特許力からみた業界分析 --輸送用機器業界 【特許力指数ランキング、デンソーがトヨタを抑えトップ】

工藤一郎国際特許事務所は、特許価値を評価するための特許価値評価手法(YKS手法)を用いたサービスを提供している。今回はそのYKS手法を用いて、特許力の面から見た輸送用機器業界についての分析を試みる。

工藤一郎国際特許事務所では、特許の経済的価値を正確かつ客観的に評価する手法としてYKS手法を用いたサービスを提供している。YKS手法により算出される特許力指数(YK値)は、いわば特許がお金を稼ぐ力を指数化したものであり、各企業の特許による競争力を指数で示したものだ。

東証一部上場企業の輸送用機器業界における特許力指数ランキングは次のようになった。


【輸送用機器業界の特許力指数ランキング】
     企業名         YK値   YK偏差値
1位  デンソー          6766.84    95.52
2位  トヨタ自動車        5396.18    85.27
3位  ホンダ            4585.39    79.20
4位  豊田合成          3766.45    73.07
5位  日産自動車         2896.05    66.56
6位  ヤマハ発動機       2769.37    65.61
7位  豊田自動織機       1825.64    58.55
8位  三菱自動車         1559.81    56.56
9位  川崎重工業         1429.35    55.58
10位  アイシン精機       1367.81    55.12
(算出基準日:2008年8月1日)


以上のように、輸送用機器業界の特許力指数ランキングではトヨタ系の自動車部品メーカーであるデンソーがトヨタ自動車を抑えてトップに立った。以下、ホンダや日産自動車などの大手自動車メーカーや、豊田合成やアイシン精機などの自動車部品メーカーが名を連ねた。また、ランキング上位10社のうち、デンソー・トヨタ自動車・豊田合成・豊田自動織機・アイシン精機とトヨタ系の企業が5社もランクインしていることは、トヨタの技術力の高さを証明しているといえよう。


次に、先程紹介した輸送用機器業界の上位10社が保有する特許のうちで最も価値の高い特許ベスト3は次のようになった。


【特許別の特許力指数ランキング】
    発明の名称(略称)【企業名】
1位  圧縮機のピストン及びピストン式圧縮機【豊田自動織機】
2位  内燃機関用スパークプラグ【デンソー】
3位  ウインドレギュレータ装置【アイシン精機】


本ランキング1位は豊田自動織機の特許で、車両の室内の空調を行うためのピストン式圧縮機に関する発明である。この発明はクランク室内に十分な量の潤滑油を供給しつつ、圧縮機の圧縮効率の低下を防ぐためのものである。

次いで2位は、特許力指数ランキングトップのデンソーの特許である。この特許は、貴金属チップと電極母材との接合強度に優れた長寿命の内燃機関用スパークプラグを提供しようとするものである。

3位の特許は、アイシン精機の特許で、自動車などのドアのウインドレギュレータ装置におけるイコライザアームのスムーズな回転を確保することを目的としている。

これらのような価値の高い特許は大きな影響力を持っていて、価値の高い特許を持っていれば持っているほど企業は技術的に有利に事業を進められるのである。



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系列別にみた特許力
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輸送用機器業界の中でも、自動車メーカーと自動車部品メーカーは系列化していることが多く、トヨタ系やホンダ系などといったような勢力図ができあがっている。ここでは、その勢力別に特許力を見比べてみた。

輸送用機器業界の東証一部上場企業をトヨタ系、ホンダ系、日産系、その他・独立系に分けたところ、各系列の特許力指数は次のようになった。


【系列別特許力指数】
系列名 (代表的な企業)                   YK値  一社平均
トヨタ系 (トヨタ自動車・デンソー・アイシン精機など)   22614   1508
ホンダ系 (ホンダ・日信工業・ケーヒンなど)        4878    610
日産系  (日産自動車・カルソニックカンセイなど)    3666    611
その他・独立系(ヤマハ発動機・三菱自動車・NOKなど) 11884    350


これをみると、「世界のトヨタ」が、技術力でも他を圧倒していることがわかる。その他・独立系は自動車メーカーの特許力は高いが、部品メーカーの特許力が伸び悩んだ。その点トヨタ系は、トヨタ自動車はもちろんのこと、デンソーや豊田合成などの各部品メーカーも高い特許力を有しており、それがこの好結果につながった。


また、輸送用機器業界の東証一部上場企業を自動車・二輪車メーカー、部品・組立メーカー、その他(重機・造船・総合車両メーカー等)に分けたところ、次のような結果となった。


【各業態別特許力指数】             YK値
自動車・二輪車メーカー             20631
部品・組立メーカー                19391
その他(重機・造船・総合車両メーカー等)   3020


輸送用機器業界では、自動車・二輪車メーカーと自動車部品メーカーで特許力を分け合う構図となっており、技術力に定評のある日本の自動車産業は両者によって成り立っていることがわかる。



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特許力とROE
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一般的に、特許力・技術力が高いとROE(自己資本利益率)が高くなるといえる。なぜならば、ROEとはどれだけ製品に付加価値をつけられるかといったことが問われていて、そこには技術力が大きく寄与するためである。よって特許力指数の高い企業ではROEが高くなっている傾向が見て取れるのである。具体的に輸送用機器業界のYK値上位10社と東証一部上場63社のROEを見比べてみよう。


                連結ROE
YK値上位10社平均      12.12
東証一部上場63社平均    9.67


YK値上位10社のROEは、輸送用機器業界東証一部上場企業の平均を大きく上回っており、特許力が製品の付加価値を創出していることがわかる。ROEは、投資などの際に最重要視される指標の一つであり、特許力の重要性が非常に高いことが窺い知れる。

日本の自動車産業は長年、世界でも有利な立場に立ってきた。それを支えてきたのが安全性能や環境技術などの、世界一ともいえる日本の技術力である。日本の自動車産業にとって技術力は宝であり、特許戦略は最も重要な企業戦略のひとつであるといえるだろう。

日本などの先進国では成熟産業となってしまった自動車産業には、今後更なる環境性能の向上や原材料費高騰に対するコストダウンのための技術力などがますます必要になってくると思われ、特許戦略の出来不出来が各社の今後の成長に大きく影響してくるだろう。



【YKS手法とは】
YKS手法とは、特許の独占排他力を評価することに主眼をおいた特許価値評価手法であり、工藤一郎国際特許事務所において独自に開発された手法である。独占排他力の大きな特許とは競争相手から見れば自身に事業障害をもたらす原因であり、この障害を検知し、排除しようとする行動が必然となる。そこで、特許に対して起こされる競争相手のアクションを評価することで特許の独占排他力を評価する。



企業特許力指数ランキングの詳細はこちら
【 http://www.kudopatent.com/a23.html 】


YKS手法についての詳細はこちら
【 http://www.kudopatent.com/a21.html 】




【本件に関するお問い合わせ先】
工藤一郎国際特許事務所
担当 : 小林
電話 : 03-3216-3770
E-mail:office@kudopatent.com


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