逆タイムマシン経営で世界へ。Rettyがインターン制度を「ビジネススクール化」した理由
2014年6月の発表以来、毎週10名以上の応募があるというRettyのインターン教育プログラム「Retty Business School(以下、RBS)」。CFO/人事統括の奥田健太氏に、RBSの狙いとインターンを奨励する社内文化について伺いました。
インターン制度と言っているうちは
大手に勝てない
Q「Retty Business School(以下、RBS)」の反響はいかがですか?
6月に打ち出して以降、メディアや周囲からも好意的な印象で注目してもらえました。毎週10名以上からご応募いただいているという状況です。7月現在、50名以上の応募がありました。
QQ.RBSを打ち出したきっかけは?
社内でインターン制度がうまくいっているという自負があり、対外的にアピールしようという声が上がったんです。そこで、社長をはじめとした採用チームを中心にRBSの構想を練りました。
Q「ビジネススクール」と名付けた理由は?
弊社のインターンを対外的にアピールする時、どういうブランディングをするかという話になったのですが、結局インターンという言い方をしているうちは有名な企業に勝てないと思いました。たとえば、DeNAさんのインターンだったら知名度も高いですよね。ネームバリューだけでも十分勝負できますが、私達の場合は軸を変えて勝負しなければ人が集まりません。
そこで、インターン生が得られることを改めて考えたのですが、秘匿性の高い一部の情報を除き、ほぼすべての業務に携われるんですよね。あらゆる仕事ができてスキルセットも身に付きますし、採用業務でさえ深くコミットしていれば携わる事ができます
実際にインターン生がビジネスパーソン、ひいてはアントレプレナーとして必要なスキルセットが身に付く様子を見ていると、「ビジネススクールが目指すものに近いね」という話になり、自然とこのようなコンセプトになりました。
スキルより
仕事の進め方やマインドを重視
QRBSの特徴を教えてください。
グレード制を設けています。全員がCクラスから始まり、最高Sクラスまで進級します。給料もグレードと出勤日数に応じて支払われます。
Qどのように評価するのですか?
毎月フィードバック面談を設定しています。社員2名とインターン生1名で、毎月の目標とそこに到達するためのアクションプランを立て、達成度に応じてグレードを決定します。
しかし、Cクラスで入って3か月以内にBクラスにランクアップできない場合はそこでドロップアウト。厳しいルールですが、「こういう仕事の仕方ができるようになればグレードが上がります」ときちんと説明し、自発的に行動してもらえるようにしています。
Q各グレードごとに昇格基準が決まっているのですか?
細かいスキルセットよりも仕事の進め方やマインドセットによるっところが大きいです。エンジニアであっても、ここまでコードが書けるようになれば昇格というものは決めていません。ビジネス関係の職種は特に顕著ですが、仕事の進め方やマインドセットがどれだけオーナーシップを持てているか、即ちプロフェッショナルに近づいているかという点で判断しています。
Qはじめから社員の方2名が評価する体制だったのですか?
実は、今でこそ20名以上いるので難しいんですけど、インターンが15人くらいまでの規模の時は、社長も全てのフィードバック面談に出ていました。月末月初に社長が人数分の面談に入っていたのですが、さすがに20人を超えると無理だろうという話になり、今のように社員2名とフィードバックを行うという形になっています。
物理的な量が成長につながる
Q週4日以上が前提と聞きましたが、その理由は?
週4日と決めているのは、ある程度物理的な量をコミットしないと、最初は結果も出にくいし、熱中できないからです。熱中できないと成長できませんし、私たちにとってもインターン生にとってもつまらない結果になってしまいます。我々としても戦力になってほしいという希望があるので、時間的な量を確保することが成長につながるということを説明してから来てもらっています。
Qインターン生が伸びたと実感するのはどんな時ですか?
伸びているインターン生は多いですね。たとえばRBSのページにもインタビューがありますが、今年唯一Sランクになっているデザイナーの女性なんかは特に。最初から自発的な学生でしたが、とにかくプロアクティブに量をこなしていました。23時とか24時までずっと仕事をやっていて、もう仕事が好きすぎてたまらないみたいな印象です。
最近では、社内のキャンペーンを毎月やっていたり、他のインターンの子のオブザーブをしたりしてくれます。社員の中でも困ったら彼女に任せようという雰囲気があり、本当に社員と同じくらい信頼されているのを見ると成長したなと思います。
Qインターン生が熱中するために、社員の方から働きかけることはありますか?
OJTのフィードバックはこまめにしていて、必ず頻繁にコミュニケーションをとるようにしています。また、コーヒーセッションと称した勉強会も。インターン生が知りたいことや習得したいスキルを吸い上げて、それを教える場を作るということには積極的です。
社内にもそういうのが好きな内野というディレクターがいて、本や雑誌の切り抜きをスクラップしてインターン生に読ませたりしています。内野が後進の指導をしているのは自発的な行動なんです。決してプログラムの一環ではなく、積極的に教えたがる性格で社内文化の醸成において大きな役割を果たしています。
Q今後、どういう人に来てほしいという希望はありますか?
ビジネススクールということで、今は企画や営業職を中心に展開していますが、今後はデザイナーやエンジニアの教育システムもきちんと制度化して可視化したいと考えています。エンジニアに刺さる打ち出し方を考えて、若くて優秀なエンジニアの卵にいっぱい来てもらいたいですね。
逆タイムマシン経営で日本から世界へ
Q奥田さんが入社されて約1年ですが、会社の変化は感じますか?
私が入った時より会社らしくなったなと思います。今まではマンションの一室でやっていたような会社ですが、いろいろな人が増えてきたことから多様化してきましたね。
Qメンバーが増えたことで逆に課題は?
複数のプロジェクトができてくると「あの人と1週間くらい話してない」というケースも増えましたね。現状、お互いを誘ってランチに行きましょうというレベルでは意識づけしています。
今後、もっと社員が増えるようであれば、このコミュニケーションロスをミニマイズするような仕組みが必要だなと感じています。現状は全体で集まる「各プロジェクト優先度決めミーティング」というものがあるくらいです。読んで字のごとくですね(笑)。
Q最後に、御社の今後の展開について教えてください。
現状、Rettyのユーザーは400万人。ただ、日本でグルメサービスを使っている人は4,000万人くらいいると思うので、そういう人たち全員が使ってくれるサービスにしたいですね。現状、食べログやぐるなびの知名度が高いですが、「グルメサービスならRettyだね」と名前が挙がるようなものを目指しています。
私は、日本のお店探しにおける課題レベルの高さは世界一だと思っています。実際、Yelpと食べログを比較しても、食べログの方が使いやすいと思います。
今の日本のグルメサービスの課題はすごく進んでいて、「点数やランキングじゃお店が見つからない」というところまできたのですが、Rettyは「人から探せる」という方法でこの課題に対するソリューションを提供しています。日本のグルメ分野でこの問題を解決できれば、海外でこれから起こるであろう同様の課題を解決できると思うんです。
弊社は、ソフトバンクの孫さんの表現を借りると、逆タイムマシン経営ができる数少ない企業だと思っています。日本から世界へビジネスモデルを発信する企業として、いち早く展開するために、海外への基盤を作ることが目標です。
(取材日:2014年8月7日)
奥田 健太 氏
- 企業名
- Retty株式会社
- 部署・役職
- CFO/人事統括
- 設立
- 2010-11-01
- 所在地
- 東京都渋谷区広尾1丁目10-5 テック広尾1F
- プロフィール
- Retty株式会社 CFO 1985年生まれ。東北大学工学部卒業後、三菱商事株式会社リスクマネジメント部に5年半勤務。2013年より次世代型グルメサービス「Retty」を運営するRetty株式会社でCFOに就任。ファイナンスや資金調達、人事総括部門を担当する。