話者音声のみを捉える微小で高性能な雑音カットマイクの開発に成功

１．従来の雑音抑圧マイクの課題
・従来の周囲雑音を抑えるマイクには、指向性マイクと接話マイクがありま
す。また、最近は複数マイクからの音声信号をデジタル処理で抑制する方式
も開発されています。
・指向性マイクの一種である望遠マイクは、ビデオカメラなどに使われていま　すが、
　鋭い指向性を確保するため、マイク間隔を充分広く取るので寸法が大きくな　ります。
・ヘッドセットなどに使われる接話マイクは、比較的小型ですが、携帯電話の　実装に不向きなほか、話者の背後から来る音も拾うなど雑音の分離性能に難　がありました。
・一方、音声デジタル処理方式の例としては、受話マイクの信号から周囲音検　出マイクの信号を差し引いて周囲雑音を抑制する方式などが実用化されてい　ます。しかし、周囲音の急激な変化に処理が追いつかず音声が乱れるなどの　問題があります。

２．当社が開発した雑音除去マイクの構造と原理
1) 構造
・２個のＭＥＭＳマイクを同一平面上に極めて近接させ配置した極微小な「近　接ＭＥＭＳマイク対」構造です。（写真．性能評価用マイク参照）
2) 原理
?話者と離れた遠方から到来する雑音波の圧縮とカット原理
・マイク対を結ぶ方向からの雑音には、話者の背後から来る音も含まれます。　しかし極めて近接させたＭＥＭＳマイク対において、ほぼ同位相・同振幅で　あるため、微分マイクの出力が極めて小さくなり雑音を強く圧縮します。
・他の角度（全方向360度）から到来する雑音は、ＭＥＭＳマイク対のもつ指向　特性が強く作用して、更により一層深く雑音を圧縮しカットします。
?マイクに近い話者の音声捕捉原理
・話者の音声は、距離に対して急峻に音圧が変化するためＭＥＭＳマイク対の　微分出力として信号が捕捉され、雑音と鮮明に分離します。
このように本マイクは、極めて近接させたＭＥＭＳマイク対を微分マイクと　して使用する新しい雑音除去方式です。

３．「近接MEMSマイク対」の特徴
下記のような、高度な機能と性能を誇る根幹的・汎用的技術です。
１）周囲雑音を（マイクの根元でアナログ信号として）抑圧
・定常音・非定常音を問わず広い帯域の雑音を全方位で抑圧します。　
・強い衝撃音や大音響を抑圧するので音声コーデックが有効に活きます。
２）話者音声の外部伝播経路を遮断
・狭い空間での話者音声の反射音、壁等による反射雑音も除去します。
・室内などで良く生じるハウリング現象を除去します。
３）多機能・高性能マイク（３モード切替え）
?7kHz音声忠実入力モード
・フラットな周波数特性と優れた雑音抑圧機能とを持つ高品位音声通信用で
　す。
・自動車、航空機内部での騒音（主成分は300Hz近傍）での雑音除去が顕著で
　す。
・中国語、英語など子音の多い言語の音声認識率を飛躍的に向上させます。
・カーナビの音声制御、音声翻訳サービスなど音声認識の壁を打破できます。
?クリア音声モード（高い周波数域を強調するモード）
・高音域聴覚感度の加齢劣化を補い、10〜20才相当の若返り効果があります。
・電車、バス、会場など、誰にでも聞き取り易いアナウンスが提供できます。
・コールセンター等の隣接話者音声を強く抑制し正確な対応を可能にします。
?通常利用モード（単一マイクと同等）
・一般のマイクと同様な用途に切替えるモードです。

４．新マイクの意義と革新的な用途
1) 新マイクの意義
・次世代の音声通信を革新するコア技術
　本マイクの登場により、従来の雑音下における音声コーデックの課題を抜本　的に解決するほか、加齢に伴って低下する高音域の聴覚機能を補助するな
　ど、高機能・高品質の音声通信革命を実現する音声通信の基幹部品技術で
　す。　
・次世代の音声処理サービスを革新するコア技術　　　　
　家電制御、機械制御、ロボット制御、医療機器制御または音声翻訳など、従　来マイクでは極めて困難であった音声認識商品の実現を可能にし、関連の音　声サービス事業機会を開拓・創造する基幹部品技術です。
　　　
2) 革新する具体的な用途
?携帯電話マイク：年10億台出荷の携帯電話市場へのインパクトが期待できま　す。
?高品質IP電話マイク：7kHzへ拡張する次世代の音声通信サービス（ＮＧＮ高　品質電話）と既存の電話との通話品質を大幅に革新します。
?音声認識マイク；雑音環境に於ける音声認識・音声処理サービスを革新しま　す。
?ヘッドセットマイク：コールセンター、工場・工事現場、バス・電車・航空　機内のアナウンス、音声会議など音場環境を抜本的に革新します。
?自動車内マイク：騒音下のハンズフリー電話の機能および性能を改革しま
　す。

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