~トレンド総研 レポート~ 冬に気になる「電気料金」…その裏側を調査 年間約1万円の「再エネ賦課金」、知っている人はわずか1割台

生活者の意識・実態に関する調査を行うトレンド総研(渋谷区)は、このたび、「電気料金」をテーマにレポートします。

冬、暖房などを使う機会が増えると気になるのが「電気料金」。エアコンを使用しない季節と比べて、金額が増えるというご家庭も多いのではないでしょうか。

 

この電気料金を左右しているのは、「使用量」だけではありません。実は、家庭の電気料金には、「再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)」の費用が上乗せされているのです。

 

「再エネ賦課金」とは、「FIT(固定価格買取制度)」にもとづいて設定されています。「FIT」とは、太陽光や風力、地熱といった再生可能エネルギーの導入拡大を図ることを目的に、国が定めた仕組みです。

 

この制度により電力会社は、再生可能エネルギーで発電された電気を、割高な価格で一定期間買い取ることが義務づけられており、制度がはじまった2012年度以降、賦課金は大幅に増えています。

 

 

そこで今回トレンド総研では、20~40代の主婦を対象に、「家庭の電気料金」に関する調査を実施。また、エネルギー分野の専門家である、電力中央研究所の朝野賢司氏へのインタビューも行いました。

 

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<レポートサマリー>

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【調査結果】 「家庭の電気料金」に関する意識調査

・主婦の8割超が、「冬は、他の季節に比べて、電気料金が高くなりやすいと思う」と回答。

・一方で、使用者の負担となっている、「再エネ賦課金」が徴収されている事実を「知っていた」人はわずか17%。

 

【専門家コメント】 朝野賢司氏に聞く、「日本のエネルギー供給」の実態と課題

・再生可能エネルギーの買取価格は、火力や原子力などの発電コストと比べてかなり割高に設定されている。

・実際に支払っている「再エネ賦課金」の額は、家庭に届く「電気ご使用量のお知らせ」(検針票)で確認可能。

・「再エネ賦課金」は年々増大しており、将来にわたっても大幅に増加する見通し。2030年度の時点では最大で3.6兆円となる試算(電力中央研究所)が出ており、その家計の負担を消費税に置き換えると、約1.6%分と同程度になる。

・今後ますます発電量が増えていくと予想される、太陽光などの再生可能エネルギーには、「コストが割高」「発電量が不安定」などの課題がある。こうした中では、再生可能エネルギーだけでなく、火力、原子力など、さまざまなエネルギーをミックスした電源構成=「エネルギーミックス」が重要になる。

 

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【調査結果】 「家庭の電気料金」に関する意識調査

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はじめに、20~40代の主婦500名を対象に、「家庭の電気料金」に関する意識調査を行いました。

 

[調査概要]

・調査対象:20~40代既婚女性500名

・調査方法:インターネット調査

・調査期間:2017年11月20日~11月21日

 

◆冬は「電気料金が高くなりやすい」、主婦の8割超が回答

まず、「冬は、他の季節に比べて、電気料金が高くなりやすいと思いますか?」と質問したところ、主婦の85%が「そう思う」と回答。

 

◆電気料金に上乗せされる「再エネ賦課金」、知っていた人はわずか17%

そして、「使用量」に加えて、電気料金を左右しているのが「再エネ賦課金」です。電力会社は、再生可能エネルギーで発電された電気を、割高な価格で一定期間、発電事業者から買い取ることが義務づけられています。そして、その費用は「再エネ賦課金」として、企業や家庭といった電気の使用者が負担しています。

 

しかし、今回の調査対象者に、再エネ賦課金が徴収されている事実について聞いたところ、知っていた人はわずか17%でした。

 

現在、「再エネ賦課金」の支払額は標準的な家庭で年間約1万円となっています。

 

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【専門家コメント】 朝野賢司氏に聞く、「日本のエネルギー供給」の実態と課題

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上記の調査結果をふまえて、今回は「日本のエネルギー供給」の実態と課題について、日本のエネルギー事情に詳しい、電力中央研究所の朝野賢司氏にお話を伺いました。

 

Q:「再エネ賦課金」について教えてください。

「再エネ賦課金」は、2012年7月1日より施行されている、「FIT(固定価格買取制度)」といわれる制度にもとづいて設定されています。「FIT」とは、再生可能エネルギーの導入拡大を図ることを目的に、国が定めた仕組みのことです。電力会社はこの制度により、再生可能エネルギーで発電された電気を、割高な価格で一定期間買い取ることを義務づけられています。

 

そして、再生可能エネルギーの買取価格は、火力や原子力などの発電コストと比べてかなり割高に設定されています。

 

家庭の電気料金の場合は、基本的には全ての人が、使用量に応じて支払うので、使用量が多いほど、「再エネ賦課金」の支払額も増えるということになります。

 

Q:「再エネ賦課金」による負担額はどれくらいですか?

実際に支払っている「再エネ賦課金」は、家庭に届く「電気ご使用量のお知らせ」(検針票)に記載されています。必ず「再エネ賦課金」という欄がありますので、ぜひ負担額を確認してみてください。

 

標準家庭の電力使用量を1カ月300kWh(※1)とした場合、今年度の「再エネ賦課金」単価である2.64円/kWhをかけると792円が電気料金に加算されます。これが、夏や冬などの電気の使用量が多い季節の場合、より賦課金の額も増えます。年間で計算すると、約1万円と意外と多くの金額を負担していることがわかるのではないでしょうか。

 

 

※1:Wh(ワットアワー)は、電気を使った量をあらわします。

*電力量(Wh)=電力(W)×使用時間(h)

<例>100Wの電球を1時間使用すれば、消費電力量は100(W)×1(h)=100Wh、

10時間使用すれば、100(W)×10(h)=1,000Wh=1 kWh(キロワットアワー)となります。

 

Q:将来の負担額の見通しはどれくらいですか?

「再エネ賦課金」の負担額は、再生可能エネルギーの急拡大に伴い増加しており、初年度の2012年度は年間約800円だったものが、今年度は約1万円近くにまで増えています。国全体でみると賦課金の額は約2.1兆円です。これは消費税約1%分の税収に相当します(※2)。さらに、将来にわたっても大幅に増加する見通しで、電力中央研究所の試算では、2030年度における賦課金を3.6兆円と見込んでおり、これは消費税に置き換えると、約1.6%分と同じくらいの計算(※3)になります。

 

そして、消費税は、低所得者ほど税負担率が大きくなるため、よく「逆進性が強い」と言われますが、「再エネ賦課金」も同じです。つまり、同じ電力量を使用すればかかる費用は同じになるため、富裕層よりもそうでない家庭のほうが、家計に対する影響は大きくなります。

 

現在、安倍政権が消費税を2%上げるのに、大変慎重な手続きをしていますが、一方では、「再エネ賦課金」によって消費税約1.6%分に相当する負担が家計に生じてしまっているということになります。

 

※2:消費税1%の税収は約2.2兆円と言われています。

※3:2.2兆円(消費税1%の税収)×1.6=3.52兆円と計算しています。

 

Q:今後日本はどうしたら良いでしょうか。

今後、再生可能エネルギーによる発電量はますます増え、それに伴い「再エネ賦課金」による負担も増加していくことが予想されます。

 

そのため、再生可能エネルギーだけでなく、火力、原子力など、さまざまな発電方法をミックスした電源構成=「エネルギーミックス」が重要となります。政府および電力会社はさまざまな発電コストの電源をバランスよくミックスすることで、コストの引き下げを目指しています。

 

また、再生可能エネルギーは、発電量が天候に左右され不安定なため、火力発電などによる調整電源の確保が非常に重要になってきます。コスト面だけでなく、こうした安定供給などの視点からもエネルギーミックスは重要です。

 

 

「再エネ賦課金」は一般生活者が知らないうちに、どんどんあがっています。まずは、日本のエネルギー事情について正しい理解をした上で、消費者みずからが考える必要があると思います。

 

<専門家プロフィール>

朝野賢司(あさの・けんじ)

電力中央研究所社会経済研究所上席研究員

1974年、福岡県生まれ。京都大学大学院地球環境学舎にて地球環境学博士号を取得。産業技術総合研究所バイオマス研究センター特別研究員を経て、2007年電力中央研究所へ入所。2015年4月~一橋大学イノベーション研究センター特任講師。2016年4月~「再生可能エネルギー大量導入への対応策の検討」課題責任者。著書に『再生可能エネルギー政策論 買取制度の落とし穴』(エネルギーフォーラム)。



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