日本僑報社、北京師範大学教授王泉根先生が『小さなぼくの日記』のまえがきを配信
7月13日に配信した日本僑報電子週刊第1238号に、北京師範大学教授王泉根先生が『小さなぼくの日記』のまえがきをけいさいした。
日本僑報社、北京師範大学教授王泉根先生が『小さなぼくの日記』のまえがきを配信
7月13日に配信した日本僑報電子週刊第1238号に、北京師範大学教授王泉根先生が『小さなぼくの日記』のまえがきをけいさいした。
まえがき(抜粋)は以下の通りである。
「大人が子供向けに書く文学」という特性を持つ児童文学は、その創作方法と伝え方によって二世代間での精神的な対話と文化普及の期待値が決まる。したがって児童文学の発生や発展の根本は、大人が子供に接する態度と児童観をいかに理解するかということにある。国内外の児童文学の発展で明らかなように、児童文学がある時期、もしくはある地域において驚くほどの発展をみせるのは、その時期、もしくはその地域において子供を心から愛し、子供のために喜んで物事をなし、そして子供のために何かをしてあげられる人たちがいたことと深く関係している。
二十世紀前半の中国社会において、豊子愷はまさにそのような人であった。豊子愷(一八九八~一九七五)は、画家、芸術教育家、翻訳家、散文作家という様々な肩書を持つと同時に、大変な子供好きで、多くの児童漫画を描いた漫画家であり、児童を題材にした児童文学を数多く残した作家でもあった。
大の子供好きであった豊子愷の子供に対する愛は崇拝といえるほどで、「天上の神と星、この世の芸術と子供、この四つのことで私の心は占められている」と語った。また、子供のことを「天と地の間でもっとも健全な心を持ち、徹底して偽りなく純潔」な人と考え、自分の子供が子供のままでいて、ずっと童心の世界の楽しさと真実の中にいてほしいとまで願っていた。このため大変な失意の中で『送阿宝出黄金時代(黄金時代から阿宝を送り出す)』という散文を書いた。彼は自身の子供たちの成長を喜びながらも、子供たちが童心に別れを告げることに心を痛めていたのだった。
これこそが豊子愷なのだ。無垢な童心で描くのは、おのずと「青春はその眼差しと熱い童心にある」という言葉のように、元気いっぱいの子供の世界である。豊子愷の描く児童漫画は、まさしく現代中国の児童漫画の逸品である。描かれる子供の様子やその性格、情緒、無邪気さ、愉快さは、見る人を絵の中の子供になって、子供時代に戻りたくなるような気持ちにさせる。彼の児童文学――童話、物語、散文などは、そのすべてが子供の世界を描いた素晴らしい作品である。
文学創作の貴さは「誠」にある。とりわけ児童文学は、誠意と真心があってこそ、描かれる人物のイメージが感動を与え、心に残り、影響を与える。童心のかけらもなく、子供への愛情もなく、子供のためにすべてを捧げる精神も持たず、陳伯吹氏の述べる「子供の視点から出発し、子供の耳で聞き、子供の目で見、特に子供の心で体験することに長けている」というような子供の立場と視点がなければ、本当に子供が好む作品は書けない。たとえ一時は良いと言われたとしても、後世に伝えられることは難しい。豊子愷の児童文学作品が、彼の児童漫画と同様、半世紀を経た今でも依然として子供から大人まで幅広く読まれているのは、子供に対する誠意と真心と愛情があるからなのだ。
(中略)
豊子愷の児童文学作品は内容に富み、ジャンルも多岐にわたっている。これまでに、違うスタイルで単行本を出版したことはあるが、全作品がそろった『豊子愷児童文学全集』の出版は初めてである。この度、中国外文局海豚出版社にご尽力いただき、豊子愷の童話、児童散文、児童物語を七冊にまとめて出版していただいた。これは新世紀の児童文学と子供向けの出版にとって本当に喜ばしいことである。
この『豊子愷児童文学全集』が中国の子供たちから好かれ、子供たちの心と体の成長に連れ添うと同時に、海豚出版社の海外ルートを通じて、世界の子供たちにも歓迎されることを信じている。童心に国境はなく、愛は無限であり、優秀な児童文学作品は時も国をも越えるだろう。
王泉根先生、著名な児童文学研究者。一九四九年生まれ。北京師範大学教授。中国児童文学研究中心主任、アジア児童文学学会副会長。中国児童文学博士課程初の指導教官。国家社会科学基金評議審査専門家。著書に『現代中国児童文学主潮』『王泉根論児童文学』等、編著に『百年百部中国児童文学経典書系』『中国児童文学60周年典蔵』がある。
※豊子愷児童文学全集の既刊紹介http://duan.jp/item/17jidou.html
◆第1巻『一角札の冒険』
豊子愷・著、日中翻訳学院・監訳、小室あかね・訳、林屋啓子・編集協力
――次から次へと人手に渡る「一角札」のボク。社会の裏側を旅してたどり着いた先は……。世界中で読まれている中国児童文学の名作。
◆第2巻『少年音楽物語』
豊子愷・著、日中翻訳学院・監訳、藤村とも恵・訳、林屋啓子・編集協力
――家族を「ドレミ」に例えると? 音楽を愛する少年の話から始まる未来の音楽家のための短編集。世界で読まれている児童文学の名作。
◆第3巻『博士と幽霊』
豊子愷・著、日中翻訳学院・監訳、柳川悟子・訳、林屋啓子・編集協力
――霊など信じなかった博士が見た幽霊の正体とは? 人間の心理をときに鋭く、ときにユーモラスに描いた傑作短編集。
◆第4巻『小さなぼくの日記』
豊子愷・著、日中翻訳学院・監訳、東滋子・訳
――「どうして大人は…」表題作は大人たちの言動に悩む小さな男の子の物語。激動の時代に芸術を求め続けた豊子愷の魂に触れる。
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企業名 | 日本僑報社 |
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代表者名 | 段躍中 |
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