透析患者の70%以上がうつ病・抑うつ経験者!?患者を取り巻く環境の実態を調査

透析歴30年の患者が代表を務める、腎臓病・透析患者向けポータルサイト「じんラボ」を運営する株式会社ペイシェントフッド(東京都世田谷区、代表取締役:宿野部武志)は、腎臓病・透析患者を対象に『メンタルケア』についてアンケート調査を行いました。

【調査概要】

人工透析が日本に導入されたのは1950年代と言われていますが、医療技術の進歩や透析器の性能向上により腎不全患者のQOL(生活の質)は飛躍的に向上し、近年の透析療法は長期生存が可能になりました。

その反面、透析導入時あるいは長期化する透析療法に伴う心の問題が注目されるようになり、患者の抱えるストレスをケアしながら、身体的治療をすることが重要とする『サイコネフロロジー(腎臓精神医学)』の研究が進められ、少しずつ浸透し始めてきました。

そこで、患者さんを取り巻く環境の実態調査のため、「メンタルケア」についてアンケートを実施しました。

 

 ◇調査方法:WEBアンケート

 ◇調査エリア:全国

 ◇調査対象:腎臓病、透析患者 男女年齢不問

 ◇調査期間:2017年3月31日~4月7日

 ◇有効回答数:95名

 

(1)腎臓病や透析がきっかけで、うつ病を発症したことがありますか(n=95)

   はい、診断を受けて現在も症状が続いている.................................5(5.3%)

   はい、過去診断を受けたが現在症状はない...................................13 (13.7%)

   診察は受けていないが、現在うつ病と思われる症状がある........18(18.9%)

   診察は受けていないが、過去うつ病と思われる症状があった....31(32.6%)

   今までうつ病と思われる症状はない..............................................28(29.5%)

 

心療内科や精神科などを受診し、うつ病の診断を受けた方が18名(19.0%)。受診はしていないものの、うつ病と思われる症状を経験した方も含めると全体の7割以上(70.5%)が腎臓病や透析をきっかけにうつ病や抑うつ状態になるという結果になりました。

またその症状は「気分の落ち込み、憂鬱、絶望的な気持ち」が56人(58.9%)と最も多く、次いで「意欲の低下」、「不眠症」が41名(43.1%)と同数でした。

 

腎機能が低下し、末期の腎不全になると現在の医療では完治することはなく、透析療法の導入を余儀なくされます。患者は透析療法なしでは生きていくことができず、腎臓移植をしない限り透析療法は生涯続き、機械に支えられて生命を維持する特殊な環境におかれます。

しかし透析を継続するには仕事、家族、人間関係、経済面、食事など、今までの生活を大きく変えなければならず、生き方や人生観にまで影響を及ぼします。特に食事や水分制限、運動は医師の指示のもとに患者自身が管理・ケアしなくてはならず、透析患者特有の非常に大きな不安やストレスとなります。

さらには日常の透析の身体的苦痛に耐えながら、薬の副作用や合併症、病気の予後等、治療に対する不安にも苛まれます。これらの不安やストレスの要因となるさまざまな苦悩が、透析導入時に一気に押し寄せることから、

精神的に追い詰められて抑うつ状態になることが多いといわれています。

※上図は社会福祉士として相談を受けてきた経験、患者当事者としての実体験、
参考文献を元に透析導入告知以降の患者の心理的段階を独自にまとめた表

 

透析患者はたとえ透析導入をある程度予測していたとしても、医師から「透析導入」の告知を受けると相当のショックを受け、絶望、不信、怒りなどのさまざまな感情と葛藤します。これらの気持ちを整理して乗り越えていくための必要な時間はかなりの個人差があり、誰もが受容にたどり着くとは限りません。

導入後も不信、否認、不安、いらだちと何度も行き来し、生命維持のために透析は受けるもののイヤでたまらない、透析を受け入れられないという心と身体が乖離した状態が続きます。そしてそんな心理状態のまま生涯を終えるケースもあり、透析患者にとってメンタルケアは必要不可欠といえます。

 

(2)現在の通院施設には、メンタルケアの相談ができる環境はありますか【複数回答可】(n=95)

   心療内科や精神神経科の専門医がおり、診療・相談ができる...... 9

   院内カウンセラーがいて相談できる体制になっている................. 5

   院内スタッフによる相談窓口がある................................................ 4

   その他.................................................................................................. 4

   提携しているメンタルクリニックがある........................................ 2

   気にしたことがないから分からない............................................... 14

   特に相談できる環境はない...........................................................58

 

(3)通院施設内にメンタルケアの相談ができる環境があれば利用しますか(n=95)

   ぜひ利用したい.............................20(21.1%)

   機会があれば利用する.................44(46.3%)

   分からない.....................................25(26.3%)

   利用しない...................................... 6(6.3%)

 

「現在の通院施設には、メンタルケアの相談ができる環境はありますか」の問いには約6割(61.1%)もの患者が「特に相談できる環境はない」と回答しました。また「通院施設内にメンタルケアの相談ができる環境があれば利用しますか」の問いには、利用に対して肯定的な「ぜひ利用したい」「機会があれば利用する」と回答した方が全体の67.4%にのぼり、患者の要望に医療者側が十分対応できていない実情が分かる結果となりました。

 

一方、記述回答には、「通院施設は一生通い続けることを考えると、気まずくなりたくない」、「施設や治療に対する不満や不安は相談しづらい」などの理由から、通院施設内でのメンタルケア相談には躊躇する意見や、同じ透析患者だからこそ理解し支え合うことができる「ピアサポート」、「気軽にいつでも相談できるホットラインや専用WEBサイト」などを要望する意見が多く見られました。

 

同じ透析患者といっても病状、抱える苦悩、患者の性格、取り巻く環境など千差万別で、相談したい相手や方法も一様ではありません。医療者のみならず、透析に関わる誰もが「サイコネフロロジー」=透析において、メンタルケアは決して切り離すことができない非常に重要なことと捉え、

 

『患者の必要とするタイミングに、さまざまなチャンネルの中から患者が自分に合ったメンタルケアを選択できる』

 

そのようなサポート体制の整備が早急に取り組むべき課題ではないでしょうか

 

 

▽▽▽▽▽

参考文献

*春木繁一 『透析患者のこころを受けとめる・支えるサイコネフロロジーの臨床』

メディカ出版,30-40,64-80,93-102,112-119

*竹本与志人,杉山京,桐野匡史,村社卓 『血液透析患者の心理的段階とその変容過程』

岡山県立大学保健福祉学部紀要 第22巻1号2015年 81-89

*森田夏実  『血液透析療法を受けながら生活している 慢性腎不全患者の“気持ち”の構造』

聖路加看護学会誌 Vol.12 No.2 July 2008

*田上功,渡會丹和子  『血液透析療法を受ける患者の心理的特徴に関する研究の分析』

医療保健学研究 2号:175-183頁 (2011) ISSN 2185-2227

*臨床工学技士『TAKAの本音』ブログより

「透析導入のショックから立ち直るまでの透析患者心理について」

http://cetaka.com/dialysis-patient/

 

 

【関連するサイト】

▼株式会社ペイシェントフッドHP

http://www.patienthood.net/

▼腎臓病・透析患者が集まるポータルサイト『じんラボ』HP

http://www.jinlab.jp/document/guides.html

▼『じんラボ』公式facebookページ

https://www.facebook.com/Jinlab.jp

 

【株式会社ペイシェントフッドについて】

本社:〒157-0062 東京都世田谷区南烏山6-33-1 サンライズプラザビル501

代表者:代表取締役 宿野部武志

設立:2010年9月1日

Tel:03-6279-5669

Mail:info@patienthood.net

事業内容:医療施設・企業向けコンサルティング、患者・家族向けポータルサイトの運営、講演・執筆活動、各種イベント開催

 

 



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企業名 株式会社ペイシェントフッド
代表者名 宿野部 武志
業種 医療・健康

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