企業進出激増のミャンマーにおけるビジネスパーソンを取巻くメンタルヘルス環境の新傾向を調査報告
ミャンマーにおけるビジネスパーソンはインフラ関連・現地人の扱い・感染症など多彩なストレス要因にさらされていることが判明、さらに、ストレス要因としての「日本の本社」の萌芽がみられました。また、将来のアルコール問題発生のリスクが見通せる結果となりました。渡航医学の調査研究をおこなう関西福祉大学 勝田吉彰研究室(兵庫県赤穂市)では、ミャンマー駐在ビジネスパーソンを取巻くメンタルヘルス環境について継続的に調査しております。代表の勝田(教授)は元外務省医務官としてセネガル・フランス・スーダン・中国にて計12年間在勤し、海外在留邦人の健康問題やメンタルヘルスを研究テーマにしております。(科研費研究 15K09877)
■調査結果のポイント
(1) ミャンマー駐在者のストレス要因は通信インフラ・生活インフラ・交通インフラ
(2) 現地人(ミャンマー人)との付き合い方も困惑要因
(3) 余暇の過ごし方からアルコール問題の発生余地がうかがえる
(4) 感染症の存在がストレス要因に(狂犬病・デング熱・肝炎)
(1) ミャンマー駐在者のストレス要因は通信インフラ・生活インフラ・交通インフラ
ストレスを感じる要因としてネット回線の不備・居住用家屋の不足・急激に悪化した渋滞とそれに代わる公共交通機関の不足が多数を占めました。さらに、数は多くないながらストレス要因として「日本の本社」の萌芽がみられています。
(2) 現地人(ミャンマー人)との付き合い方も困惑要因
経済発展とともに変化するミャンマー人気質。突然家賃の倍増を要求され交渉余地なく退去を余儀なくされるなど、従来の書籍に書かれている「純朴で親日なミャンマー人」と異なるイメージに当惑するケースが見られています。また、アルコールが入るとともに部下のミャンマー人どうしが投石を始めた、受傷に至る喧嘩になった等、ミャンマー人気質に関する情報が不足しているゆえの当惑が認められます。
(3) 余暇の過ごし方からアルコール問題の発生余地がうかがえる
余暇の過ごし方はインターネットが首位ながら、飲酒(複数で飲み)>カラオケ=飲酒(ひとり酒)とアルコール関連が首位を占めました。これは本研究者が前職時代、スーダン・セネガル・中国で目撃したのと同様現象で、将来のアルコール依存症等メンタル問題や健康問題発生が懸念されます。これは現地外国人向け医療機関の受診状況からも推測されるところです。
(4) 感染症の存在がストレス要因に(狂犬病・デング熱・肝炎)
市街中心地における大量の野良犬闊歩に可視化される狂犬病、今年前半で1万例越えのデング熱がストレス要因として認識されていますが、実際には他に消化器感染症(赤痢アメーバ・ジアルジア)や寄生虫疾患(顎口虫など)が問題化しています。
■考察
チャイナ・プラス・ワンの潮流に乗り官民あげての進出ブームにあるミャンマーで、日本人ビジネスパーソンを取り巻く環境には、これまで国内で報道されてこなかったストレス要因があります。駐在員や出張者を送り出す日本企業にとって、認識し、支援すべき課題も浮き出ており、啓発が望まれます。
なお、当研究室では今後5年間にわたり継続的調査をおこない、将来予想される質的変化について継続的に論文・学会発表と並行して一般社会への情報発信に取り組んでゆきます。
また、学術調査以外に現地で得た情報や感覚をブログにて随時発信しておりますのであわせてご参照ください。 ミャンマーよもやま情報局(http://www.myanmarinfo.jp/)
■調査概要
調査方法 :アンケート調査および聞取り調査
調査期間 :2014~15年2月(学術論文として掲載 日本渡航医学会誌)
回答者の属性 :日本企業駐在員・外国企業駐在員・自営業者。
学術論文:ミャンマー邦人社会2014年現状と課題~メンタルヘルスを中心に~
日本渡航医学会誌 vol8(1) 34-37(査読付)
■研究室概要
研究室 : 関西福祉大学 勝田吉彰研究室
代表者 : 勝田吉彰 教授/社会福祉学研究科長
(外務省医務官OB、スーダン・セネガル・フランス・中国に在勤)
所在地 : 〒678-0255 兵庫県赤穂市新田380-3
研究領域 :渡航医学(国境を越える感染症・医療事情)
多文化間精神医学(国境を越えるメンタルヘルス)
URL :ミャンマーよもやま情報局(http://www.myanmarinfo.jp/)
新型インフルエンザ・ウォッチング日記~渡航医学のブログ~(http://blog.goo.ne.jp/tabibito12)
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企業情報
企業名 | 関西福祉大学 勝田吉彰研究室 |
---|---|
代表者名 | 勝田 吉彰 |
業種 | 医療・健康 |
コラム
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