広報と採用は概念が近い。担当者に任せたい企業姿勢の発信
自社のアプリをインストールしているユーザーに、最適なタイミングでキャンペーンやクーポン情報をプッシュ通知できる「popinfo(ポップインフォ)」。スマートフォンの普及に合わせて導入企業が急増し、popinfoが組み込まれたアプリは200を超える。2008年から同サービスを手掛ける株式会社アイリッジの小田健太郎社長に、O2O(Online to Offline)サービスの事業展開と求める広報担当者像を聞いた。
潜在顧客を見つけるポストメルマガ
新しいことに積極的な企業がいち早く採用
Qpopinfoのサービスを具体的に教えていただけますか。
私たちはよく「ポストメルマガ」とお話ししています。現在、メルマガの開封率は1%と言われるほど効果が落ちてきています。popinfoは、自社のアプリをインストールしているユーザーに、最適なタイミングでキャンペーンやクーポン情報を通知できるサービスです。待ち受け画面にポップアップでメッセージが表示されるので認識度は非常に高く、平均20~30%のユーザーがクリックしています。
スマートフォンの普及でO2O分野が注目されていることもあり、利用企業もここ2年で急速に伸びてきています。GUや東急電鉄など、業界問わず、新しい施策に積極的な企業がいち早く採用してくれましたね。累計すると200以上のアプリに導入されています。
Q企業は自社のアプリにpopinfoを組み込むことで、自由にプッシュ通知を送れるようになるのでしょうか。
はい。導入していただくために必要なプログラムや文書などをまとめたパッケージを用意していて、企業側はエンジニアの方が自社のアプリに組み込むことで使用できるようになります。当社がアプリごと開発するケースもあります。
導入後は、マーケティング担当者など、技術者でない方でも簡単にpopinfoを利用できる管理画面を提供しています。その画面上で、アプリ利用者の年代や性別、GPSの位置情報を利用したエリアなどの条件で対象を絞り込んで、プッシュ通知を送ることができるのです。たとえば、店舗から半径何キロ以内にいる女性に、「30分以内に来店した方は30%オフ」などのメッセージをその場で入力して送信することができます。最適なタイミングで情報を見てもらうことで来店動機を高められると思っています。
業界の最先端にいる
020の価値を高めるための施策
Q設立当初の2008年はここまでスマートフォンも普及していなかったと思います。このサービスに着眼した理由は。
前職のNTTデータでシステムに携わる仕事をしていましたので、私はプログラマーではありませんが、技術についてはある程度わかります。サービス視点で位置情報の技術を捉えた時に、これからどういうものが求められるようになるかをずっと考えていました。
2008年に当社を創業し、ガラケーが主流だった頃から、位置情報を使った販促や集客の支援に取組んでいました。ただ、ガラケーは位置情報に関しての制約が多かった。自動で位置情報を取得できないので、ユーザーが自主的に「取得ボタン」を押さないと、企業からのメッセージを受信できませんでした。
それがスマホだと位置情報サービスをONにしておくだけで自動で取得できる。スマートフォンの流れがきたのをチャンスだと感じ、すぐにスマートフォン対応に切り替えました。
QO2Oコンサルタント部隊というサポート体制も構築されているそうですね。
いかに技術が優れていても、提供できるのがツールだけだと価値が半減してしまいます。ソフト面でも支援することで、より価値を感じてもらえればと考えました。popinfoで販促効果が上がる施策をアドバイスできるのは、やはり一番使い方に精通している我々です。楽天さんのECコンサルタントと似た発想かと思います。
もともとは営業のプロセスの中で、アドバイスや使い方のご提案をしてきたのをサービス化したのが「O2Oコンサルタント部隊」です。営業の中から優秀な人間を10名選びました。顧客の成功事例はもちろん、海外のO2O事例をネットで収集したり、アンテナは常に張っていますね。
広報活動を積極的に行うことが重要
やがて成長と売上拡大につながる
Q現在PR担当を募集しているとのことですが、専任者を採用しようと思った理由は。
今までは、営業側のメンバーが分担しながら広報を兼務していました。少ない人数で回しているため、広報だけにひとりを専念させられる状況ではなかったからです。
しかし現在は、会社が成長し社員数も増え、まさに事業が拡大している最中ですので、広報専任の担当者を採用できるようになってきました。会社を成長させるためにも、広報活動を積極的に行うことが重要だと考えています。やはり日経新聞に載ったり、ワールドビジネスサテライトに取り上げてもらったりすると、各方面の方から反響があります。中長期的に見ると、広報に力を入れることが売上拡大につながると思っています。
Qどのような広報担当者が参加してくれるのが理想でしょうか。
当社には現在、専門的に広報の経験を積んだメンバーはいないので、広報の見識がある方がいいですね。ただ、PRのプロでなくても、いろいろ研究して自分でトライしてもらえればいいと思っています。実は正直、どういう人が良いのかはまだわからないのです。逆に教えていただきたいくらい(笑)。
当社はベンチャー企業なので、大企業のように全てが整っているわけではありません。自ら優先順位をつけて仕事をする状況を前向きにとらえて、予測可能な出来事が起こっても楽しんで取り組んでもらえる方だと嬉しいですね。ベンチャーとして今後成長していくためには、ハードルの高いことにもトライし、ブレイクスルーする力が必要になりますので。また、広報と採用は概念としては近いと思いますから、採用における発信も任せていきたいです。人々の役に立つ当社のサービスを愛し、ニュースとして発信できるネタを日々探し、その魅力を世に発信するという意味で、広報と採用は同じだと思っています。
Q今後の展開について教えてください。
サービス面では、より効果のあるO2O施策を追求しています。今着目しているのは、ユーザーに楽しんで使ってもらえるエンターテイメント要素です。ゲーミフィケーションと言われますが、ポイントでゲームがたまるなど、プッシュ通知だけではないO2O施策もクライアントへ提案しています。すでに動き出していますが、中国や東南アジアといった海外での展開も視野に入れています。
また、最近ニーズとして感じているのは、位置情報サービスを業務管理ツールとして利用できないかということです。外出が多い営業マンの管理だったり、配送トラックの位置を管理したり。業務管理をはじめとして、新たな分野へのサービス展開も考えています。
インターネットサービスの宿命でもありますが、次々に新しいサービスを生みだす会社でありたいですね。我々は、世の中に価値がある、新しいことをやり続ける会社なので、広報担当者にはそういった企業の姿勢を打ちだしてもらえると嬉しいです。
(取材日:2014年10月1日/撮影:首藤 達広)
小田 健太郎 氏
- 企業名
- 株式会社アイリッジ
- 部署・役職
- 代表取締役社長
- 設立
- 2008-08-29
- 所在地
- 東京都千代田区紀尾井町4-13 マードレ松田4F
- プロフィール
- 1975年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。NTTデータにて情報システムを利用した新規事業開発、情報システム営業などを担当。ボストン・コンサルティング・グループにて、経営戦略コンサルティング業務に従事。2008年8月、株式会社アイリッジを創業し代表取締役に就任。