お金もPRも流れが大事!マネーフォワード社長が語る広報の重要性
資産管理や家計簿ツールとして人気の「マネーフォワード」。Googleベストアプリやグッドデザイン賞を受賞し、利用者数は170万人を突破。「価値あるサービスを創ったら次は露出のフェーズ」。ユーザー数を増やすために、辻庸介社長は創業時からPRを重視してきたと言います。
ステークホルダー全員がハッピーになることを
Q個人向けと法人向けのどちらにもサービスを提供していると思いますが、利用者数なども含めて教えていただけますか。
個人向けには、資産管理や会計管理サービスのマネーフォワードを提供していて、現在iPhoneやAndroid、Web上に170万人程度のユーザーがいます。去年のGoogleベストアプリや、グッドデザイン賞2014も受賞させていただきました。今後は管理だけでなく、どうやったらお金が溜まるか、お金の使い方が賢くなるかということも提案していく予定です。
また、法人向けにはクラウドで会計や請求書を管理できるサービスを提供していまして、中小企業の分野でもNo.1を目指しています。
僕らはテクノロジーの会社なので、社員約50名のうち6~7割がエンジニアやクリエイティブの人たち。ものづくり、サービス作りに興味も強みもあるので、テクノロジーの力を使って今まで面倒だった作業を簡単にするとか、よりクリエイティブなことに時間を割けるようにするみたいな、そういうことを実現していきたいと思っています。
Q創業からもうすぐ2年になります。周囲から期待されることは変わってきましたか。
私たちに求められていると感じるのは、テクノロジーオリエンテッド(技術志向)と市場でのスピード感です。今はベンチャー界隈に追い風が吹いているので、その間に結果を残すのは大事だと思うんですよね。いずれ逆風に変わってしまうことが考えられるので、皆さんにしっかり還元するといいますか。
ビジネスの基本はしっかりと収益を上げてユーザーに価値を提供することだと思いますし、ステークホルダー全員がハッピーになることをやらなければいけません。当然、ベンチャーキャピタルさんからの投資にリターンするのも僕らの仕事です。あとは、ユーザーの方に喜んでもらいつつ、社員がちゃんと自己実現もできるかも。
ベンチャーはPRでどんどん露出すべき
QこれまでのPRはどのように。
2012年12月に始めてからもうすぐ2年ですが、2013年の秋ごろまでは僕が一人でやっていました。自分で記者さんにメールやFacebookのチャットをして。もともと前職でマーケティングを担当していて、マネックスはPRが上手かったので勉強になりましたね。お金の分野だとその頃の記者さんと重なったり、知り合いがいたり、どういったことをやれば良いか、自分でだいたい分かっていたんです。自分の業務の20%をPRに充てていました。
Q創業時からPRを大事にしてきた理由は。
初めは価値あるサービスづくりが大切ですが、作ったらユーザー数を増やさなきゃいけません。いろいろなところに露出して知っていただくというフェーズが必要になりますよね。ベンチャーはお金がないので、マーケティングコストを抑えながら取り上げていただく機会を増やそうとしていました。
あとは、うち単体で取りあげていただくのが初めは難しかったので、ビジネスコンテストにも結構出ていました。IVSさんのローンチパッドに出て、見事決勝に進出したんですけど4位…。他にもTechCrunchさんのスタートアップバトルで決勝まで行ったんですが3位…。ただ、今年の米国大使館の起業家コンテストでは優勝しました。日本ベンチャーアワードの審査委員長賞の受賞もいい経験になりましたね。
Q社長自身がいろいろな場所で登壇したり、PRすべきでしょうか。
イベントに出なかったり、苦手だったりする会社や社長さんもいますが、僕はそれ以外のアピールの方法が浮かばなかったので出ています。もちろん、ただ単に出ればいいのかというとそうじゃない。イベントはもろ刃の剣で、ライバル企業にも情報を公開することになるじゃないですか。会社のステージやビジネスの戦略によって判断すれば良いと思います。ただ、そういうのを見て、関係者や社員のモチベーションが上がったりするので、すごく大事だとは思いますね。
1年で40名を採用。広報が採用にもたらす影響
Q現在の広報の方は専任として採用されたのでしょうか。
実は、ぜんぜん違うんです。当時は男が10人ほどの職場だったので、女性の方に入ってもらって、アシスタント兼広報兼総務兼…みたいな(笑)。元エンジニアで広報は未経験でした。広報系の仕事に興味があったらしいので、僕の仕事を引き継ぎながら勉強してもらっている感じです。
僕が担当のときは、当然広報以外にも仕事があるのでフォローができなかったり、記者の方と話せなかったりすることもありましたが、そのあたりのコミュニケーション数は圧倒的に増えています。カバー範囲も広く深くなって、会社が注目されていることを知ると、社内の空気も良くなりますよね。
特にエンジニアは、自分の作っているものへの反応が分かりにくいんです。ユーザーの声は極力拾うようにしていますが、メディアに取り上げられるのはやっぱり嬉しいし、やりがいも上がります。
あとは採用に良い影響が出ていますね。
Q広報が採用にも繋がっているということでしょうか。
お金のサービスへの課題感があるエンジニアとか、生活に密着した課題を解決するサービスを作りたいと言ってきてくれる人が多いんです。採用は超大事ですから、ベチャー企業は特に。昨年、今の広報の女性が入社した頃は10名でしたが、現在は50名。1年で40名が参加している計算になります。それでもいい人を集めるのには本当に苦労しています。
スキル、チームワーク、ビジョンに共感できる人材を
Q今回、専任の広報も採用したいと伺いましたが。
そうなんです。専属で広報だけをやってくれるスタッフが必要だなと思っています。僕らは、BtoBとBtoC向けにそれぞれのサービスがあり、発信するメディアが違えば、お付き合いする記者も違いますし幅が広いんです。
プロフェッショナルなスキルがあるに越したことはないですが、マネーフォワードという商品に対して、メディアの方に取り上げていただけるような広報のストーリーを組み立てられる力が大事だと思っています。
たとえば、社長の想い…社長の想いって基本的に社長が思い込んでいるだけのものなので(笑)、それをどう料理したら外に伝わりやすいかとか、取りあげてもらいやすいかとか、世の中の流れに乗せられるかとか、そういう料理の仕方を知っている人ですよね。
Qどのような素養のある人が望ましいですか。
コミュニケーション能力が高いとか、ストーリーテリング的な才能とか、信頼関係を作れるとか……要約すると人間力です。あとは、行動力。動かないといけないですからね。攻めの姿勢が必要かなと。失うものは何もないですから。
あと僕が面接でいつも見ているのは、「基本的な業務スキル」「チームワークができて一緒に働きたいと思える人格」「ビジョンに対する共鳴」の3つですね。いかにすごい能力を持っていて共感してくれた人でも、「一緒に働きたくない」と思ってしまう人がいると、チーム力は落ちてしまうじゃないですか。それは良くないので、この3つが高いレベルの人を採用するようにしています。
Q今後の方針は。
会社全体として、もっとユーザーに驚いてもらえるサービスを作るのが目標です。それをやるには120人くらい必要だと思います。オフィスが手狭になるので引越さないといけないですが、彼ら(彼女ら)が集中できるよう、落ち着いて開発できる環境がいいかなと。
Q最後に、PRパーソンが御社で働く醍醐味を教えてください。
猛スピードで成長するスタートアップ企業の顔として全てに携われるのですごく面白いし、BtoB・BtoCどちらの広報もやれます。会社と自分が一緒に成長する楽しさはもちろん、右肩上がりの業界でテクノロジーに触れられる楽しさもありますね。広報としてプロフェッショナルになれる環境だと思います。
(取材日:2014年10月24日/撮影:首藤 達広)
辻 庸介 氏
- 企業名
- 株式会社マネーフォワード
- 部署・役職
- 代表取締役社長CEO
- 設立
- 2012-05-01
- 所在地
- 東京都港区三田3-12-17 芝第3アメレックスビル8F
- プロフィール
- 京都大学農学部卒業後、ソニー株式会社へ入社。AIBO(アイボ)の経理部門などを担当し、2004年にマネックス証券へ出向(後に転籍)。2009年にはペンシルバニア大学ウォートン校に留学する。帰国後、COO補佐やマーケティング部長を経て、マネーフォワードを創業。代表取締役社長CEOに就任。