特許力からみた業界分析 --食品業界 【業界トップはハウス食品:無菌液体調理ソースの製造方法】
工藤一郎国際特許事務所は、特許価値を評価するための特許価値評価手法(YKS手法)を用いたサービスを提供している。今回はそのYKS手法を用いて、特許力の面から見た食品業界についての分析を試みる。
工藤一郎国際特許事務所では、特許の経済的価値を正確かつ客観的に評価する手法としてYKS手法を用いたサービスを提供している。YKS手法により算出される特許力指数(YK値)は、いわば特許がお金を稼ぐ力を指数化したものであり、各企業の特許による競争力を指数で示したものだ。
東証一部上場企業の食品業界における特許力指数ランキングは次のようになった。
【食品業界の特許力指数ランキング】
企業名 YK値 YK偏差値
1位 ハウス食品 2589.77 105.84
2位 味の素 1886.41 89.39
3位 雪印乳業 1248.16 74.46
4位 キユーピー 942.83 67.30
5位 アサヒ飲料 856.98 65.38
6位 不二製油 850.77 65.10
7位 明治乳業 714.12 61.96
8位 ヤクルト本社 533.73 57.74
9位 キリンホールディングス 509.05 56.55
10位 日清オイリオグループ 413.35 54.69
(算出基準日:2008年5月1日)
特許力指数ランキングによると、1位は断トツでハウス食品であった。ハウス食品には技術力を背景としたよりいっそうの成長が期待できるだろう。続いて、味の素、雪印乳業、等となっている。さらに11位以下には、森永製菓やキッコーマン、江崎グリコ、森永乳業、明治製菓などといった馴染みの企業が名を連ねる。6位の不二製油は、あまり聞きなれないが、チョコレート用油脂などの食品素材を開発・生産・販売する企業である。
次に、先程紹介した食品業界の上位10社が保有する特許のうちで最も価値の高い特許ベスト5は次のようになった。
【特許別の特許力指数ランキング】
発明の名称(略称)【権利者名】
1位 抹茶食品の褐変防止方法【アサヒ飲料】
2位 加熱に強いマヨネーズなどの調味料【キユーピー】
3位 加温時の劣化臭を抑制した乳風味飲料【アサヒ飲料】
4位 咀嚼・嚥下(噛み砕き飲み込む)機能低下者用食品【キユーピー】
5位 無菌液体調理ソースの製造方法【ハウス食品】
本ランキングで1位になったアサヒ飲料の特許は抹茶を含む食品の褐色の変化を抑制する方法及び褐色の変化が防止された透明容器入りの抹茶飲料の発明に関するもので、近年人気を博している抹茶食品の分野において強力な影響力を持っているといえるだろう。
次に2位は、マヨネーズ、サラダドレッシング等の調味料についての発明である。本発明の調味料は、オーブン、フライ、電子レンジ等において他の食品と共に強力な加熱処理を施しても、油層が分離しにくく、滑らかな触感を保持することができる。この発明によれば、コンビニ弁当を温めてもかかっているマヨネーズが滑らかなままということになる。
さらに3位は、加熱保存時の缶コーヒーや缶紅茶飲料などの乳風味飲料の安定性を高める発明である。そして4位は、食べ物を良く噛むこと、飲み込むことが困難な人にも食べやすく飲み込みやすい食品に関する発明である。
また、食品業界1位のハウス食品の特許が5位にランクインしている。本特許発明の製造方法により液体調理ソースをパッキングすると、本格的な風味や食感を保つことができる。
上位にはこのように「なるほど」と、うなるような特許が名前を連ねた。
***
特許力指数を用いて企業を検証していくに当たり、加工食品に話を絞ってみよう。
まず、加工食品での07年売上高の上位5社をみると次のようになった。
【加工食品業界の売上高ランキング】
売上高 YK値
1位 味の素 1兆1585億円 1886.41
2位 キユーピー 4680億円 942.83
3位 キッコーマン 3926億円 305.13
4位 ハウス食品 2325億円 2589.77
5位 カゴメ 1870億円 44.72
この加工食品上位5社には、特許力指数ランキングで上位を占める味の素、キューピー、ハウス食品がランクインしている。各々の売上高はキューピーがハウス食品の約2倍、味の素はさらにその約2.5倍といった構図になっているが、この3社を特許力指数で見てみるとすでに示したように全く異なる順位になるのである。
ちなみに出願件数を見ると、年間で味の素が150〜200件程度、キューピーは100件程度、ハウス食品が50〜100件程度、となっている。上位陣のなかでは比較的出願件数で劣るハウス食品が食品業界の特許力指数ランキングで首位に立っている点で、ハウス食品は極めて優秀な知財戦略をとっていると想像される。
ただ、知財力が高いと自己資本利益率が高くなるという一般的な傾向が、残念ながら加工食品業界の上位企業間では顕著には見られない。特許力ランキングで断トツ1位のハウス食品も自己資本利益率は2.6%であり、味の素の5.4%、キューピーの5.2%と比べても低い値となっている。この原因を探ると有益な情報が得られるかもしれない。
***
食品業界全体に話を戻すと、技術力で差別化を行い利益率を上げるといった余地が他の業界と比べてまだまだ大きいのではないかと推測される。全体として自己資本利益率が高くない中で、どのように他社と差別化して利益率を高めていくかは大いに知財戦略に依存する部分が多いのである。
具体的には商品セグメントごとにYKS分析を行い、現在有している知財力をセグメントごとに最大限に反映させる施策の検討などが必要と思われる。
知財マネジメントの観点から言えば、これら貴重な知財リソースをいかに企業収益に有効に反映させられるかが問われることになり、このような観点からYKS分析を行うことでどのような戦略をとればよいかということがクリアになってくるだろう。
【YKS手法とは】
YKS手法とは、特許の独占排他力を評価することに主眼をおいた特許価値評価手法であり、工藤一郎国際特許事務所において独自に開発された手法である。独占排他力の大きな特許とは競争相手から見れば自身に事業障害をもたらす原因であり、この障害を検知し、排除しようとする行動が必然となる。そこで、特許に対して起こされる競争相手のアクションを評価することで特許の独占排他力を評価する。
企業特許力指数ランキングの詳細はこちら
【 http://www.kudopatent.com/a23.html 】
YKS手法についての詳細はこちら
【 http://www.kudopatent.com/a21.html 】
【本件に関するお問い合わせ先】
工藤一郎国際特許事務所
〒100-0006
東京都千代田区有楽町1丁目7番1号
有楽町電気ビル南館9F
担当 : 小林
電話 : 03-3216-3770
E-mail:office@kudopatent.com
《関連URL》
http://www.kudopatent.com/
東証一部上場企業の食品業界における特許力指数ランキングは次のようになった。
【食品業界の特許力指数ランキング】
企業名 YK値 YK偏差値
1位 ハウス食品 2589.77 105.84
2位 味の素 1886.41 89.39
3位 雪印乳業 1248.16 74.46
4位 キユーピー 942.83 67.30
5位 アサヒ飲料 856.98 65.38
6位 不二製油 850.77 65.10
7位 明治乳業 714.12 61.96
8位 ヤクルト本社 533.73 57.74
9位 キリンホールディングス 509.05 56.55
10位 日清オイリオグループ 413.35 54.69
(算出基準日:2008年5月1日)
特許力指数ランキングによると、1位は断トツでハウス食品であった。ハウス食品には技術力を背景としたよりいっそうの成長が期待できるだろう。続いて、味の素、雪印乳業、等となっている。さらに11位以下には、森永製菓やキッコーマン、江崎グリコ、森永乳業、明治製菓などといった馴染みの企業が名を連ねる。6位の不二製油は、あまり聞きなれないが、チョコレート用油脂などの食品素材を開発・生産・販売する企業である。
次に、先程紹介した食品業界の上位10社が保有する特許のうちで最も価値の高い特許ベスト5は次のようになった。
【特許別の特許力指数ランキング】
発明の名称(略称)【権利者名】
1位 抹茶食品の褐変防止方法【アサヒ飲料】
2位 加熱に強いマヨネーズなどの調味料【キユーピー】
3位 加温時の劣化臭を抑制した乳風味飲料【アサヒ飲料】
4位 咀嚼・嚥下(噛み砕き飲み込む)機能低下者用食品【キユーピー】
5位 無菌液体調理ソースの製造方法【ハウス食品】
本ランキングで1位になったアサヒ飲料の特許は抹茶を含む食品の褐色の変化を抑制する方法及び褐色の変化が防止された透明容器入りの抹茶飲料の発明に関するもので、近年人気を博している抹茶食品の分野において強力な影響力を持っているといえるだろう。
次に2位は、マヨネーズ、サラダドレッシング等の調味料についての発明である。本発明の調味料は、オーブン、フライ、電子レンジ等において他の食品と共に強力な加熱処理を施しても、油層が分離しにくく、滑らかな触感を保持することができる。この発明によれば、コンビニ弁当を温めてもかかっているマヨネーズが滑らかなままということになる。
さらに3位は、加熱保存時の缶コーヒーや缶紅茶飲料などの乳風味飲料の安定性を高める発明である。そして4位は、食べ物を良く噛むこと、飲み込むことが困難な人にも食べやすく飲み込みやすい食品に関する発明である。
また、食品業界1位のハウス食品の特許が5位にランクインしている。本特許発明の製造方法により液体調理ソースをパッキングすると、本格的な風味や食感を保つことができる。
上位にはこのように「なるほど」と、うなるような特許が名前を連ねた。
***
特許力指数を用いて企業を検証していくに当たり、加工食品に話を絞ってみよう。
まず、加工食品での07年売上高の上位5社をみると次のようになった。
【加工食品業界の売上高ランキング】
売上高 YK値
1位 味の素 1兆1585億円 1886.41
2位 キユーピー 4680億円 942.83
3位 キッコーマン 3926億円 305.13
4位 ハウス食品 2325億円 2589.77
5位 カゴメ 1870億円 44.72
この加工食品上位5社には、特許力指数ランキングで上位を占める味の素、キューピー、ハウス食品がランクインしている。各々の売上高はキューピーがハウス食品の約2倍、味の素はさらにその約2.5倍といった構図になっているが、この3社を特許力指数で見てみるとすでに示したように全く異なる順位になるのである。
ちなみに出願件数を見ると、年間で味の素が150〜200件程度、キューピーは100件程度、ハウス食品が50〜100件程度、となっている。上位陣のなかでは比較的出願件数で劣るハウス食品が食品業界の特許力指数ランキングで首位に立っている点で、ハウス食品は極めて優秀な知財戦略をとっていると想像される。
ただ、知財力が高いと自己資本利益率が高くなるという一般的な傾向が、残念ながら加工食品業界の上位企業間では顕著には見られない。特許力ランキングで断トツ1位のハウス食品も自己資本利益率は2.6%であり、味の素の5.4%、キューピーの5.2%と比べても低い値となっている。この原因を探ると有益な情報が得られるかもしれない。
***
食品業界全体に話を戻すと、技術力で差別化を行い利益率を上げるといった余地が他の業界と比べてまだまだ大きいのではないかと推測される。全体として自己資本利益率が高くない中で、どのように他社と差別化して利益率を高めていくかは大いに知財戦略に依存する部分が多いのである。
具体的には商品セグメントごとにYKS分析を行い、現在有している知財力をセグメントごとに最大限に反映させる施策の検討などが必要と思われる。
知財マネジメントの観点から言えば、これら貴重な知財リソースをいかに企業収益に有効に反映させられるかが問われることになり、このような観点からYKS分析を行うことでどのような戦略をとればよいかということがクリアになってくるだろう。
【YKS手法とは】
YKS手法とは、特許の独占排他力を評価することに主眼をおいた特許価値評価手法であり、工藤一郎国際特許事務所において独自に開発された手法である。独占排他力の大きな特許とは競争相手から見れば自身に事業障害をもたらす原因であり、この障害を検知し、排除しようとする行動が必然となる。そこで、特許に対して起こされる競争相手のアクションを評価することで特許の独占排他力を評価する。
企業特許力指数ランキングの詳細はこちら
【 http://www.kudopatent.com/a23.html 】
YKS手法についての詳細はこちら
【 http://www.kudopatent.com/a21.html 】
【本件に関するお問い合わせ先】
工藤一郎国際特許事務所
〒100-0006
東京都千代田区有楽町1丁目7番1号
有楽町電気ビル南館9F
担当 : 小林
電話 : 03-3216-3770
E-mail:office@kudopatent.com
《関連URL》
http://www.kudopatent.com/
企業情報
企業名 | 工藤一郎国際特許事務所 |
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代表者名 | -- |
業種 | 未選択 |
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