連合調べ 育休取得者の20.8%が「パタニティ・ハラスメント(パタハラ)を受けた経験あり」
日本労働組合総連合会(略称:連合、所在地:東京都千代田区、会長:神津 里季生)は、男性の家事や育児参加に関する意識や実態を把握するため、「男性の家事・育児参加に関する実態調査」を2019年9月9日~9月10日の2日間でインターネットリサーチにより実施し、同居している子どもがいる全国の25歳~49歳の有職男性1,000名の有効サンプルを集計しました。(調査協力機関:ネットエイジア株式会社)
[調査結果]
≪労働時間と年次有給休暇について≫
◆働く父親の週労働時間 平均は47時間 「60時間以上」働く父親は8人に1人
同居している子どもがいる全国の25歳~49歳の有職男性(パート・アルバイトを除いた被用者)1,000名(全回答者)に、1週間の合計労働時間を聞いたところ、「40時間~50時間未満」(57.7%)に回答が集まり、平均は46.9時間となりました。「60時間以上」(11.9%)という回答もみられ、働く父親の8人に1人が、1週間に60時間以上働いている実態が明らかになりました。
次に、年次有給休暇について質問しました。
全回答者(1,000名)に、現在、年次有給休暇が何日付与されているか聞いたところ、「11日~20日」(49.7%)に回答が集まり、平均は20.1日となりました。
年次有給休暇付与日数を把握している人(937名)に、直近1年で、年次有給休暇をどのくらい取得したか聞いたところ、「1日~10日」(55.7%)に回答が集まり、平均は8.9日でした。
◆働く父親の年次有給休暇の平均取得率51.0%
では、取得率はどのくらいなのでしょうか。
年次有給休暇が付与されており、日数を把握している人(894名)について、年次有給休暇の取得率をみると、平均は51.0%でした。また、「100%」は11.4%となっており、働く父親の9割近く(88.6%)が有休を消化しきれていないことがわかりました。
1週間の合計労働時間別に年次有給休暇取得率の平均をみると、40時間未満の人では60.0%、40~50時間未満の人では54.0%、50~60時間未満の人では47.0%、60時間以上の人では40.0%となりました。
≪男性の家事・育児参加について≫
◆働く父親の家事時間 週平均は6.2時間 週に60時間以上働く人では4.8時間
働く父親の家事参加や育児参加の現状は、どのようになっているのでしょうか。
全回答者(1,000名)に、1週間の家事時間を聞いたところ、「2時間~3時間」(21.9%)や「10時間~19時間」(20.9%)、「4時間~5時間」(18.3%)に回答が集まりました。また、「0時間」は4.7%にとどまりました。働く父親の大多数が家事に参加しているようですが、後述の通り(P.7参照)「ゴミを出す」が62.5%となっています。
1週間の合計労働時間別に家事時間をみると、週労働時間が40時間未満の人では「20時間以上」(17.1%)が他の層と比べて高くなりました。週労働時間が60時間以上の人では「2時間~3時間」(26.9%)が高くなり、「0時間」(10.1%)は10人に1人の割合となりました。
1週間の家事時間の平均をみると、6.2時間となりました。
1週間の合計労働時間別に家事時間の平均をみると、週労働時間が長いほど家事時間は短くなる傾向がみられ、40時間未満の人では8.9時間、40~50時間未満の人では6.3時間、50~60時間未満の人では6.0時間、60時間以上の人では4.8時間となりました。
◆働く父親の育児時間 週平均は9.3時間 週に60時間以上働く人では7.1時間
次に、全回答者(1,000名)に、1週間の育児時間を聞いたところ、「10時間~14時間」(20.0%)や「4時間~5時間」(15.1%)に回答が集まりました。
1週間の合計労働時間別に育児時間をみると、週労働時間が40時間未満の人では「20時間~29時間」(17.1%)や「6時間~7時間」(14.6%)が他の層と比べて高くなりました。週労働時間が60時間以上の人では「0時間」(20.2%)が5人に1人の割合となりました。週に60時間以上働いている場合、育児に全く携わっていない人が少なくないようです。
1週間の育児時間の平均をみると、9.3時間となりました。
1週間の合計労働時間別に育児時間の平均をみると、週労働時間が40時間未満の人では11.6時間、40~50時間未満の人では10.0時間、50~60時間未満の人では8.3時間、60時間以上の人では7.1時間でした。家事時間と同様、労働時間の長い人ほど育児時間は短くなる傾向がみられました。長時間労働のために、家事や育児への参加が思うように叶わないという父親は多いのではないでしょうか。
◆仕事がある日に父親が行っている家事 1位「ゴミ出し」62.5%、2位「ゴミまとめ」43.1%
働く父親は、家庭でどのような家事を担当しているのでしょうか。
全回答者(1,000名)に、仕事がある日に行っている家事を聞いたところ、「ゴミを出す」(62.5%)が最も高く、次いで、「ゴミをまとめる」(43.1%)、「夕食の食器洗い」(37.3%)、「お風呂の掃除」(36.1%)、「洗濯物を干す」(33.6%)となりました。父親の出勤前のゴミ出しが日課となっている家庭が多いのではないでしょうか。「夕食の用意」(11.2%)や「お弁当の用意」(7.1%)は低い割合となりました。食事やお弁当の用意を担当している父親は少ないようです。
◆仕事がある日に父親が行っている育児 1位「子どものお風呂」37.0%、2位「子どもの遊び相手」34.6%
また、全回答者(1,000名)に、仕事がある日に行っている育児を聞いたところ、「子どものお風呂」(37.0%)が最も高く、次いで、「子どもの遊び相手」(34.6%)、「子どもを起こす」(32.0%)、「子どもの歯磨き」(24.5%)、「子どもの寝かし付け」(22.5%)となりました。「連絡帳ノートの記入」(4.4%)、「子どものプリント整理・記入」(3.4%)は低い割合でした。園や学校との連絡事項のやりとりには関わっていない父親が多いようです。
◆「仕事と育児の両立が理想」は62.7%も、「実際に両立できている」は30.4%にとどまる
続いて、仕事と育児について、理想と現在の状況を聞きました。
全回答者(1,000名)に、仕事と育児についての理想を聞いたところ、「仕事を優先」は19.1%、「育児を優先」は14.1%、「仕事と育児を両立」は62.7%と、ワークライフバランスを重視したいと考えている人が多数でした。
しかし、仕事と育児についての現在の状況を聞いたところ、「仕事を優先」は56.5%、「育児を優先」は6.8%、「仕事と育児を両立」は30.4%となりました。
理想と現在の状況を比較すると、「仕事を優先」(理想19.1%、現在の状況56.5%)は現在の状況のほうが37.4ポイント高く、「仕事と育児を両立」(理想62.7%、現在の状況30.4%)は理想のほうが32.3ポイント高くなりました。仕事と育児を両立したいと思っていても、実際に両立できている人は少ないようで、理想と現実の間に大きなギャップが存在している結果となりました。
≪男性の育児休業取得について≫
◆父親が育児のために取得した休業・休暇は「年次有給休暇」が最多、育児休業取得率はわずか7.2%
全回答者(1,000名)に、育児のために取得した休業・休暇を聞いたところ、「年次有給休暇」(35.6%)が最も高く、次いで、「配偶者出産休暇」(24.6%)、「振替休日・代替休暇」(11.7%)、「子の看護休暇」(10.0%)、「育児休業」(7.2%)となりました。
また、「育児のために休業・休暇を取得していない」は45.6%でした。半数近くの男性が、育児のために仕事を休んだ経験がないことがわかりました。
有給休暇取得率別に育児休業を取得した人の割合をみると、有給休暇取得率が80%~100%の人では12.6%、60%~80%未満の人では8.0%、40%~60%未満の人では7.0%、20%~40%未満の人では4.8%、0%~20%未満の人では3.0%と、有給休暇取得率が高いほど「育児休業」を取得した人の割合も高くなりました。有給休暇が取得しやすい職場ほど育児休業も取得しやすい傾向にあるようです。
◆育児休業未取得の背景にある意識 「本当は取得したかった」30.2%、「取得するつもりがなかった」69.8%
◆育児休業未取得の理由 1位「代替要員がいない」2位「収入が減る」3位「男性が取得できる雰囲気がない」
なぜ、男性の育児休業取得率は、低い割合にとどまっているのでしょうか。
育児休業を取得していない人(928名)に、育児休業を取得しなかったことの背景にある意識を聞いたところ、「取得したかったが、取得できなかった」は30.2%、「取得するつもりもなく、取得しなかった」は69.8%となりました。
次に、育児休業を取得できなかった理由、または、取得しなかった理由を聞いたところ、「仕事の代替要員がいない」(47.3%)が最も高く、次いで、「収入が減る(所得保障が少ない)」(36.6%)、「男性が取得できる雰囲気が職場にない」(32.2%)、「仕事にブランクができる」(13.9%)、「男性が取得するものではないと思う」(11.3%)となりました。自分の仕事を代わりに担ってくれる人がいないことや、収入面に影響することが、育児休業取得の妨げとなっているようです。
育児休業を取得したかったが、取得できなかった人(280名)の回答をみると、「仕事の代替要員がいない」(63.6%)や「男性が取得できる雰囲気が職場にない」(46.4%)が高くなりました。職場の環境や雰囲気が、育児休業を取得したくてもできない要因となっているケースが多いようです。
また、育児休業を取得するつもりもなく、取得しなかった人(648名)の回答をみると、「仕事にブランクができる」(17.1%)や「男性が取得するものではないと思う」(14.2%)は、取得したかったが、取得できなかった人(それぞれ6.4%、4.6%)と比べて10ポイント前後高くなりました。
◆育児休業の取得日数は平均33日 半数以上が「1週間以下」
◆育児休業を取得して困ったこと 1位「収入が減った」2位「仕事の情報が得られなかった」
◆育休取得者の20.8%が「パタニティ・ハラスメント(パタハラ)を受けた経験あり」
育児休業を取得した人(72名)に、育児休業を何日間取得したか聞いたところ、「5日~7日」(25.0%)や「1日~2日」(18.1%)に回答が集まり、「3日~4日」(12.5%)を合わせた『1週間以下(計)』は55.6%となりました。そのほか、「15日~30日」(9.7%)や「121日以上」(8.3%)といった回答もみられ、平均は32.6日でした。育児休業は期間延長を含めると、最長で2年間取得することができますが、実際には男性は比較的短期間で職場復帰した人が多いようです。
次に、育児休業を取得して困ったことを聞いたところ、「収入が減った」(36.1%)が最も高く、以降、「仕事の情報が得られなかった」(27.8%)、「仕事にブランクができた」(26.4%)が続きました。育児休業取得期間中は給与の支払いが義務づけられていません。育児休業給付金の支給を受けることはできますが、トータルの収入は減少するため、収入源で困ったという人が多いようです。
また、パタニティ・ハラスメントに該当する行為についてみると、「復帰したら嫌味を言われた」は15.3%、「責任ある仕事を任されなくなった」は8.3%、「昇進・昇給できなかった」は6.9%、「低い人事評価を受けた」は4.2%、「復帰したら新人のような扱いをされた」「異動を命じられた」「転勤を命じられた」は2.8%となっており、これらのいずれかを受けた割合をみると、20.8%でした。
◆“2020年までに男性の育児休業取得率を13%にする”政府目標 64.9%が「知らない」と回答
政府は、男性の育児参画を促進するため、“男性の育児休業取得率を2020年までに13%にする”という数値目標を掲げています。
全回答者(1,000名)に、この政府目標について知っているか聞いたところ、「知っている」は35.1%、「知らない」は64.9%と、知っているという人は少数でした。目標の期限として定めた2020年は間近ですが、まだ十分に認知されていない実態が明らかとなりました。
◆男性の育児休業取得率を上げるために必要だと思うこと 1位「男性の育休取得義務化」
最後に、全回答者(1,000名)に、男性の育児休業取得率を上げるためには、どのような対策が必要だと思うか聞いたところ、「男性の育休取得義務化(対象者に取得を義務づける)」(57.5%)が最も高く、次いで、「男性の育休割り当て制度の法制化(男性しか取得できない日数を作る)」(29.2%)、「育児休業給付金の増額」(25.4%)、「育休が取得可能なことの社内周知」(21.3%)、「代替要員の確保」(20.6%)となりました。
男女ともに育児休業を取得する権利があるにもかかわらず、義務化されないと男性は育児休業を取得しづらいと思っている実態が明らかとなりました。
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