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成長するのは「明るいバカ」。実体験から生まれた「リノベる。バリュー」

中古マンションのリノベーションに必要な物件情報、設計・施工、専用ローンなどをワンストップで提供するリノベる株式会社。不動産業界の革新的なビジネスモデルとして注目される同社の代表・山下智弘氏に、PRの方針と成長する人物像について伺った。

後悔して実感した
「まだ使える建物は活かすことができる」


Q最近はリノベーションという単語を良く聞くようになりました。改めて事業モデルを教えてください。


当社は、中古マンションのリノベーションに必要な物件情報、設計・施工、リノベーション専用ローンなどをワンストップで提供しています。日本のマンション市場では、10人中9人が新築を買われています。中古の市場は1割。ただそれも、リフォームされて綺麗になっているものがほとんどですよね。

僕たちは、お客さんに古いマンションを古いまま買ってもらいます。その後、お客さんに合わせて、オーダーメイドで造っていくのです。コンクリートの躯体部分だけを残して、間仕切壁、お風呂、キッチン、給排水管もすべて、お客さんの要望に合わせて造り直します。

リノベーションの認知は、2009年に「リノベーション住宅推進協議会」が設立されたあたりから少しずつ広がってきました。住宅の購入を検討されている方の間で、「リノベーション」という言葉は9割くらいの方が知っていますが、正しい意味を知っている人は1割にも満たない状況です。リフォームとの違いを聞かれることもあります。「リフォーム」は老朽化した建物を当初の性能に戻すこと、「リノベーション」は既存の建物を改修工事して、用途や機能を変更し価値を高めることです。

 

Q2004年に今の「リノベる。」の原型となるサービスを立ち上げたきっかけは。


リノベる1以前勤めていた大手ゼネコンでの経験がきっかけです。僕の仕事は、開発業者の要望に応じて土地を仕入れることでした。好立地に住んでいる方のところへ立ち退きの話をしに行くことも多く、自分の仕事に疑問を持つようになっていました。

ある時、「ここは亡くなった主人が買ってくれたマンションで、巣立った子ども達との思い出が詰まっているから立ち退かない」という年配の女性と出会い、なんとか立ち退きを承諾していただきました。後日同じ場所に新築のマンションが建ったのを見に行ったのですが、その時に、新しいマンションを見上げるあの女性が、目に後悔の涙を浮かべていたのです。

プロジェクトを成し遂げた達成感よりも、罪悪感が残りました。この経験から、まだ使える建物は、それを活かすことができるのではないかと考えるようになり、「リノベーション事業」の構想作りを始めたのです。

 

Qそこが原点なんですね。収益自体はどのように。


僕たちは、仲介手数料は一切いただきません。ビジネスモデルとしては大きく2つ。ひとつは我々が工事を請け負う時の工事費。もうひとつは、パートナー企業の加盟金です。現在の加盟店は不動産会社や施工会社など全国220社に上ります。加盟金は「リノベる。大学」の授業料と言い換えても良いかもしれません。

 

Q「リノベる。大学」というのは教育システムみたいなものでしょうか。


もともとマーケットがないところに生み出したサービスですので、リノベーションの工事を専門に行っている業者はありませんでした。そこで僕たちは「リノベる。大学」という学習の場をつくりました。eラーニングをはじめ、テレビ会議や集合研修など、加盟店の方たちに中古流通について学んでいただく講座を用意しています。中古流通のオペレーションに慣れていただき、利益を出していただく。パートナー企業には、当社と仕事をして成功したと思っていただき、良い関係を築いていければと思っています。

 

 

メディア掲載が目的ではなく、
やりたいことがあるからやる。


QこれまでのPR体制について教えてください。


広報の専任はいないので、兼務でやってもらっている状況です。僕の方でも、週に何時間を広報に充てるかを決めています。フェーズによって何にどのくらい時間を割くかを考えているのですが、今は全体の仕事時間の10~15%を広報業務に充てています。

 

Q建築の専門誌だけでなく、ビジネス誌への露出も多い印象です。PRの方針というのはありますか。


方針というほどではありませんが、「メディアに取り上げてもらいたいから何かを仕掛ける」という考え方には疑問を持っています。自分たちのやりたいことがあるからやるのであって、媒体に載ることが目的になると、おかしな方向にいく可能性があるなと。実は、こちらから仕掛けて掲載されたことはなく、たまたま取り上げていただいている状況です。

リノベる2

 

Q山下社長自身がメディアへ出る際に注意していることはありますか。


取材を受けたりすることは営業と同じだと思っています。専門用語を使わずに、相手にとってわかりやすい言葉で、会話のキャッチボールをしながら進めていくようにしています。

 

 

求める人材は「明るいバカ」


Q広報専任を探しているとのことですが、求める人材像は。


広報としてのスペシャリティと、心の部分のバランスを見ています。当社は昔、人員拡充に迫られて深く考えずに採用をしていたことがありました。その結果、まとまらない組織となって、既存メンバーが次々と辞め、採用前より人が減るという結果になってしまったのです。

これはまずいと思い、会社が目指すものや僕の想いをまとめて、求める人材が持つべきマインド「リノベる。バリュー」を作成しました。「目の前のハードルは解除するためにあるものだという思考で行動できているか」、「目標は達成するために立てるもので、そこから逆算する発想で業務設計を実施しているか」など、31項目で構成されています。

その中でも特に大切にしている3つがありまして、「明るいバカ」「謙虚さ」「感謝の気持ち」です。

リノベる3

 

Q「明るいバカ」はユニークですね(笑)。どういう意味なのでしょうか。


成長する人間は明るいし、自分が「何ができていないか」をわかっています。自分は賢いと思った時点で成長は止まります。バカだからこそ貪欲に努力することができるのだと思います。あとは、僕がこいつとだったらやりたいと思えるかが重要ですね。

 

Q社内に「リノベる。バリュー」を浸透させるにはどうしていますか。31項目もあると覚えるのが大変そうです。


毎週月曜日に、全国をテレビ会議でつないで全社研修を行っています。内容は自慢大会です。「合コンで気に入った子がいた。“ゴール逆算思考”でデートに誘った」「夫がご飯を作って待ってくれていて“感謝の気持ち”を思い出した」など、日常の行動で「リノべる。バリュー」のどの項目に触れたかを自慢し合うんです。各項目が具体的なエピソードと結びつくので、自然と「リノベる。バリュー」が浸透していると思います。

 

 

ネタをどう料理するかが
広報の腕の見せ所


Q広報の方に任せたい業務は。


世の中に会社のことを発信してもらうので、僕と近い距離にいてもらえればと。秘書的な役割もお願いできればと思っています。まあ、独立して今年で10年目なんですが、実はその間、僕の秘書は3人変わってるんですよね。嫁からも、秘書はもう女性は無理だから、ちょっと図太い男性の方がいいよと言われています(笑)。

 

Q山下社長の熱量に押されてしまうんですかね(笑)


リノベる4僕の言い方がきついんだと思います(笑)。学生時代にラグビーを夢中になってやっていたんですが、ラグビーって、ゴールに向かうためには味方も踏んでいくんですね。仲間だと思って一瞬でも踏むのをためらうと、その隙に敵からタックルされてしまう。

なので業務でも、「こいつはいいやつだから」と躊躇したりせず、何でも言ってしまうのがいけないのかもしれません。本当はありがたいし、いいやつだと思っているんですが、仕事となると一緒に勝ちに行きたいと思ってしまう。そんな僕を受け入れてくれて、広報の戦略を立てるところから一緒にやってもらえる人だと嬉しいですね。しんどいと思いますが、めちゃくちゃ鍛えられると思います。新しいことだらけで刺激的ですし、面白いことは約束できます。

 

Qこれからの事業展開について教えてください。


来期はよりお客様にとって仕上げ材や設備を選んでいただきやすくするような新商品を考えています。戸建てのリノベーションも展開していく予定です。あとは海外への進出ですね。台湾で始まることは決まっています。栄えている街なので、新築を建てる大手やデベロッパーも入ってきている状況ですが、中古物件の価値を上げて古いものを流通させていきたいと考えています。

PRする素材は生まれてくるので、ネタはたくさんあります。そのネタをどう配置して見せていくかは、広報担当者になってくれた方の腕の見せ所かなと思います。

 

(取材日:2014年10月2日/撮影:首藤 達広)

山下 智弘 氏

企業名
リノベる株式会社
部署・役職
代表取締役
設立
2010-04-01
所在地
東京都渋谷区千駄ヶ谷2丁目9番6号 バルビゾン3番館 201号
URL
http://www.renoveru.co.jp/
プロフィール
1974年生まれ。ゼネコン、デザイン事務所、家具工房などを経て、2003年よりデザイン事務所field設立。2004年、株式会社esを設立し代表取締役に就任。2010年より中古住宅のリノベーションに特化したリノベる株式会社を設立。同年よりリノベーション住宅推進協議会の理事も務める。

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