「伝えたい」思いが原動力。ユーザーの生の声をヒントに「聞き入る文化」を広げ、社会をより豊かにする広報
日本最大規模のオーディオブック配信サービス「FeBe(フィービー)」を運営し、約7000本のコンテンツを所有するオトバンク。同社の広報部員・中川真実さんが手探りで見つけた仕事術とは?
リアルな生活シーンの中にサービスを溶け込ませる
Q仕事の内容を教えてください
プレスリリースなどによる社外への情報発信、業界や関連ビジネスに関する情報収集、取材への対応、社内への情報提供といった、いわゆる広報の仕事だけでなく、広告出稿時の対応など、一般的には広告・宣伝の部署が行う仕事も含め幅広く担当しています。
私は入社直後に広報に配属されて、今年で新卒3年目なのですが、それまでは広報の仕事はすべて社長が一手に行っている状況でした。最初は当然手探りでしたし、今もトライアンドエラーを繰り返しながら、日々学習することばかりです。
Q仕事をしていく上で難しいと思うのはどんな点ですか?どのような工夫をしていますか?
当社は、2004年創業のまだ若い会社で知名度は決して高くなく、中心事業のオーディオブックそのものを知らない人も少なくありません。普通に情報を提供するだけでは、恐らく「オトバンクって何の会社?」「オーディオブックって何?」という反応が続出すると思います。
だから、コミュニケーションにあたっては「相手は当社のサービスを知らない」という前提で、具体的な分かりやすいシーンを示しながら、こんなシーンでも使えますよと訴求することを常に心がけています。
その際に欠かせないのは、お客様のニーズをしっかりとらえておくこと。具体的でリアルな生活シーンの中に、当社のサービスを溶け込ませてアピールしていくことがなによりも大切だと考えています。
ビジネスパーソン100人インタビューで生の声に耳を傾ける大切さを知る
Q顧客のリアルな生活をつかむために、どんなことをしているのですか?
今年の5月には、後輩と2人で日比谷公園へ出かけて、1週間がかりでビジネスパーソン100人へのインタビューを敢行しました。実はこれ、創業時に代表の上田が同じようなことを行っており、原点回帰の意味も込めて実施に至ったものなんです。
何歳くらいの方で、普段はいつどこでどのくらい読書をしているか。耳の隙間時間がどんなときに生まれるのか。そのとき何をしたいか‥‥。これらについて解答して頂いたあとに、実際にオーディオブックを何十秒か聴いて頂き、感想やご意見をうかがいました。
サービスに触れたときの生の反応が分かるだけでなく、予想もしていなかった回答も随分あり、直接声を拾うことの効果を改めて突きつけられた感じです。
Q予想もしていなかった回答とは?
オーディオブックのユーザーは男性が多く、シーンとしては通勤時間が多いのですが、「妻に教えてあげたい」「妻が喜びそうなサービスだ」という回答がいくつもあったのです。
育児や家事に追われて好きな読書ができない方へ「洗濯をしているときでも掃除機をかけているときでも、聴くことはできます」という提案につなげられそうだと思いました。インタビューにはとても手間がかかりましたが、今後につながる発見があったと思っています。
Qその中から見えてきた課題は?
私たちがこれまで想定してきた以上に使用シーンは広がっており、男性から女性への口コミが期待できることもわかりました。また、女性へのプレゼント需要を意識した展開などもあるかもしれない‥‥と考えると、これまでのターゲットに向けたシーン提案型のコミュニケーションに加え、もっと様々な取り組みが必要だと感じました。
例えば、広報、広告、口コミなどを連動させてコミュニケーションに厚みを持たせ、大きなうねりを引き出せないか。サービスの認知度を上げるだけではなく、オーディオブックという文化を盛り上げていくことを視野にいれたコミュニケーションが必要なのではないかと感じています。
ワクワクするような情報を発信し、たくさんの人を幸せにしたい
Q御社は企業理念のひとつとして「『聞き入る文化』の創造」を掲げていますが、これはどのような意味でしょうか?
音声コンテンツの本当の良さを伝え、語られる内容にじっくりと耳を傾けて楽しむ文化、つまり「聞き入る文化」を広げ、日本をさらに豊かな社会にしていくことが当社の願いだということです。
例えば、当社が提供している「朗読少女」は宮沢賢治や芥川龍之介などの名作を、少女のキャラクターが朗読するiPhoneアプリなのですが、これは先日100万ダウンロードを突破し、ありがたいことに幅広い世代の方から高い評価を頂いています。
若い世代の読書離れが進む中、ゲーム的な要素を持ちつつ、楽しみながら本に触れられるこのようなサービスの存在は、文化を豊かなものにしていくうえで大きな力を持つと思います。
読書には、人生を豊かにするという効用がありますが、読書スタイルの新しい選択肢のひとつとして、「本を耳から読む」ことが位置づけられ、読書の楽しみ方が広がることにつながればこんなにうれしいことはありません。
Q広報担当としてのご自身の強みはどんなところにあると思いますか?
弊社の企業理念は、今お話しした「聞き入る文化の創造」と「究極のバリアフリーの達成」「出版業界の振興」の3つです。私が就職活動にあたって当社を希望したのも、この3つの企業理念に惹かれたから。
広報担当が、会社と会社の理念に深く賛同し、大好きであることの意義は大きいと思います。自分が好きなものだから、少しでも多くの人に好きになってもらいたい。そんな気持ちでまっすぐ突き進めることを、私の強みに変えていけたらいいなと思いますね。
Q広報担当に必要なスキルとはなんでしょうか?
知ったようなことを申し上げられる立場ではないのですが、第一に自分の伝えたいモノに対する思い。それだけはいつも絶やしてはならないと思います。
あとは世の中がどういったものを求めているのかを、常に受信し続ける情報感度の高さ。そして、それを随時アップデートし続けることが苦にならないことでしょうか。
とはいえ、スキルは、頑張ればあとからいくらでも付けられるものでもあると思うので、思いさえあれば、道は開ける気がします。
Q今後挑戦したいことは?
ワクワクしてもらえるような情報を世の中に向けて発信し、おもしろそうなことをやっているな、おもしろそうなものがあるな、といった出会いを創出することで、たくさんの人に幸せを感じて頂けたらとても嬉しいです。
中川 真実氏
- 企業名
- 株式会社オトバンク
- 部署・役職
- 経営企画室 広報部 チームリーダー
- 設立
- 2004-12-28
- 所在地
- 東京都千代田区九段北4-3-31 7・8階
- プロフィール
- 経営企画室 広報部 チームリーダー。
大学の福祉系学科を卒業後、2010年4月、株式会社オトバンクに入社。入社時から同社の広報を担当し、現在に至る。