広報とタッグを組んで、大きなビジョンを伝えたい
2006年より音楽配信サービスを運営する株式会社 モンスター・ラボ。2014年2月から世界各国のITエンジニアをクライアントが自由に活用できるプラットフォーム「セカイラボ」を立ち上げました。IT業界を中心に一気に認知が高まった裏には、初めて採用した広報担当者・椎葉育美さんの力があったと言います。代表の鮄川(いながわ)氏に、広報担当者が会社に来て変わったことなどを伺いました。
創業から8年間、
広報担当者はいなかった
Qまずは貴社のサービス内容について教えてください。
現在弊社では、4つの事業を行っています。まずは音楽サービス事業。2006年の設立時にアーティストとリスナーを感性によって結びつけるサイト「monstar.fm」をスタートさせました。2010年からはレストランなど店舗向けのインターネット音楽放送「monstar.ch」で、世界の多様な音楽をユーザーに提供しています。それからWebサービス開発の事業、スマホの事業、そして2014年2月からは「セカイラボ」という新事業が立ち上がりました。
セカイラボは、ひとつの部門が独立した、弊社の100%子会社です。アジアに優秀なエンジニアは数多くいますが、日本語を通じて発注できるプラットフォームありませんでした。セカイラボは、日本語でアジアのエンジニアチームにアプリ開発を依頼できるクラウドソーシングサービスです。基本的には発注者と受注者の間でやり取りしていただきますが、案件によっては弊社が設計や検証を行うなどして、海外開発でトラブルになりがちな部分をサポートしています。
Qセカイラボは今年2月スタートとのことですが、IT業界ではすでに認知が広がっていますよね。
今年から8年目に入り、サービスの規模も拡大し、人も多くなりました。現在は東京で70名、中国で110名が働いています。ただ、広報やマーケティングの専任者は8年間いませんでした。2014年5月から、弊社で初めて広報専任の担当者、椎葉を採用しました。「セカイラボ」が広まったのは、椎葉による広報の力が大きかったと思います。全事業、全グループの広報を任せていますが、特に会社の軸になってきている「セカイラボ」にはウェイトを置いてPRしてもらっています。
Qこれまではどのように広報を行っていたのでしょうか?
創業時は5名でスタートしました。僕とエンジニア2名、全体を管理してくれる人、アーティストやレーベルへの営業担当。当然広報はいませんが、サービスを広めることの重要性は感じていました。サービスを開始して間もなく、たまたまプレスリリース配信サービスを見つけて、「こんなサービスがあるんだ」と「楽曲のイメージを色や言葉に代えて検索・購入できるサイト『monstar.fm』がオープン」というリリースを配信してみました。メディアから反響が来て、様々な媒体に取り上げていただくことができました。プレスリリースは定期的に配信していった方が良いと実感し、片手間ながらプレスリリースの配信は継続的に行っていました。
「それでも一緒にやってくれますか?」
Q広報専任の担当を採用しようと思ったきっかけは?
会社のステージとして、必要性を感じていました。サービスに一番思い入れを持って、一番理解しているのは創業者です。でも僕自身が片手間で、それを同じく片手間でしか広報できない社員に託したところで、リリースの内容に関しても練る時間がないし、リーチできる範囲も限られてくると思いました。
トップの思いや考えを汲み取って、僕自身が見えていない側面からもサービスの良さを伝えてくれるような、専任の広報が欲しいと思ったのです。椎葉を採用してみて、もっと早く専任の広報を置くべきだったと思いました。
Q実際に募集されたら、何名くらい応募がありましたか?
広報経験者の方から、営業をやっていた方まで、40名ほどの応募がありました。
Qその中で、椎葉さんを採用された決め手は?
採用基準はあまりなく、新しいサービスを一緒にワクワクしながら広げていけるようなマインドや行動力、人の良さを重視していました。椎葉の採用に関しては迷いがありませんでしたね。椎葉に会った時、プラスのオーラが出ていると感じました。これは採用してからわかったのですが、彼女はサービスや経営陣の良さを本質的に見抜いて表現できる人で、いい意味での図々しさと謙虚さのバランスを持っている人でした。ちょっと前のめりなところもありますが(笑)、イヤミがないんですよね。バランス感覚や経験、礼儀も知っている。いろんなものが詰まった上で、椎葉のキャラがあるのだなと。
また、弊社は海外に目を向けたサービスをしていますし、外国人籍の社員も多いので、英語力はもちろんのこと、国際的なコミュニケーション感覚もあればいいなとは思っていましたが、椎葉はそこも優れていたんです。知識や技術は教えられますが、その人の考え方や振る舞いは変えられるものではない。根本の部分が非常にしっかりしていたのが良かったですね。
外資系企業や大使館で働いていた椎葉から見たら、うちは何もないと思います。なので面接の時、カッコつけずに、ダメなところを全部出しました。「フタを空けてみたらダメだった」と思われたくなかった。うちは何もないということを話した上で、「それでも一緒にやってもらえますか?」と。一緒に考えて作っていってくれそうな感じだったんですよね。
日本の生産力を補う手段として
セカイラボを広めていきたい
Q椎葉さんにまず最初にやってもらった仕事は?
椎葉が入社したのが、「セカイラボ」リリースの直後だったので、セカイラボのPRをフル稼働でやってもらいました。プレスリリースを打ったり、各媒体とのコネクションを作ってもらったり。椎葉に広報を任せてから、メディアからの取材が週に1回は入るようになりました。社外から評判を聞いたりと、自分たちでも「セカイラボ」がIT業界で広まっているという感覚があります。
Q他にも椎葉さんが来てから変わったというところはありますか?
人数もそれなりに増えてきて、事業部も分かれていたりすると、どうしても社員同士の交流が少なくなりますし、経営陣の想いが届かなくなることもあります。現在椎葉は、ほぼ毎日社内ニュースを配信してくれています。新入社員のことなど、社内を行き来しながら社員とコミュニケーションを取ってくれています。あとはエンジニアが多いせいもあって、各人が自分たちの強みとか良さを自覚していなかったりするのですが、椎葉は客観的に良いところを褒めてくれるので、社内が明るくなりましたね。
Q今後の事業展開の中で広報担当者に求めることは何でしょうか?
国内でいうと、「セカイラボ」の認知度を上げたいですね。IT業界には広まりつつありますが、もう少し一般企業の企画職や管理職の方、ネットを見ていない人への認知度を高めていきたいと思っています。それに伴って、露出する媒体もIT業界の人が見るものだけでなく、もう少し広いビジネス向けの媒体だったり、テレビにも取り上げられるようになりたいなと。
また今後は、さらなるグローバル化にチャレンジしていきたいです。マーケットもサービスも海外に進出させて、海外のメディアにも露出していきたいですね。資金調達も考えているので、海外の投資家の目にも触れられればと考えています。
グローバルソーシングは、日本が生産力を補う一つの手段です。物流が発生しないデジタルの分野では非常にやりやすいと思っています。日本の人口減少からくる生産力の低下の解決策の一つとして、成長スピードが著しい新興国も活用すべきだということを「セカイラボ」で示すためにも、もっと広めていきたいですね。
サービスを広める時、期待値が実力を上回っていることはあるかと思います。それは決して悪いことではなく、会社のバリューを上げて、器を大きく見せていくことは重要だなと。中身は後からついてきます。有言実行を前提に、トップとしての大きなビジョンを、広報とタッグを組んできちんと伝えていきたいですね。
(取材日:2014年9月9日/撮影:首藤 達広)
鮄川 宏樹 氏
- 企業名
- 株式会社 モンスター・ラボ
- 部署・役職
- 代表取締役社長
- 設立
- 2006-02-03
- 所在地
- 東京都目黒区中目黒3-3-2 EGビル7階
- プロフィール
- 1975年生まれ。島根県出身。1998年、神戸大学理学部数学科卒。2006年、豪ボンド大学/BBT-MBA取得。プライスウォーターハウスコンサルタント(現:IBM)ほか2社で活躍後、2006年2月、MBAプログラムで描いたビジネスプランを事業化して株式会社モンスター・ラボを創業。創業8年目の今年(2014年)、アジアをはじめとする世界各国のITエンジニアを結び、技術提供するプラットフォーム“セカイラボ”をオープンした。