【提言・アピール】原発廃炉費用を新電力に負担させるべきでない!

NPO法人太陽光発電所ネットワークは、経産省「東京電力改革・1F問題委員会」と「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」で審議し、閣議を経て政府案となりつつある「原発の廃炉費用や事故処理費を国民や新電力に負担を求める問題」は、理にかなわず不当なものであることを表明するとともに、会員の総意として、以下の論点を踏まえた施策とすることを求めます。1.原発は危険性だけでなくコストも高いことを前提にすること2.電力自由化・発送電分離のスタート時には新電力の育成を最大限考慮すること3.原発費用の「過去分」請求は不当!4.原発廃炉税など別枠で費用負担額を明確にして国民に問うべき5.安全神話を流布させてきた責任を棚に上げての費用負担論は認められない!6.電力自由化・発送電分離の趣旨に沿った内容にすること7.責任を明確にすること8.節度のある再生可能エネルギーの普及をはかること

 経産省の「東京電力改革・1F問題委員会」(東電問題委員会)と「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」(貫徹小委員会、ワーキングを含む)で審議し、閣議を経て政府案となりつつある「原発の廃炉費用や事故処理費を国民や新電力に負担を求める問題」は、理にかなわず不当なものであることを表明するとともに、グリーンな太陽光発電事業者であり、電力の消費者でもあるNPO法人太陽光発電所ネットワークの会員の総意として、上記の政府案を撤回し、以下の論点を踏まえた施策とすることを要求します。

 

1.原発は危険性だけでなくコストも高いことを前提にすること

 経産省は12月9日、福島原発事故処理がこれまでの11兆円から21.5兆円になることを公表しました [1]。これまで政府や電力業界は他の電源に比べ「原発のコストは安い」と説明し続けてきましたが、廃炉さらに福島原発事故の後処理費用の負担について、事故を起こした東電だけでなく、その他の原発を持つ大手電力を合わせても賄えないことを自ら認めたことになります。

 今後の原発の施策では「安全神話」が存在せず危険な電源であることとともに、「原発はコストが高い」ことを前提に対応することを求めます。

 

2.電力自由化・発送電分離のスタート時には新電力の育成を最大限考慮すること

 これまで独占的に電気事業運営を行ってきた一般電気事業者も、発送電分離がなされることで、公平な条件のもとでの競争が可能となります。新たに業種の壁を乗り越えて参入し、地産地消を体現する種々の新電力と競争しつつ、共存することを、電気の消費者でもあり生産者でもある私たちは望みます。

 そのためには、新たな産業や制度を施行する際、単純に競争の渦中に置くのではなく、新規参入してきた新電力には猶予期間を設けるなど、助走を後押しする施策とともに育成が必要です。

 託送手段を持たず、さまざまなハンデを持ち、直接原発に関わらない新電力に、0.24兆円もの廃炉費用を託送料金に上乗せして徴収することは、重い経営的負担を負わせることとなり、電力自由化をも停滞させるものです。これにより一般標準家庭の電気料金は月平均18円の負担増となることから、即刻撤回すべきです。

 

3.原発費用の「過去分」請求は不当!

 原発事故後、政府は「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」を設置し、原発を持つ大手電力会社が事故に備えて、賠償費用を負担金として積み立てる仕組みを整えました。経産省は、過去の賠償制度には不備があったとし、1966年までさかのぼった分の負担金約2.4兆円を、2020年から40年にわたって託送料金に上乗せすることが伝えられています。この請求には大手電力から乗り換えた新電力ユーザーも含まれており、新電力の負担額は年間60億円にのぼります。

 これは、発電コストが安いから建設・稼働させるのだとして、強引に原発を推進してきた政府・電力業界の自らの虚偽を認めるものです。賠償費用が嵩んだから新電力も含めて負担を求めるというのは、社会的公正さの視点から認められません。受益者負担の原則からも、当然これまで利益を受け取っていない新電力に負担を求めるのは論外です。

 このような根拠のない「過去分」請求は当然受け入れられるものではなく、強く撤回を要求します。

 

4.原発廃炉税など別枠で費用負担額を明確にして国民に問うべき

 本来、再稼働すべきではありませんが、再稼働予定の原発の廃炉についてはこれまで通り、各電力会社の負担とし、各電力会社の電気料金で賄い、契約者以外の消費者に求めないとするのが当たり前の考え方です。

 もしも政府が国民への負担を求めるのであれば、国会審議を必要とせず、経済産業相が恣意的に決める託送料金という隠れ蓑を使うのではなく、国と東電の責任を明確にして名実ともに企業再生を図りながら、廃炉の負担費用については税金などで別枠にし、費用負担額を明らかにした形で国民に問うべきです。

 

5.安全神話を流布させてきた責任を棚に上げての費用負担論は認められない!

 12月14日の委員会で示された東電改革提言案は、20日にも最終報告書としてとりまとめられ、閣議決定される方向になっています。こうした行政府の横暴なプロセスと、国が私企業の「過去分」費用の追加徴収にお墨付きを与えるという、前代未聞の自由主義経済のルール破りのやり方は、通常の商取引ではあり得ないことであり、供給側が自己責任で処理すべきです。

 

6.電力自由化・発送電分離の趣旨に沿った内容にすること

 資源エネルギー庁ホームページの「電力の小売全面自由化」のメニューに「あなたに合った電気を選ぶ時代へ」のキャッチフレーズが掲げてあります[2]。これは、自分のライフスタイルに合わせたエネルギーサービスを受けられ、選択と競争により電気料金を安くし、そのためのビジネスが多様に生まれることを目的に電力自由化を進めようという経産省自身の考えを示したものです。電力自由化は、再生可能エネルギーによる発電が促進されることで電気の地産地消を実現し、スマートメーターやHEMSなどの見える化を通じて省エネが進み、なおかつ地球温暖化防止にも貢献できるのです。これは発電者であり、消費者である私たちの望む方向です。

 しかし今回の経産省の提案は、上記の電力自由化・発送電分離の新制度化の多くの目的に沿わないことは自明です。未来社会を構築する努力を、これまで閉ざされた人々によって引き起こされた原発と、その事故の負の遺産で混乱させることは即時に辞め、本来の目的に沿った形で進めるべきです。

 

7.責任を明確にすること

 経産省が廃炉・賠償費用について新たに試算したところ、その額は大幅に膨れあがり、国民に公表しなければならない状態となりました。「なぜ予想外の膨大な費用がかかるような状態に陥ったのか?」「報告を怠ったのか?」を、福島原発事故という未曾有の事故を検証しつつ、第1の当事者である東京電力が財務状況を明らかにするとともに、試算の引き上げに追い込んだものとその責任について、公正取引委員会を入れてはっきりすべきです。これまでの国および電力会社の甘い判断が問われており、廃炉・賠償費用の負担のあり方はこの責任が明確になることで決まると確信します。

 

8.節度のある再生可能エネルギーの普及をはかること

「新電力に乗り換えた利用者も自由化前は原発でつくられた電気を使っていたから負担を求める」という経産省は、電力自由化を長期にわたり阻止し、電力の選択の自由を拒んできた自らの施策の不備を自省すべきです。

同様にFIT法の施行でも同法の持つ投機的側面について、施行にあたって十分に考慮されなかったことが、昨今、再生可能エネルギーの拡大による森林伐採や水源破壊、景観面や安全面などに深刻な問題が浮上していることにも注視するべきです。地域の人々の納得のいく再生可能エネルギーの普及となるよう、真摯に対処することを求めます。

 

[1] 福島事故及びこれに関連する確保すべき資金の全体像と東電と国の役割分担(参考資料)

http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/energy_environment/touden_1f/pdf/006_s01_00.pdf

[2] 電力小売全面自由化パンフレット「あなたに合った電力を選べる時代へ」

http://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/electricity_liberalization/pdf/electricity_liberalization_flyer.pdf

 

【本件に関するお問い合せ】

NPO法人太陽光発電所ネットワーク(http://www.greenenergy.jp

TEL: 03-5805-3577 FAX: 03-5805-3588 Email: info@greenenergy.jp



ログインするとメディアの方限定で公開されている
お問い合わせ先や情報がご覧いただけます

企業情報

企業名 特定非営利活動法人太陽光発電所ネットワーク
代表者名 都筑 建
業種 その他サービス

コラム

    特定非営利活動法人太陽光発電所ネットワークの
    関連プレスリリース

    特定非営利活動法人太陽光発電所ネットワークの
    関連プレスリリースをもっと見る

    • クリックして、タイトル・URLをコピーします
    • facebook
    • line
    • このエントリーをはてなブックマークに追加

    プレスリリース詳細検索

    キーワード

    配信日(期間)

    年  月  日 〜 年  月 

    カテゴリ

    業界(ジャンル)

    地域