マーサー「グローバル年金指数(2011年度)」を発表 − 日本の年金制度は調査対象16か国中14位の評価

・「メルボルン・マーサーグローバル年金指数」は2011年から16カ国、世界の人口の50%超を対象へと拡大 ・対象16カ国のうち、トップは昨年同様オランダ ・日本は指数が改善するも、ランキングは低下

グローバル、東京 10月12日

日本の年金制度は2010年の調査以来、指数で改善を見せるものの、全体のランキングでは世界の他の対象国に比べて低下する結果となった。「2011年度メルボルン・マーサーグローバル年金指数」によると、日本の年金制度が急速に進む少子高齢化の圧力に耐え、安定的な老後の所得を確保し、他の各国と比較して優れた年金制度を構築するためには更なる改革が必要だとしている。

ただし、「メルボルン・マーサーグローバル年金指数」の調査結果によると、このような高齢化の重圧は日本だけのものではなく、ランキング上位の国々についても更なる改革が必要だと結論付けている。

日本の指数については「十分性」と「持続可能性」の改善の結果、昨年の42.9点から若干上昇し、43.9点となっている。昨年同様、オランダが世界で一位の評価を受け、二位と三位にそれぞれオーストラリアとスイスが入る結果となっている。

当指数は上から順にAからEまでの5段階評価となっているが、最高ランクのAの評価を受けた国は無く、C(潜在的に重要なリスクと欠点を持つ制度)ならびにD(重要な弱点を持つ、または重要な欠落が存在する)ランクと評価されている国々が10カ国に上る。この指数により、それぞれの国が経済・社会的側面の両方からどのようにして高齢化の流れに対処しているかの重要な示唆が得られると考えている。

マーサーのシニア・パートナーであり、当指数の作成責任者であるデービッド・ノックス博士は、「昨今の経済環境の不透明感の中で、各国の政府が高齢化に適切に対処しきれないリスクが現実のものになりつつあり、早急に本質的な制度改革が望まれます。」とコメントしている。

ノックス博士は続けて、「ランキング上位の国々では「国・企業・個人」による三階建ての構造により、これらのリスクを分散するアプローチを採用しています。現在のような不透明な経済環境の中では、この三者のどれかにリスクを一極集中させるのではなく、分散させて対処する方法が有効だと思われます。」と述べた。

マーサー ジャパン年金・財務リスクコンサルティング部門プリンシパル、北野信太郎は、以下のようにコメントしている。
「この指数では、老後の生活における所得保障、という観点から各国の制度を評価しています。したがって、老後の「生活保障」という観点を考える上では、所得だけではなく医療制度を始めとした生活費の必要性についての考慮も欠かせません。」
「その一方で、日本の制度における欠点が相対的に浮き彫りにされており、老後の所得保障の安定、そしてその結果としてのランキングの向上へ向けて、日本が取り組むべき課題について有益な示唆が得られていると考えます。日本政府も公的年金の支給開始年齢を65歳から68歳へ引き上げるべく検討を進める*など、公的年金制度の持続可能性改善のため、さまざまな取り組みを打ち出していますが、調査対象国の中には同様の施策を既に行っているところもあります。マクロ経済や労働環境への影響など課題は山積していますが、これらの施策を迅速に実行に移すことで結果としてランキング上の評価も改善すると期待されます。」
「企業年金に視点を移せば、他の国に比べて日本の制度では、老後の年金受給時に個人が負担するリスクの割合が相対的に高いと考えられています。例えば、老齢給付金を年金で取るように定めていないなど、インフレリスク、死亡リスクあるいは資産運用リスクといった老齢所得の変動要因に対して、年金生活者個人の自己責任において対峙することが求められています。確定拠出年金制度における投資教育のように、適切な情報提供とリスクに対する教育の拡充、個人終身年金などの保険商品等の充実など、個人がリスクを負っていたとしても十分対処できる仕組みづくりも検討が必要かもしれません。」
* 注: 10月11日時点で、厚生労働省は将来的に68歳から70歳までの引き上げを検討と発表

この指数に基づく調査は今年で3年目になり、対象国も昨年の11カ国から16カ国に拡大し、その結果、世界の人口の実に半分以上を網羅するまでとなった。この指数はマーサーならびに豪州ビクトリア州政府の機関であるオーストラリア金融研究センター(ACFS)によって開発され、各国の公的ならびに私的年金制度の積み立てや、個人貯蓄などの年金以外の資産についても客観的な評価を目指している。指数自体は40以上の調査項目から構成され、「十分性(Adequacy)」、「持続可能性(Sustainability)」、「インテグリティ(Integrity)」に大別される。

日本の制度の指数を改善するうえで、以下の方策が考えられる:

・低所得の年金受給者に対する最低年金額の引き上げ
・年金給付額の引き上げに伴う、所得代替率の改善
・(企業年金などの)老齢給付の一部を年金所得として取得するよう定める規制の導入
・DC上限の引き上げなど、貯蓄に対する減税措置の拡大
・公的年金制度の支給開始年齢の更なる引き上げ

加えてノックス博士は、「それぞれの国の制度は自国の社会、経済、政治そして文化的な背景を考慮して設計されていますが、一方で共通している課題点もいくつか見られます。」と述べ、そのような共通の課題に対する施策として、以下のような例を挙げている:

・長寿化と将来さらに予測される死亡率の改善を織り込んだ形での、公的年金の支給開始年齢の引き上げ

・(フルタイムからパートタイムなどへの)段階的な退職等、老齢時における継続的な就業の奨励

・公的年金への依存度を減らすため、年金制度の内・外を問わず、貯蓄の奨励あるいは義務化の推進

・私的年金や企業年金等の私的年金制度への強制加入や自動加入

・退職前の積み立てフェーズから、退職後の引き出しフェーズへの資産の(税的メリットを維持できるような)スムーズな移行

オーストラリア金融研究センター(ACFS)でディレクターを務めるデボラ・ラーストン教授は、高齢化の影響を考慮すると、世界中の政府関係者、経済界あるいは学術関係者達にとっても重要だと説明する。

「これまで同様、当メルボルン・マーサーグローバル年金指数は、世界各国で政府の明確な方針が必要となっている課題を強調する結果となっています。特に高齢化が既に大きな社会問題となっている国々については、持続性を担保しつつ、十分な老後の所得保障を準備するだけの制度の構築には大変な困難が予想され、更なる調査と議論を必要としています。この指数がその議論の一助となれば幸いです。」

国名 ランキング  総合指数 サブ・インデックス
2011 2010 2009   十分性 持続可能性 インテグリティ
____________________________________
オランダ 1    1  1   77.9  75.9  70.8 91.4
オーストラリア 2 4  2   75.0  73.6  71.4 82.4
スイス 3 2  -   72.7  70.4  67.7 83.5
スウェーデン 4 3  3   72.0  65.6  73.6 79.9
カナダ 5 5 4 69.1 74.1 55.8 79.7
英国 6 6 5 65.7 67.8 49.8 84.5
チリ 7 7 7 64.9 53.1 67.8 79.8
ポーランド 8 - - 58.6 64.3 40.7 74.5
ブラジル 9 8 - 58.4 71.0 27.3 81.7
アメリカ 10 10 6 58.1 58.7 54.4 62.5
シンガポール 11 9 8 56.7 41.9 60.9 74.5
フランス 12 11 - 54.4 73.6 30.7 56.8
ドイツ 13 12 9 54.2 63.5 36.4 64.4
日本 14 13 11 43.9 44.1 28.4 65.2
インド 15 - - 43.4 37.3 39.4 58.8
中国 16 14 10 42.5 48.1 30.6 50.1
____________________________________
平均値 60.5 61.4 50.4 73.1


*以下省略:
メルボルン・マーサーグローバル年金指標」レポート(全文)は以下のWEBページよりダウンロードが可能です:
www.mercer.co.jp/press-releases/global-pension-index-japan-J-1427535

* * *
本件に関するお問い合わせ
マーサー ジャパン株式会社
広報
小原 香恋 Karen Ohara
Tel: 03-5354-1674  pr.japan@mercer.com
http://www.mercer.co.jp/media

年金・財務リスクコンサルティング
北野 信太郎 
Tel: 03-5354-5450 retirement.japan@mercer.com
http://www.mercer.co.jp/retirement

企業情報

企業名 マーサージャパン株式会社
代表者名 鴨居 達哉
業種 その他サービス

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