サービスの先にあるものを伝えたい
「3分で旬のニュースをまとめ読み」をキャッチフレーズに、ユーザーの興味に合ったニュースや記事を配信する情報キュレーションアプリ「グノシー」。リニューアルを重ねながら、2014年9月で600万ダウンロードを突破しました。大学院生時代にサービスを立ち上げた代表の福島良典さんに、同社での広報の位置付けや企業文化について伺いました。
大抵の人はニュースに対して「受動的」
メリットがあるからニュースを読む
Q「雑談力をつける」「3分でまとめ読み」などのキャッチコピーが印象的な「Gunosy(以下、グノシー)」ですが、その切り口に至った発想は。
Yahoo!トピックスを見てもわかるように、ネットでニュースを読む市場はあります。なのでモバイルでもYahoo!トピックスのような存在があれば使われるという確信はありました。ただそれをどう使わせるかは工夫が必要です。プロダクトは同じでも訴求方法は変えていかなくてはいけないなと。
僕のようにニュースが好きなタイプだったら「超いいニュースアプリですよ」と言われるだけで使うのですが、特にニュースや情報にこだわりのない方だったら、ただ「ニュースアプリ」と言われても刺さらないと思うんです。「旬なネタを知っていればランチでドヤ顔できるよ」など、自分にとってどこに価値があってどういう利便性があるのかがわからなければ使おうとは思いません。
Qなるほど。ニュースがユーザーのメリットになるというのは重要ですね。
グノシーの読者が見るのは、社会性の強いニュースよりも、ダイエットや週末のお出かけスポット3選なんです。自分の役に立つ情報ですね。テレビでいうと『ヒルナンデス!』でやっているような情報を求めているんです。ニュースの中でも、新聞ではなくテレビや雑誌に近いと思います。いろんな質の情報を扱って、それをわかりやすく伝えるにはどうすればいいのかを常に考えています。
Qちなみに福島さんは『ヒルナンデス!』を見ているイメージがありませんが、実際どうなんでしょう。
見てますよ、テレビ。『雨上がり決死隊のトーク番組 アメトーーク』とか『ゴッドタン』の「芸人マジ歌選手権」とか大好きです(笑)。『王様のブランチ』なんかも、テレビユーザーの気持ちを理解するために意識して見るようにしていますね。
Qテレビと言えば、貴社のウルトラマンを起用したテレビCMは印象的でした。Facebook広告も盛大に打っていましたね。プロダクトを認知させる方法としては、広報よりも広告主導なのでしょうか。
グノシーが20万ダウンロードにいくまでは、アーリーアダプター層にサービスを知ってもらうために広報を重視していました。ちょっと話題になっているサービスということで、メディアの方にも面白がっていただけるし、こちらもービスを知ってもらえるWINWINな関係だったと思います。
1年程経って50万ダウンロードを超えた頃、成長を加速させねば競争に負けると思いました。広報活動だけで知っていただけるユーザー数は限られるので、広告にも力を入れるようにしていきました。
ニュースアプリは最終的には国内で4,000万、海外で4億ユーザーに達することは見えています。利用者が増えれば広告単価も上がるので利益は出せる。需要があることはわかっている中、どういう方法論でそこに到達すればいいのかというのは課題でした。バイラルで広げることを試みたこともありますが、無理という結論に(笑)。口コミで広がるようなサービスではないんです。
たとえば、いわゆるグロースハックで成功したInstagram。いい感じに加工された写真をTwitterで見かけた人が、いいなと思って始めることはあります。そういう性質がニュースにはないなと。SNSで流れてくる記事を見て、ニュースアプリを使いたいと思ったことってないと思うんです。記事がどのアプリの記事なのか気にする人はほとんどいません。テレビCMやFacebook、リアルの広告で深い需要を起こしてあげなければユーザーを大きく拡大していくことはできないという結論に至りました。
Gunosyは顔が見えない
イメージ広報でファンを増やしたい
Qサービスを広告で広げていく中での、貴社における広報の位置付けは。
中で働いている人間が何を考えて、何をやっているのかというのを発信していくのが広報の位置付けかなと思います。サービス自体は触ってもらえばわかりますが、その先にいるのはどういう人間なのか、どういう会社で何を目指しているのかを伝えていきたいなと。ユーザーもストーリーのあるサービスの方が愛着を持ってくれると思います。広報でグノシーのファンを増やしてもらえればと思っています。
インタビューについても、どうしてもサービスや成長の秘訣に焦点が当たったものになりがちです。広報で戦略的に考えて、その先に何を狙っているかを伝えたり、中にいる人間に焦点を当てるインタビューを増やしていけたらなと。さらにいえば、グノシーに関わって頂いているメディアについても発信していけたらと考えています。
Q現在の広報業務は。
現在、会社は44名(2014年9月末現在)。エンジニアが4割、マーケティング、営業部門が4割、管理系が2割というバランスです。組織図でいうと技術部とマーケティング部にわかれています。マーケティングの中でも広告を出稿するチーム、メディアアライアンスのチーム、広告の販売チームという3つのチームに分かれています。そこで広報を兼任しているので、たとえばツイッターで適宜社内の情報発信をするなど、思い描く広報像まで手が回っていない状態です。
Q資金調達もでき、ようやく腰を据えた段階で、長期的な目線でのコミュニケーションを考え始めた時に広報専任担当の必要性を感じたというところでしょうか。
広報専任の必要性は2014年の夏に社員が30人を超えたあたりから感じていました。採用は経営の課題です。今後、5年以内に1,000人から2,000人くらいの企業サイズになると思っているので、単純に割り算するとある程度のペースで人材を採用していかなければならないなと。今までの採用は、個人で口説きにいっていたのですが、これからは広報で広げてもらわないとスケールしないなと。
採用時の会社の見せ方として、「謎のテクノロジーベンチャー(笑)」から「超イケてる成長企業」に変えたいなと考えています。その辺りも戦略的に考えてプッシュできる広報担当者が一人いると有難いですね。
Q理想の広報像はありますか。
メディアの方から、場合によっては競合だと思われることもあります。なのでメディアに対して関係作りの企画を考えてくれる方。誰とでもコミュニケーションがとれて、いろんなレイヤーで協力者を作れる人が理想ですね。
「新しいことをやっていて物珍しい会社だから」という理由ではなく、うちが目指している将来像に共感してくれて、どんな道筋でいけばいいかを一緒に考えてくれるような方がフィットするのではないかと思います。
世界中の人に最適な情報を届けるために
淡々と地道に努力する
Qグノシーの内部についてお聞きしたいのですが、企業文化はどのようなものでしょうか。
グノシーは外から見るよりも淡々とした企業だと思います。達成したら次の上を目指す。自分たちのやることをやるだけだよねという感じです。大きな目標に対して、飛び道具ではなく、そこまでの道程をしっかりと遂行するために、地道に努力できる会社です。
達成するために数字を重視しているので、共通言語が数字です。年齢も肩書きも関係なく、会社の目標に対してどれが一番効率的かで考えて、「誰」が言ったのかではなく、「何」を言ったのかという基準で判断されます。非常にフラットな関係ですね。
毎週初めの朝会では、自分の考えを話すようにしています。今会社はこういう状況で、だからこれが今大事だよねとか。僕が決めたことは、どんな考え、どんな経緯で決めたということが誰にでも見えるようになっているので、そこに対して容赦なく突っ込みが来る文化です(笑)。そして社員全員がグノシーのファンです。
Q今後の展開として、メディアでとどまるという感じではない気がするのですが。
持ち運べて、どこででもネットで世界とつながれるスマホは、革命的に人の生活を変えました。そこで情報を伝えるだけでなく、それ以外のこともできるようにするのは必然だと思っています。会社のミッションは、「情報を世界中の人に最適な形で届ける」です。メディアが伝えたいものではなく、ユーザーが欲しいものを最適な形で届けるにはどうしたらいいか。方法論として、アルゴリズムありき、「俺達はこういうメディアなんだ」ありきではなく、ユーザーがやりたくなることって環境によって変わるので、それに合わせて自分たちの目標も達成していくという考えです。
(取材日:2014年10月2日/撮影:首藤 達広)
福島 良典 氏
- 企業名
- 株式会社Gunosy
- 部署・役職
- 代表取締役 最高経営責任者(CEO)
- 設立
- 2012-11-14
- 所在地
- 東京都港区芝3-2-18 NBF芝公園ビル7階
- プロフィール
- 1988年生まれ。東京大学大学院工学研究科にてデータマイニングを研究し、在学中にGunosyを開発。2012年度IPA未踏スーパークリエータ。2012年に株式会社Gunosyを創業し、現職。