「モチベーション白書2011年」をJTBモチベーションズが発表しました。

ＪＴＢグループの人事コンサルティング会社、株式会社ＪＴＢモチベーションズ（東京都港区 代表取締役社長：市川正資）は、「モチベーション白書2011年」を発表しました。
詳しいレポートの閲覧は、ＪＴＢモチベーションズのホームページから申込ができます。
http://www.jtbm.co.jp/

「モチベーション白書2011年」は、2011年1月から2011年12月までの、働く人のモチベーションに関する4,891件、134組織のアンケートデータから、3,515件、79組織をサンプリングして、集計・分析を行なったものです。データは、同社の開発した調査パッケージ、「やる気」分析システムＭＳＱにより得られました。
「やる気」分析システムＭＳＱは、139問の質問の回答から、モチベーションの高さ、内容、業績との関連を分析するものです。1996年にリリースされ、2012年3月末時点で、約900組織、8万名のデータを蓄積しています。

ユニークな結果が出ました。主な分析結果は下記のとおりです。
●モチベーションの平均点は100点満点で69.0点。大震災後に高まったモチベーションが後半にダウン、結果的に従来と同程度に。
●女性のモチベーションが高くなり、男女がほぼ並ぶ。ダイバーシティの取り組みの効果か。
●営業・販売系のモチベーションが2010年より低下。厳しい市況反映。
●24歳以下のモチベーションが2010年より高まる。25～29歳で落ち込み、各年代の中で最低値。
●モチベーションの６つのタイプを抽出、最も人数が多いのは「やる気満々の自己表現型」、やる気の低い「職場環境重視型」。
●新たに、「上昇志向若者型」「やる気の低い業務遂行型」が出現。


【調査結果概要】
１．モチベーションの平均点は100点満点で69.0点。大震災後に高まったモチベーションが後半にダウン、結果的に従来と同程度に。
モチベーションの高さを、100を満点として指数化すると、69.0点でした。2004年の分析結果では69.0点、2010年は69.7点で、大きな変化はありませんでした。東日本大震災後の2011年5月にＪＴＢモチベーションズが実施した調査ではモチベーションの高まりが確認されましたが、その後2011年12月に実施した調査では低下していました。大震災後に向上したモチベーションは、時間を経て下降、結果的に従来と同程度の69.0点に落ち着いたようです。

２．女性のモチベーションが高くなり、男女がほぼ並ぶ。ダイバーシティの取り組みの効果か。
男性69.0点、女性69.0点と、男女でモチベーションに違いが見られませんでした。2010年の分析結果では男性70.9点、女性65.9点でしたが、男性のモチベーションが低下、女性のモチベーションが向上し、男女が並ぶ結果となりました。組織の実施するダイバーシティマネジメントにより女性の活躍が推進されたことが背景にあると考えられます。

３．営業・販売系のモチベーションが2010年より低下。厳しい市況反映。
職種では、営業･販売系が69.6点、管理・企画系が69.5点でほぼ並び、開発・製造系は66.9点でした。
2010年の分析結果では営業・販売系は高い数値を示しましたが、2011年は低下しました。顧客対応などの場面で厳しい市況を実感することが多く、モチベーションが低下することになったと思われます。

４．24歳以下のモチベーションが2010年より高まる。25～29歳で落ち込み、各年代の中では最低値。
年代別に見ると、24歳以下でモチベーションが高く、2010年と比べても高まっていました。しかし、20歳代後半で65.9点と落ち込み、どの年代よりも低い値を示しました。その後、年代が上がるほど向上、 45～49歳で72.4点ともっとも高くなり、以降は50～54歳で72.0点、55歳以上で72.1点でほぼ横ばいでした。24歳以下のモチベーションは、「人間関係」「プライベート」などの外発的な要因に強く支えられ、脆弱さを内包しており、継続して高さを保持することが難しく注意が必要と考えられます。

５．モチベーションの６つのタイプを抽出、「やる気満々の自己表現型」、やる気の低い「職場環境重視型」で過半数占める。
最も多かったのは「やる気満々の自己表現型」27.1%、次いでモチベーションが低い「職場環境重視型」25.1%、モチベーションが高い「上昇志向若者型」13.8%、モチベーションが低い「現状に満足した管理職型」13.3%、モチベーションが高い「理想が高い人間関係型」11.0%、「やる気の低い業務遂行型」9.6%が続きます。
2010年の分析にも類似したクラスターが見られましたが、モチベーションが低い「職場環境重視型」「現状に満足した管理職型」は2011年も同程度存在します。合わせて４割近いシェアを占めるこの２タイプは、職場の課題の一つと言えるでしょう。一方、「上昇志向若者型」「やる気の低い業務遂行型」は2011年に新たに加わったクラスターです。「上昇志向若者型」は若年層のモチベーションが高まったことで出現したと思われます。「やる気の低い業務遂行型」は、仕事に対しては関心も満足も薄いが、業務はこなすタイプであり、こうした割り切り型のモチベーションを持つ人が明確なクラスターとして出現したことも、2011年の特徴と言えます。

【総括と提言】
◆モチベーションの平均値と概観
2004年、2010年の分析結果と比較し、モチベーションの全体の平均値や分布に、大きな変化はなく、モチベーションの大枠は変わっていないといえます。しかし、詳しく見ると、女性のモチベーションが向上し、20歳代前半のモチベーションが向上するなど、ポジティブな変化と、営業・販売系のモチベーションが低下するなどのネガティブな変化が混在します。個々の組織内のモチベーション状況を見極め、適切な対応をとることが望まれます。

◆女性のモチベーションを確実に成果につなげて、良循環を形成する
男女別では、女性のモチベーションが向上し、男性と並ぶ結果となりました。今後は、女性のモチベーションを確実に仕事の成果につなげることで、自信の醸成、組織内での存在感の向上を図り、さらなるモチベーション向上を実現するといった良循環を作ることが望まれます。女性のモチベーション向上により、ともに働く男性のモチベーションも刺激を受けることが予想されます。

◆営業・販売系はスキル、顧客目線、キャリアビジョン、理念でモチベーション向上
営業・販売系は「業績不振」に悩み、行き詰まり感から「将来への不安」が生まれていると思われます。これらへの解決策として、営業スキルや技術の向上、顧客の目線にフォーカスできるマインド形成、キャリアビジョンの構築、企業理念の共有が必須と言えます。
開発・製造系は、「顧客との距離が遠いケースが多い」「短期的な成果が見え難い」などの理由で、仕事の意義や達成感を感じ難い場合が多いようです。顧客の声が聞ける仕組みづくり、成果の見える化、コミュニケーション促進による意識の活性化など、適切な刺激策で、モチベーション向上をサポートすることが望まれます。

◆20歳代後半でのモチベーションの急降下、仕事の価値・夢の共有で予防
20歳代前半の「人間関係」「プライベート」などの外発的な要因に支えられた、脆弱なモチベーション・スタイルを、いかにスムーズに「適職」「自己表現」などの内から発する内発的で、安定したモチベーションに変えていくかが鍵となります。上司や先輩社員が高いモチベーションで心から仕事を楽しみ、内発的なモチベーションが若年層にも伝播する職場の土壌を作ることが必要です。また、自分たちの仕事の価値や目指すべき夢・目標、組織が掲げる理念を共有できる場や仕組みを作ることが重要です。日々の仕事においては、適切な期待とフィードバックにより、自己効力感を高めて適職感を醸成したり、段階的な権限委譲で、創意工夫を促進したりすることも必要と言えます。

◆組織内のモチベーションのタイプの分布図を描き、関係性を見ながら効果的な対応
高いモチベーションで入社した「上昇志向若者型」も、「やる気満々の自己表現型」の上司に指導されるか、 「現状に満足した管理職型」に指導されるかで、将来どのタイプに変わっていくかが決まると思われます。「やる気の低い業務遂行型」が「上昇志向若者型」に刺激されて、「やる気満々の自己表現型」に近づいていく可能性もあります。職場では、複数のタイプが影響を及ぼしあっていると考えられます。
組織内のどの部門、どの役職にどのタイプが多いのか、分布図を描き、互いの関係性を見極めつつ、それぞれに合わせた対応をすることが望ましいと言えます。
「上昇志向若者型」には「やる気満々の自己表現型」からの指導が受けられるように設定し、モチベーションが業績につながるような配慮が必要でしょう。「職場環境重視型」のモチベーションを、いかに内発的にしていくか、「現状に満足した管理職型」に、いかに刺激を与えるか、を検討しつつ、「やる気満々の自己表現型」「理想が高い人間関係型」のモチベーションが、職場内のイノベーションを作り出すように、全体の雰囲気を盛り上げたり、仕事の割り振りを工夫したりすることも効果的な対応と思われます。