プラスチックの継ぎ目無し一体成形に新工法!金属部品の樹脂化を可能にするロストワックス精密樹脂成形法(LWIM)とその量産技術を開発、受注開始
金属鋳造技術のロストワックス法をプラスチック成形に応用した,新しい継ぎ目無し一体成形工法LWIM(Lost Wax Injection Molding)。新開発の耐熱中子をオートクレーブで加水分解除去することで,スーパーエンプラでも継ぎ目無し一体成形可能。さらに僅か数時間で中子除去ができ,大幅な生産性向上を達成。
住友大阪セメント株式会社(本社:東京都千代田区、社長:渡邊 穰)と、稲畑産業株式会社(本社:東京都中央区、社長:稲畑 勝太郎)と、稲畑産業の子会社であるアイ・アンド・ピー株式会社(本社:埼玉県東松山市、社長:松村 周治)とは共同で、ロストワックス精密樹脂成形法(略称「LWIM」:Lost Wax Injection Molding)とその量産技術を開発し受注を開始しました。
この技術によって、従来のプラスチック成形技術では不可能であった、複雑な三次元曲面形状や内側造形、中空形状などを安定した寸法精度で思いのままに一体成形できるようになり、また、金属精密鋳造部品などをスーパーエンプラで樹脂化することも可能になりました。
本開発品について気体・液体などの流体関連部品のほか、自動車部品、電気・電子部品、食品機器部品、照明機器部品など幅広く用途開発を進めていきます。
1.概要
金属の精密鋳造品製造に使われているロストワックス鋳造のプロセスを、熱可塑性樹脂の精密成形に応用し新しい樹脂成形の量産技術としてLWIMを開発しました。
LWIMは、ロストワックス鋳造プロセスの脱ロウ工程と同じ考え方で、今回独自開発した”中子(なかご)”をオートクレーブで除去します。この結果、複雑な形状の一体成形、アンダーカット形状1)の賦形、偏肉中空成形2)が可能になり、形状的弱点が少ない機能優先の設計ができるようになりました。またLWIMでは汎用樹脂の他に、スーパーエンプラなどの耐熱高機能樹脂を使うことができます。このLWIMで作られた部品は、樹脂溶着工法と違って継ぎ目がありませんので、組み立てコストの削減と構造的信頼性の大幅な向上が期待できます。
2.従来の樹脂中空成形技術
2.1 従来技術のカテゴリー
中空体の製法は、継ぎ目の有無で大きく2つのカテゴリーに分けられ、LWIMは継ぎ目無し成形のカテゴリーに属します。継ぎ目有りの場合は、界面の接合技術が重要になり、溶着技術やダイ・スライド・インジェクション(DSI)などの方法がありますが、信頼性は継ぎ目無し成形で作られたものの方がはるかに優れています。
2.2 従来技術の問題点
ブロー成形の場合、PETボトルのように高い中空率を達成することはできますが、肉厚の制御や、内側の造形はできません。LWIMでは中空内側に文字を彫刻することも可能で、形状の形成能力には大きな違いがあります。
LWIMに最も近い従来の継ぎ目無し中空術は”ロストコア法“と呼ばれる方法です。これは融点の異なる2種の樹脂材料を選定し、融点の低い方を中子とします。これを外殻樹脂(製品になる樹脂)でインサート成形して組み合わせ、成形後に中子材料の融点以上かつ外殻樹脂の融点以下の温度に保持して中子を融かし出す(ロストコア)という方法です。さらに類似の方法では、中子に水溶性の樹脂を用いたり、低融点の合金を用いたりして中子を融かし出す方法などがありますが、安定的に量産された事例は少ない様です。
その大きな理由の一つは、中子材料と外殻樹脂の組み合わせに”制約が多過ぎる”ことが挙げられます。例えば、水溶性の樹脂は一般に融点が100℃程度と低いため、それを包み込む外殻樹脂にスーパーエンプラなどの高性能樹脂は使えません。高性能樹脂は成形温度が300℃前後と高く、インサート成形すると中子が溶けて変形したり破損したりすることがあるためです。また、形状によっては中子が溶け出すのに1週間以上かかることもあり量産性にも問題があります。融点差や低融点合金を使う場合も、同様の理由や、設備が特殊であることなどの課題があるようです。
3. ロストワックス精密樹脂成形法(LWIM)の特長
住友大阪セメントとアイ・アンド・ピーは新たに中子材料を開発し、大型の蒸気式オートクレーブによる除去プロセスを開発しました。このプロセスでは、中子に対して加水分解、溶融、水への融解という3つの作用がおこるため、融点の高い中子材料を用いることができるようになりました。その結果、外殻樹脂にスーパーエンプラを用いることが可能になり、また中子の除去時間が数時間に短縮されるなど高い量産性を実現しています。
LWIMで使える樹脂材料には非常に多くの種類があり、成形も一般の熱可塑性射出成形機が使用できますので、特殊な設備を必要としない汎用性に優れた量産技術であると考えています。
その効果は別紙の技術説明カタログに記載の通り非常に多く、軽量化等を目的とした金属精密鋳造部品の樹脂代替えのほか、今まで接合していた多くの樹脂部品が、完全な一体成形で製造できるようになりました。
4.今後の予定
住友大阪セメントは中子材料と外殻樹脂の組み合わせなど材料加工技術、アイ・アンド・ピーは成形加工を中心とした量産技術、稲畑産業は両社に対する材料情報提供及びマーケティングを担当します。今後ともLWIMの改良を重ね、適用範囲や用途の拡大を目指して、さらなる技術開発を進めていきます。
用語説明 (図-1参照)
1.アンダーカット形状:成形品を金型から取り出すとき、そのままの状態では離型できない凸形状や凹形状のこと。
2.偏肉中空成形:樹脂の厚みを部分的に制御した成形のこと。
【問い合わせ先】
住友大阪セメント株式会社
建材事業部 技術開発グループ ジーマチーム
TEL :03-5211-4755 FAX:03-3221-5183
Mail :z-ma@soc-tec.com
http://www.soc-tec.com/z-ma/LWIM/lwim_index.html
この技術によって、従来のプラスチック成形技術では不可能であった、複雑な三次元曲面形状や内側造形、中空形状などを安定した寸法精度で思いのままに一体成形できるようになり、また、金属精密鋳造部品などをスーパーエンプラで樹脂化することも可能になりました。
本開発品について気体・液体などの流体関連部品のほか、自動車部品、電気・電子部品、食品機器部品、照明機器部品など幅広く用途開発を進めていきます。
1.概要
金属の精密鋳造品製造に使われているロストワックス鋳造のプロセスを、熱可塑性樹脂の精密成形に応用し新しい樹脂成形の量産技術としてLWIMを開発しました。
LWIMは、ロストワックス鋳造プロセスの脱ロウ工程と同じ考え方で、今回独自開発した”中子(なかご)”をオートクレーブで除去します。この結果、複雑な形状の一体成形、アンダーカット形状1)の賦形、偏肉中空成形2)が可能になり、形状的弱点が少ない機能優先の設計ができるようになりました。またLWIMでは汎用樹脂の他に、スーパーエンプラなどの耐熱高機能樹脂を使うことができます。このLWIMで作られた部品は、樹脂溶着工法と違って継ぎ目がありませんので、組み立てコストの削減と構造的信頼性の大幅な向上が期待できます。
2.従来の樹脂中空成形技術
2.1 従来技術のカテゴリー
中空体の製法は、継ぎ目の有無で大きく2つのカテゴリーに分けられ、LWIMは継ぎ目無し成形のカテゴリーに属します。継ぎ目有りの場合は、界面の接合技術が重要になり、溶着技術やダイ・スライド・インジェクション(DSI)などの方法がありますが、信頼性は継ぎ目無し成形で作られたものの方がはるかに優れています。
2.2 従来技術の問題点
ブロー成形の場合、PETボトルのように高い中空率を達成することはできますが、肉厚の制御や、内側の造形はできません。LWIMでは中空内側に文字を彫刻することも可能で、形状の形成能力には大きな違いがあります。
LWIMに最も近い従来の継ぎ目無し中空術は”ロストコア法“と呼ばれる方法です。これは融点の異なる2種の樹脂材料を選定し、融点の低い方を中子とします。これを外殻樹脂(製品になる樹脂)でインサート成形して組み合わせ、成形後に中子材料の融点以上かつ外殻樹脂の融点以下の温度に保持して中子を融かし出す(ロストコア)という方法です。さらに類似の方法では、中子に水溶性の樹脂を用いたり、低融点の合金を用いたりして中子を融かし出す方法などがありますが、安定的に量産された事例は少ない様です。
その大きな理由の一つは、中子材料と外殻樹脂の組み合わせに”制約が多過ぎる”ことが挙げられます。例えば、水溶性の樹脂は一般に融点が100℃程度と低いため、それを包み込む外殻樹脂にスーパーエンプラなどの高性能樹脂は使えません。高性能樹脂は成形温度が300℃前後と高く、インサート成形すると中子が溶けて変形したり破損したりすることがあるためです。また、形状によっては中子が溶け出すのに1週間以上かかることもあり量産性にも問題があります。融点差や低融点合金を使う場合も、同様の理由や、設備が特殊であることなどの課題があるようです。
3. ロストワックス精密樹脂成形法(LWIM)の特長
住友大阪セメントとアイ・アンド・ピーは新たに中子材料を開発し、大型の蒸気式オートクレーブによる除去プロセスを開発しました。このプロセスでは、中子に対して加水分解、溶融、水への融解という3つの作用がおこるため、融点の高い中子材料を用いることができるようになりました。その結果、外殻樹脂にスーパーエンプラを用いることが可能になり、また中子の除去時間が数時間に短縮されるなど高い量産性を実現しています。
LWIMで使える樹脂材料には非常に多くの種類があり、成形も一般の熱可塑性射出成形機が使用できますので、特殊な設備を必要としない汎用性に優れた量産技術であると考えています。
その効果は別紙の技術説明カタログに記載の通り非常に多く、軽量化等を目的とした金属精密鋳造部品の樹脂代替えのほか、今まで接合していた多くの樹脂部品が、完全な一体成形で製造できるようになりました。
4.今後の予定
住友大阪セメントは中子材料と外殻樹脂の組み合わせなど材料加工技術、アイ・アンド・ピーは成形加工を中心とした量産技術、稲畑産業は両社に対する材料情報提供及びマーケティングを担当します。今後ともLWIMの改良を重ね、適用範囲や用途の拡大を目指して、さらなる技術開発を進めていきます。
用語説明 (図-1参照)
1.アンダーカット形状:成形品を金型から取り出すとき、そのままの状態では離型できない凸形状や凹形状のこと。
2.偏肉中空成形:樹脂の厚みを部分的に制御した成形のこと。
【問い合わせ先】
住友大阪セメント株式会社
建材事業部 技術開発グループ ジーマチーム
TEL :03-5211-4755 FAX:03-3221-5183
Mail :z-ma@soc-tec.com
http://www.soc-tec.com/z-ma/LWIM/lwim_index.html
企業情報
企業名 | 住友大阪セメント株式会社 |
---|---|
代表者名 | 渡邊 穰 |
業種 | 未選択 |