々を送られているのでは?
おかげさまで、村上が史上最年少の一部上場記録を塗り替えることになり、様々なメディアや団体などから取材、講演のご依頼、そして、企業からの商談を頂いています。リブセンスに入社してまだ1年半ほどですが、広報・IR担当としては、おそらく通常の何年分もの経験をここで一気にできたのではないかと思います。
Q真鍋さんはもともとIRがご専門だったのですよね?こちらで広報を担当するに至った経緯をお聞かせください
昨年の6月、IPO(新規株式公開)の準備を進めているタイミングで入社しました。IR担当者として、IPOを経験できるのは一生に一度あるかないかのまたとないチャンス。得がたい経験ができることがまず魅力でした。
それからもうひとつ、ここでなら、広報とIRの両方を同時に担当できることも大きかった。組織が大きくなるとどうしても、広報とIRとを分けることになりますよね。私自身、前職ではIRだけを担当していました。そのなかで、一人の人間が広報とIRの両方を見通すことができれば、投資家だけではなく幅広いステークホルダーに対して、もっと統一性のある情報提供ができるのに、という思いが強くなっていたのです。
広報とIRの相乗効果で、会社そのものの価値を上げていくことに取り組んでみたい、それが実現できるのではと考えて入社を決めました。
「最年少社長がやっている会社」からの脱皮が課題
Q業務内容について教えてください
広報としてはメディア対応のすべて、IRとしては決算資料をつくることに始まり、やはりIRのすべてを行っています。
当社は、成功報酬型のビジネスモデルが大きな特徴ですが、その最大の強みは自前の技術力。求人サイトや不動産情報サイトへのWebからの集客は、SEO(検索エンジン最適化)を中心としたWebマーケティング技術を駆使して、それぞれのサービス担当が行っています。
ですので、私のやるべきは、まず、会社を様々なメディアで取り上げてもらい会社名をアピールすること。アーリーステージにある当社にとっては、とにかく、会社名に慣れ親しんで頂くことが先決ですから。
Qアーリーステージとおっしゃいましたが、次なるステージでの広報戦略についてはどうお考えですか?
基本的に、現段階で当社に取材依頼を頂く理由は、「史上最年少社長だから」なんです。記事の中味は、村上個人にフォーカスをあてた創業ストーリーがほとんどですし、記者さんの興味も、どんな大学生だったか、子どものころどういう育てられ方をしたか、といったことが中心。
今は、村上という存在を知って頂き、応援してくださる方を増やしていくべき時期ですから、それでもかまわないと思っています。しかし、「最年少社長がやっている会社」として注目されている現状から、脱皮するタイミングは少しずつ近づいています。
次のステージでは、当然サービス内容にフォーカスをあてた広報活動をしていくことが欠かせません。ネクストステージへのタイミングを計りつつ、いかにサービスの特徴を伝える広報活動に切り替えていくかが課題だと考えています。
Q真鍋さんは、大きな会社からベンチャー企業に移られましたが、仕事内容についてお感じになっていることは?
何もないところから創り上げることが好きなので、ベンチャーに向いていたなあと自分でも思っています。前例がない分、自由度が高いですし、会社の規模が小さいために会社全体に関わることも容易です。
広報の仕事もIRの仕事も、唯一の正解があるものではありません。正解がないなかで、知恵を絞って、会社のステージに合わせたメッセージをつくっていく、発信していく。そんな毎日にとても満足しています。
大企業の広報の魅力というものはもちろんありますが、どうしても任せてもらえる範囲が大きな仕事の一部分に限定されてしまいがちだったので、自分の選んだ道に間違いはなかったと確信しています。
経営陣とディスカッションをし変わらぬ会社の核を探る
Qその一方で、ベンチャー企業の広報活動の難しさとは?
若い会社ですし経営陣も若いので、方向性がまだ完全に定めきれていない部分があります。入社当初、広報・IR担当としては、経営理念の「幸せから生まれる幸せ」だけでなく、ブランディングやコーポレートアイデンティティ的なところで、軸を定めておきたいという気持ちを強く持っていました。
ところが、経営陣はまだ24~25歳。自分たちはこういう会社である、と明確にしたくないという思いが強かったんです。まだまだ可能性があるのだから、ひとつのところにとどまりたくない。その気持ちは、私もたいへんよくわかりました。
しかし、広報活動をするとなったとき、さあどうしたものか、と。軸がなければメッセージがブレてしまい、どんな会社なのかがうまく伝わりません。結局、経営陣と何度もディスカッションを重ね、強みは何か、何がしたいのか、というところを明らかにしていき、そのなかでメッセージ「文化となるWebサービスを、つくる。」の方向性を定めていきました。
今後どうなっていくかはわからない。けれども何が起ころうとも変わらない核のようなものがある。そこには辿り着けたのではないかと思います。
Q今後について思うところを
ベンチャーですので、すごくいい時もありますが、今後どこかで壁にぶつかることもあるかと思います。そんな時にも公正な立場で情報を提供し続けたい。いい時には発信するけれど、悪いときは口をつぐんでしまう、ということだけはしたくないと考えています。
また、これだけ成長していますから、伸びがちょっと鈍化しただけでも、もう終わったんじゃないか、といった言い方も今後はおそらくされるでしょう。会社は生き物だと思いますが、同じ生き物の中でも、当社はまだまだ小さいだけに動きが激しい。良くも悪くも、会社がどうなっていくかはまだ誰にもわかりません。だからこそ、公正な立場で基本的な活動を徹底し続けることで、着実に信頼を得られる広報・IR担当でありたいと思います。
成長時期に居合わせたからこそできる広報・IR活動というものもきっとあるはず。ワクワクしながらそれを追求していきたいと思いますね。
真鍋 順子氏
- 企業名
- 株式会社リブセンス
- 部署・役職
- 経営管理本部
- 設立
- 2006-02-08
- 所在地
- 東京都渋谷区南平台町16番28号 グラスシティ渋谷2F
- プロフィール
- 経営管理本部 広報IR担当。
大学卒業後、大手企業でのIR担当を経て2011年6月、広報・IR担当としてリブセンスに入社。