PRは拡声器ではなくプロジェクト。生み出す力が大事
日本初。『ハイキャリア女性』のための会員制転職サービスを展開するLiB(リブ)。代表の松本洋介氏に、PRの目標設定と専任スタッフに必要な能力。そして、PRが会社と社会にどのような影響を与えるのかについて話を伺いました。
キャリアと女性の幸せを両立できるサービスを作りたい
Qサービスの概要と特徴を教えてください。
株式会社LiBは、日本初のハイキャリア女性にターゲットを絞った会員制転職サービスを展開しています。例えば年収を上げたい、管理職になりたいという方だけではなく、キャリアアップはもちろん、結婚・出産・育児という女性ならではのライフイベントも両立させたいという方も対象としているところが特徴です。
Q競合他社との違いは、仕事とプライベートのバランスに特化したところでしょうか。
バランスだけではなく、女性は年齢やタイミングによって仕事のモードが変わります。20代でまだまだ働きたい方と出産を控えている方では、気持ちと働き方が違いますし、子供が産まれたら育児がはじまって、3歳になったら保育園に預けるというようにライフイベントによって働き方が変わるので、子供が産まれたからといって第一線で働くことを諦めるのではなく、ギアチェンジができるようなキャリアの選択肢を提供することが我々のミッションです。
Qなぜハイキャリア女性をターゲットにしたサービスを立ち上げたのでしょうか。
私は新卒でリクルートに入社して、女性向けのサービスでマネージャを担当していました。前職はトレンダーズの取締役です。女性のほうが圧倒的に多い会社で働いていたのですが、メンバーから面談で相談にのることが多く、感じることがありました。
女性は責任感が強くて、目の前のお客様をしっかり大事にしている。ビジネスパーソンとして尊敬しています。一方で、みんな常に悩んでいる。"見えない赤ちゃん"を抱えながら就職活動をしていて、新卒の段階で「私はいつまで働けるのでしょうか?」と不安を感じている。キャリア志向が強ければ強いほど悩んでいるのです。なので、積み重ねてきたキャリアをリセットせずにやりがいを持って第一線で働き続けることと、女性らしい幸せを両立できるようなサービスを作ろうと思ったことがきっかけです。
結果ではなく行動にKPIを設定
Q創業時からPR専任のスタッフがいるのはスタートアップでは珍しいですよね。
しっかりとしたサービスと作ることと同じくらい、PRは大事です。スタートアップは、まず存在を知ってもらわないとはじまらない。認知された上で無視されるのは仕方がありません。しかし、我々がどのような存在で、何をしているのかを知ってもらうためには、PRでより効率的に発信していかないといけない。なので、創業時からPRの専任スタッフを採用することは決めていました。
QどのようなPR施策を行っているのでしょうか。
毎月2回以上はキャリア女性の実態調査をして、データをリリースしています。地味ですけど大事なPRで、すでに1万人近いデータベースがあり、企業や日本全体にキャリア女性の生の声を発信して届けることができる。みなさんしっかりと意見を書いてくれています。個人の声だと国に届きませんが、数をまとめてリリースするとメディアに届いて、国に届く可能性がある。我々にとっても、社会にとっても価値のあるPRです。
QPRのKPIはありますか。
全てアクションベースのKPIです。行動に目標を置いていて、先ほどお話した実態調査のリリースを月2本、サービスに関するリリースを月1本。あとは女性向けのイベントを月1回、採用イベントを月1回開催して、メディアとのリレーションも重要なポイントなので、月2回は交流会に参加するようにしています。
通常PRはメディアへの掲載といった結果に目標を置きますが、どれだけ掲載されるかは神のみぞ知るところなので、それよりも発信をする回数のほうが大事です。
もちろん掲載されるための努力はしますが、声を上げるためには回数に目標を置くほうがいい。何もない月もありますが、回数を目標にしておけばネタがなくても作るといった発想になりますから。
結論、伝えたいメッセージはなかなか残らないと思っています。メッセージが深く刺さってずっと覚えてもらえることはほぼありません。だからこそ、何回目につくかという回数が大事なのです。人は物を欲しくなるとき、4回目に感情が動くといいます。Facebookを見たら友達がシェアをしている、テレビをつけたら紹介されていて、通勤中に読む雑誌にも載っている、ランチタイムに同僚が話している。異なる流入経路から4回ふれる。これはマーケティングの基本ですけれど、さまざまな角度から複数回刺す。深く印象を残すために、我々は発信する回数を大事にしているのです。
タスクではなく、会社にとって重要なプロジェクト
QPR専任スタッフの武井さんはどのような経緯で採用されたのでしょうか。
創業のタイミングでオフィス開設パーティーを開いて、そこへ遊びにきてくれたことがきっかけです。転職先を探していて、ベンチャーに行きたいという話を聞いたので、お誘いしました。
武井さんは未経験でしたが、私は7年間PRをやっていたので向き不向きはわかります。PRはまず何事もやってみることが大事で、すべることを恐れない、踏み出す力があるかどうか。ミスを恐れて、必ずヒットを打ちたい人は向いていません。とりあえずバットを振れるかどうか、これがPRに必要な能力です。
Q出会ってすぐ採用を。
はい。メディアの担当者とやりとりをしていて、こちらが伝えたいことと相手の伝えたいことには常にギャップがある。それをいかにうまく翻訳をして、こちらの想いを汲み取ってもらい、よく書いてもらうか。要するに信頼関係が大事なので、人に愛される力が必要なのです。武井さんならできるとすぐにイメージが湧きましたし、即決でした。PRの印象が会社の印象になりますし、愛嬌とホスピタリティがないといけません。120点ですよ。
よくPRスタッフの採用について他社から相談を受けるのですが、ポイントは業務の重要度をしっかりと共有すること。PRは単なるタスクではなく、営業や開発と同じくらい会社にとって重要なプロジェクトです。
ネタがあるからリリースをするようなタスクだとモチベーションが上がらないし、やっていて楽しくない。PRは拡声器ではなく、採用や資金調達に追い風を作る大事なプロジェクトですから。リリースとブログが書けてメディアに知り合いがいるような声の大きい人材を求めがちですけど、そうじゃない。
Q最後に今後の展開とPRの活動について教えてください。
正直、我々がいなくてもキャリア女性の活用は進むと思っています。今後より男女の働き方はフラットになりますし、女性のライフイベントを配慮した制度だけではなく、企業の中で活躍する女性は増えます。ですが、我々のように特化したサービスがある意味は、スピードの加速です。放っておいたら10年かかる変化を5年、もしくは3年にすることができるのです。会社が成長するためにも、社会を成長させるためにも、いままで以上にPRに力を入れていきたいですね。
(取材日:2014年10月30日/取材:大川竜弥、撮影:竹内慎)
松本 洋介 氏
- 企業名
- 株式会社LiB
- 部署・役職
- 代表取締役
- 設立
- 2014-04-01
- 所在地
- 東京都渋谷区桜丘町30-15-206
- プロフィール
- 明治大学卒業後、2003年に株式会社リクルート入社。タウンワーク、ホットペッパーでは全国営業MVPとして受賞歴多数。新規事業開発室にてエルーカ創刊に携わった後、2007年4月「東証マザーズへの上場実現」をミッションとしてトレンダーズ株式会社にCOOとして入社。2010年6月より取締役就任。2012年10月営業取締役としてミッションであった東証マザーズへの上場を実現。2014年3月の退任時には、入社当時2億強だった売上を約20億まで牽引。2014年4月1日株式会社LiB創業、代表取締役就任。犬と自然とお肉が好き。